ディアンジェロ《ヴードゥー》がかけたグルーヴの呪文

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784866471440

作品紹介・あらすじ

耳に取り憑く、呪術的グルーヴの快楽(エクスタシー)に溺れる。
ディアンジェロ『Voodoo』をとことん読み解く一冊。

■幼少期に教会で歌ったゴスペル・ミュージックからの影響など、ディアンジェロのルーツを探る。
■エレクトリック・レディ・スタジオでの音楽的実験とソウルクエリアンズ。
■「Untitled (How Does It Feel)」の突然の幕引きが意味するものとは?
■「ブラック・フェミニスト」の著者が、現代的視点からR&Bの金字塔を再考する。
 ・男性原理にスポットライトを奪われた、『Voodoo』陰の立役者
 ・「セックス・シンボル」として祭り上げられることの代償 など
■『Voodoo』だけでなく、デビュー・アルバム『Brown Sugar』や最新作『Black Messiah』についても考察。
■日本語版には、1995年のディアンジェロ来日に同行した訳者・押野素子のあとがきを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 私は批評理論におけるフェミニズム批評というものを率直に言って全く信用していないので(これはフェミニズムに対する敵意があるとかそういう話ではなく、様々な批評理論を一通り学んだ学徒としての純粋な意見である)、そうした観点からディアンジェロの傑作『Voodoo』を語り、全くもって知的刺激が少ない読後感しか得られなかったことによって、やはりダメだな、としか思わなかった。

    一つだけ確かなのは、フェミニズム批評というものが批評理論における古びた理論の一つに過ぎないとしても、ディアンジェロの『Voodoo』という音楽作品は後世に残り続ける作品であろう、ということだけだ。

  • ディアンジェロのアルバムvoodooの分析が主眼に置かれ、1〜2章デビューまでの教会の息子としての生い立ち、3章アルバムメンバーが揃うまで、4章楽曲の分析、5章アルバムの反男性性、6章untitledのヴィデオが起こしたディアンジェロの破壊、7章復活劇black messiahと現代音楽シーンが論じられる。
    本書の特徴は、当時のヒップホップシーン(波及してR&Bソウルも)に蔓延る、有害な男性性(タフネスと性差別)の固定観念からvoodooが解き放ったこと、そしてその反発があったことを、黒人差別とフェミニズムの観点から描き出していることだ。黒人男性がその劣勢な環境から男らしさ(金銭を得るために危険を冒すタフネス)を手に入れる必要があり、それに無意識に縛られる。そして、女性をモノとして扱うような有害な男性性が社会化され、自分を守るために、弱さを晒さないタフネスからミソジニー、ゲイとして見られないようホモフォビア同性愛嫌悪へと突き進む。端的に表しているのがヒップホップシーンであり、トラップの流行でR&Bソウルに波及し、それに逆張りする形でvoodooは愛を語り、ヴィデオは筋肉質な裸体を晒す。論述はまた、愛と弱さを晒すその歌詞と、ほぼ全裸のヴィデオのセンセーションと反動が、アルバムの優れた音楽性を覆い隠し、ディアンジェロの自尊心(とその身体)を破壊していく様を示している。ディアンジェロのクリスチャン的謙虚な人間性と、完璧主義で繊細な芸術家肌を浮き彫りにし、そこから手を離れたvoodooという作品の巨大な力を明らかにしている。
    ・2
    ヴァージニア州リッチモンドは、アメリカ独立戦争でイギリス軍に、南北戦争で拠点としていた南部が敗北前に最後に焼き払われ、商業と文化で再生したが、依然として人種で居住地が分かれ、アフリカンアメリカンは都市計画の利益を受けなかった。ディアンジェロことマイケル・ユージン・アーチャーは祖父、父ともに牧師で、教会で歌い、3歳でピアノを弾き、オルガン、ベース、ギター、ドラムを独学で習得。ゴスペルだけでなく、マイケルジャクソン、ジェイムズブラウン、スライ、アースウィンドを聴き、兄からプリンスを聴かされ、ビージーズ、バリーギブからも影響を受ける。12歳から厳格な基準でメンバーを揃え、パフォーマンスをし、すでにエンターテイナーだった。17歳でハーレムアポロシアターのアマチュアコンテストで優勝すると、ニューヨークに出て、ジョセリンクーパーの目に止まり音楽出版契約で映画サントラ、ゲイリーハリスの目に止まりレコード契約。ミケランジェロにちなみ改名。しかしすぐ音楽業界に嫌気がさしやる気がなくなる。アンジーストーンはブラウンシュガーjonz in my bonz(prayはストーンのグループヴァーティカルホールドに)、ヴゥードゥーsend it on,Africaで共作しており、間に1997年に生まれたマイケルという息子がいる。2人がディアンジェロの兄ルーサーと共に作った、クールザギャングsea of tranquilityをサンプリングしたsend it onは、神に息子という贈り物を感謝する曲。クエストラブが最も好きなAfricaは子守唄のような曲。娘イマニは1999年に生まれる。スランプはストーンと別れ始まり、息子が生まれ抜け出した。
