- Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
- / ISBN・EAN: 9784865541502
感想・レビュー・書評
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異世界ものは、その世界の説明から始まるものと、いきなり物語が動き出すものがあります。今作は後者でした。いきなり少年と少女が現れ、どちらも普通の人とは違う様子。しかしふたりの正体も旅の目的も何も明かされないまま、物語は否応無しに進んでいきます。
物語が進み登場人物が増えるごとに、この世界の有り様が見えてきます。どうやら大きな戦いがあった、帝国(?)が支配している、人とは違う亜人が被支配階級とされている、魔法がかつてあり現在は禁忌とされている、などなど。
でも肝心の少年と少女の正体は全く何もわからないままに、少年と少女の視点を交わしながら物語は進みます。
そのため読み手であるこちらは、どこに感情の支点を置けばいいのかわからずに不安に襲われます。
この不安に物語の初めから終わりまで支配されるのです。少年カルルと少女エルシーの過去は垣間見えてきます。戦士の一族として生まれ戦いに明け暮れ敗れ去った種族の生き残りらしいカルル。魔法使いらしきものに育てられ何者かに育ての親を奪われたらしきエルシー。無愛想で生きる意味を模索するカルルと、全てのものに想いを投影させるエルシー。勝手についてきて勝手に感情をぶつけてくるエルシーに戸惑うカルルは、今までとは別の戦う意味と生きる意味があることに気付き始める。
そしてエルシーがもつ秘密と、ふたりの新たな関係性が生まれたところで物語は一旦幕を降ろします。
敵側の物語も動いており、あからさまに曰く有りげな人物の謎も残され、物語は続きを待たれるのですが、刊行されて約3年、続きが出てないのですね。近頃のラノベとしては続きは絶望的なのかもしれませんが、ここで終わらないで続きをお願い!と叫んでおきましょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示