音楽の未明からの思考──ミュージッキングを超えて

著者 : 野澤豊一 川瀬慈 西島千尋 輪島裕介 浮ヶ谷幸代 梶丸岳 増野亜子 井上淳生 矢野原佑史 福岡正太 武田俊輔 大門碧 伏木香織 井手口彰典 松平勇二 青木深

制作 : 野澤豊一  川瀬慈 

• アルテスパブリッシング (2021年12月22日発売)

作品紹介・あらすじ

「ミュージッキング」研究の地平を拡張し、「音楽の力」を問う新たな語りへ！

音楽研究のエポックとなったクリストファー・スモールの「ミュージッキング」という概念を手がかりに、その可能性をさらに広げるべく、世界各地でのフィールドワークに基づいて、文化人類学、民族音楽学、映像人類学、ポピュラー音楽研究、歴史人類学、音楽教育学などの研究者16人が挑みます。

執筆陣：西島千尋／輪島裕介／浮ヶ谷幸代／梶丸岳／増野亜子／井上淳生／矢野原佑史／福岡正太／武田俊輔／大門碧／伏木香織／井手口彰典／松平勇二／青木深

本書は国立民族学博物館の共同研究プロジェクトを書籍化するもので、テーマやフィールドワークの現場となったのは、音楽療法／ディスコ／精神医療／掛け合い歌／バリ島の行列音楽／社交ダンス／アメリカ黒人教会／森の民「バカ」／徳之島の民俗芸能／長浜曳山祭／ウガンダの「カリオキ」／バリ・ガムランの竹笛スリン／佐村河内ゴーストライター事件／ショナの憑依儀礼／伊江島とエチオピアの伝承歌／「支那の夜」と米兵──とじつに多彩。こうした多種多様な事例と視点から音楽研究をバージョンアップさせる意欲的な論集です。

【序論「音楽の力を未明の領域に探る」より】
私たちが目指すのは、世界の様々な場所で営まれるミュージッキングを人と人、人とモノ、人と観念の「出会い」の場として把握し、そこからある種の普遍性や比較参照点を取り出し、音楽という概念を解体し、音楽の未明とでも呼びうる地平から思考を試みることである。それは、人びとの営みから「音楽」や「ダンス」をあえて抽出することなく、ミュージッキングの全体性をありのままに捉えることを意味する。

◎「ミュージッキング」：
ニュージーランド生まれの音楽教育者クリストファー・スモールが、「音楽」「作品」「演奏者」のいずれをも特権化することなしに人々が音楽的実践にかかわる営みを捉えるために提唱した概念。「ミュージッキング」（musicking；音楽すること）というこの鍵概念は、音に媒介されつつ複数のエージェンシー（ヒト、モノ、環境、霊的存在など）が交わり合う場面や、そこで我々が感知したり言説化しようとするある種の「パワー」の存在様態を明らかにするという、従来的な「音楽学」「民族音楽学」「ポピュラー音楽研究」では十分に扱えなかった地平に我々を導く。
（『ミュージッキング──音楽は〈行為〉である』野澤豊一・西島千尋訳、水声社、2011）

感想・レビュー・書評

[muelibraryさんの感想 · 2023年10月18日]

宮教大OPAC
https://www.lib.miyakyo-u.ac.jp/opac/ja/volume/645350

[ほんだなさんの感想 · 2022年9月18日]

P.44→
店から提示された同じ振り付けを「忠実」に客が踊っていたのは日本のディスコくらいという指摘は興味深い。流石は進駐軍の占領に大した抵抗運動をみせなかった人たちの子どもだ……という感じ。

同書52頁では『ディスコ伝説70’s』からBro.Kornがいち早くステップを覚えて披露することに優越感を覚えたという証言が引用されているけれど、このあたりが日本人の国民性（20世紀後半の、かもだけれど）なんじゃないかなぁ。

ミュージッキングという概念は本書で初めて知ったけど、USのあるラッパーがいった（名前失念）「オレはジェームス・ブラウンしてぇんだよ！」というのはミュージッキング的なことだったのかもしれない。単に「Do The James」を捩っただけかもだけど。

著者プロフィール

富山大学学術研究部人間科学系准教授。1978年、富山県生まれ。金沢大学大学院社会環境科学研究科修了。専門は文化人類学。主な業績に『顔身体学ハンドブック』（共著、東京大学出版会、2021年）、『富山の祭り：町・人・季節輝く』（共著、桂書房、2018年）など。訳書にC.スモール『ミュージッキング：音楽は〈行為〉である』（共訳、水声社、2011年）、T.トゥリノ『ミュージック・アズ・ソーシャルライフ：歌い踊ることをめぐる政治』（共訳、水声社、2015年）がある。

「2021年 『音楽の未明からの思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」