    ・3
    ヴァーティカルホールドの曲も担当したエンジニア、ラッセルエレヴァドは、ディアンジェロのマネージャーキダーマッセンバーグを通じてボブパワーに代わり起用された。lady,jonz in my bonz,wken we get byを担当した。ディアンジェロと意気投合し、次のアルバムを生々しく泥臭いものにしようと、ディアンジェロのインスピレーションを全て統合し、教会とダンスホールを加えることを画策した。デジタルの数字変換を介さないアナログテープ録音を志向した。スライのような60〜70年代の汗やミスをも包含するライヴレコーディング。ディアンジェロがほとんど知らなかったジミヘンを2年きかせ、反応は芳しくなかったが、1996年にelectric ladyをかけ開眼した。クエストラブことアミアトンプソンは、ディアンジェロがいるザルーツのライヴで、プリンスのサイドプロジェクト、マッドハウスのfourをディラ風の酩酊ビートで演奏してみせ、ディアンジェロと結束する。ピノパラディーノはBBキングのライブの後、ディアンジェロとソウルの名曲をジャムセッションする。ディアンジェロのジェームズジェマーソンとなる。チャーリーハンターはBET on jazzのトリオ演奏で声がかかる。ジェームズボイザー、スパンキー、ロイハーグローヴも参加。その実験ラボは、ジミヘン建設のエレクトリックレディで、スティーヴィーワンダーのmusic of my mind,talking bookもレコされている。当時ヴィンテージ機材で録音する者は皆無だった。ディアンジェロとクエストラブは2000ドル分レコードを買い、ソウルトレイン4000回分買い、一年研究した。そのあとできたジャムはone mo' ginのアウトロ、feel like makin’ loveのアウトロ、ドラムにギターアンプを通したbooty。試行錯誤しテイクを重ね、ボツアレンジや破棄した曲もある。アナログテープ一本200ドル15分。何千ドルもかかる。
    画一的な拍子はお断りという原則を壊す。酩酊ビートから大幅に遅れたところでベースラインが鳴る。ディアンジェロは遅れて不快に感じるところで演奏するよう指示していた。キューバ音楽に起源を持つ。意図的にだらしないサウンド、酩酊演奏、jディラの影響。ネイティブタンの一員、スラムヴィレッジのプロデューサー。ディラはスラムヴィレッジのデモをvoodoo参加ミュージシャンに聴かせ、ソウルとヒップホップの脱構築を研究するよう促した。ミスに聞こえかねないほどビートを遅らせる。最たるものはchicken grease。Curtisのmother's sonを演奏していたところに生まれた。コモンのためにクエストラブとボイザーが思いついた。
    "コモンには分からない、俺が求めてるファンクだ"と欲しがった。タイトルはプリンスが16分音符でm9をギタリストに指示する時の隠語。モゴモゴ呟く歌唱は、ヨーロッパスタンダードの拒絶。
    "最初に口から出た言葉を残したい、それがありのままの魂。"
    アフリカに由来する、ゴスペルジャズR&Bダブステップにもある。"音楽という男と歌詞という女の結婚"。
    Spanish jointは1時間アレンジ、ワンテイクレコーディング。ホーンアレンジのロイハーパートは後日。ネガティヴな感情を手放せない相手を叱責する歌詞。当時付き合っていたジーナフィゲロアへの。
    ・4
    アフリカンアメリカンは、人種差別や侮蔑から解放され、自らが進むべき道と安全を探し続けている。voodooが取り組む課題。マーケティングやチャートよりも深くブラックネスを愛していた。playa playaは即席メンバーでバスケするような、他のプレイヤーへの挑戦状。コンセプトはマイケルジョーダン主演のスペースジャムに提供したI found my smile againにインスパイアされている。
    devil's pieは、アーティストが成功と生存のために働く搾取的文化と業界を批判している。悪魔に魂を売った者がいかに魂を壊されるか。社長、刑事司法、学校、アメリカ批判。黒人の仕事はなく、悪魔のパイが作られる。ギャングスターのDJプレミアが、ラッパーキャニバスに却下された曲をディアンジェロに持ち込んだ。行き着く先は独房か墓場か、混沌とした世界と人生。ヒップホップ批判でもあり、自己批判や疑念でもある。映画ベリーのサントラ。金は破壊的な力になりうる。成功者の視点、独身男性、父の視点。世俗的な音楽は教会に背を向けた悪魔の音楽。アレサ、サムクック、ホイットニーもゴスペル出身。ディアンジェロはしかし、ゴスペルが根底にある。邪悪な自分に邪悪なものを撃退できるだけの強さを願う曲。ハイピッチのスタッカートサウンドは、les ypre soundsのjericho jerkからのサンプル。流れ落ちる水のようなサウンドが、暴力ドラッグ刑務所に飲み込まれるアフリカンアメリカンの運命を象徴する。刑務所に入る可能性は、白人の5倍高い。芸術性と金を稼ぐことの苦悶は黒人アーティストが特にしてきた。正当な印税を拒否されてきた長い歴史。ストリーミングがわずかな収入しかなく、商業使用や映画に依存しているが、それでアーティストとしての純度を保てるだろうか?看守や奴隷はレーベルやストリーミング、アーティストは田畑労働者。マスコミやファンからの名声の重圧。資本主義に依存しつつ、批判するためにブラックネスを利用する。
    ラジオでかかりやすく売れる音楽に対する、創造性の限界を目指す、devil's pie。voodooという音楽業界に対する挑戦。
    the lineは、制作プレッシャーへの返答。"信じることにこだわることが重要、いい音楽を作ること"。
    greatdayindamornin'は違法ながらも利益の上がる商売をしている黒人男性が生き延びようとする。未来を知らず日々を生きていく。金と男らしさが目標になると危険な人生のゲームをするしかない。
    音楽を作るということは、真実を伝えるためのものだ。脆さと強さは矛盾せず、受け入れるべきもの。voodooはそれらを同じ力で示す、ありのままの姿。
    ・5
    トラップが人気になるにつれ、ソウルもバラードやスロウジャムから遠ざかる。過剰な男性性とミソジニーがスタンダード。R&Bも追随し、ディアンジェロはそれを品がないとしている。しかし、left & rightでは、メソッドマンとレッドマンが女性をモノ扱いする。この曲はザノトーリアスBIGのlife after deathからインスパイアされた。ラッパーは、コモンとブラックソートは知名度が低くヴァージンレコードから却下され、Qティップも不評。メソッドマン、レッドマンのどぎついヴァースが採用されたが、ディアンジェロも痛さを感じていた。女性ヒップホップファンは性差別の地雷を避けながら音楽を楽しむという難問を抱えている。
    one mo' ginは、女性の思い出で、コーラスが2部、3部のハーモニーに分かれる。
    the rootは女性に惹かれたことで根っこから揺るがされ、抵抗意志と力がなくなったという曲。チャーリーハンターの曲にディアンジェロがアレンジ。ギターソロはエレヴァドが逆再生し、ハンターも気にいる。ヴォーカルは40トラックを超える。
    "ファルセットは繊細な一面を完璧に表現する"
    ヒルとのデュエットはfeel like makin' loveでは実現せず、ファミリースタンドのghetto heavenがディラプロデュースでコモンのlike water for chocolateに収録。
    untitledはイントロのラファエルサディークのベースが唐突に止まる。不完全な演奏、ミスをそのまま残した。当時は全てが洗練されていてクリーンで人工的だったため、エレヴァドは当初不安を感じた。セックスではなく、スピリチュアルな体験、聖霊を見つけた。楽曲の唐突なエンディングはオーガズム。性的に過激な初期プリンスのオマージュ。
    voodooは官能性、魂を曝け出した表現、精神性、最高の楽曲を集めた作品。
    →ロマンティックな愛の表現は、ヒップホップの差別的男性性に反する女性性だ。
    ヴィデオはクィアだと異性愛の黒人男性から批判された。従来の男性的イデオロギーは有害で、弱さを見せることは、芸術様式において重要。
    ・6
    voodooのレコ中、筋肉を鍛えることが目標となっていた。セックスシンボルとしての転換。セールスのためのセックス。ヒットのためのヴィデオスリラー、映画パープルレイン。美容院でもBETやMTVで流れれば黒人女性は途端に静かになった。ヴィデオは宣伝のためにセックスを売り物にしている。マネージャー、ドミニクトレニア、共同監督ハンターの方針。女性のために作ったが、他方表現されるのは、黒人の体を通貨として商品化したアメリカ社会。奴隷制後、リンチ、服の剥ぎ取り、人種的恐怖。女性たちは人種問わず、誰もが夢中になった。アルバムの印象をも変え、異性愛者男性から毛嫌いされた。同性愛嫌悪を暴走させた。ゲイと決めつけられることを恐れて、男性の魅力を拒絶するよう社会化されている。親戚女性の蚊帳の外に置かれる嫉妬。自分を至らないと感じる、真実に耐えられない。弱さを曝け出し受け入れられようとする点は、支配や痛めつける50セントと異なる。家父長的社会の男性的視線、受け入れる女性というパラダイムを覆す。ヴィデオが注目されすぎて、音楽的実験が霞んでしまった。ロイハー、観客は脱いでほしいだけだった。トレニアも後悔した。ディアンジェロに心の準備をさせなかった。物を壊したり、ファンに怒りをぶつける。ヴィデオのような体でないとステージできないと追い詰められた。アルコールと薬物乱用に陥る。2002年、暴行、無謀運転、治安紊乱、その他軽犯罪で起訴される。2005年、飲酒麻薬運転、マリファナ所持、銃器所持で逮捕。体重増加と薬物乱用はトラウマへの反抗。2010年、売春婦を装った捜査官に声をかけ、治安紊乱で逮捕。彼は名声とセクシュアルイメージのパワーを知らなかった。マイケルアーチャーはスターウォーズとヴィデオゲームを愛するオタクでもある。やりたかったことは心を動かす音楽を作ること、voodooは難解な音楽を作ることだった。ヴィデオは他の曲を聴く耳を持たせなくした。むしろ、中年太りになることで音楽が聴かれるようになった。
    ・7
    voodooは、レコされた50曲から13曲選ばれ、チャート初登場1位、複雑かつ多層的で、there's a riot goin'on、what's going onと並ぶと評された。シングルは振るわず、untitledのみが、ポップチャート2位。ラジオ向けの曲はなく、メインストリームの売上や業界常識を一切気にしなかった。
    "目的は芸術、聖霊のメッセージを伝えること。"
    ビラルやラサーンパターソンは大成功はせず、ミュージックソウルチャイルドは批評家の評価はイマイチだった。
    "型にはめられたり、カテゴリーに閉じ込められたくない、行きたいところに行けるようになりたい、それがアルバムのテーマ"
    若い、またプレッシャーを感じる年配アーティストにとって前進とは最先端テクノロジーを活用すること。プロツールス、オートチューン、シンセサイザー、シーケンサー、サンプリング多用。手軽なツールは、模倣に近くなる。
    "機械が創造性欲望意欲才能に取って代わると思うのは未熟。できることは、ミュージシャンとしての腕を上げること。新しい学期の達人になること。ジュークボックスや再生機みたいに過去の音楽を演奏してちゃダメ"
    先見性、好奇心、パフォーマンス能力がなければ実現しない。クエストラブは当時のR&Bが慢心し同じことを繰り返していたことを指摘している。voodooはチャートに33週とどまり、170万枚セールス記録。2001年、R&Bアルバムでグラミー賞。untitledでヴォーカルグラミー賞。クエストラブ、大衆には難解すぎた。ローリングストーンなどの音楽誌でさえ評価を一変させ、世が追いついた。
    マーサグレアム、アーティストは時代であって、時代の先を行くのではない。他の人が遅れているだけ。YouTubeがMTVに取って代わり、ストリーミングやパンドラなどのネットラジオがラジオに取って代わる。ソニー、ワーナー、ユニヴァーサルの3社のみ。音楽ビジネスは、投資利益率を求められる。CD販売収益は消失し、実店舗は閉店。レコード会社の制作費マーケティング費を削減。新人、中堅は少ない資金で新規参入者と競争を強いられる。アーティストになるのは今が最も簡単で最も難しい。今の時代ではvoodooは売れない。キャッチーでシンプルなものが求められる。簡単なリフレイン、覚えやすい曲。エレクトリックレディスタジオでは、voodooと同時にバドゥmama's gun、コモンlike water for chocolateとelectric circus、ビラル1st born second、ザルーツthings fall apartが制作された。ディアンジェロ、クエストラブ、ボイザー、ディラ、ジェフリージョンソンのソウルクエリアンズ。魚座バドゥ、コモン。ロイハー、ピノ、Qティップ、モスデフ、タリブクウェリも追加。大量消費のためではなく、自分たちのために音楽を作る。ネオソウルを自称しない。
    "名前をつけられることは、枠に入れられること。成長できる立場でいたい。ネオソウルやっているなんて言わないし、ブラックミュージックを作っている。"
    トラップ隆盛で、サンプリング、トラックループが増え、これにより、ディアンジェロ的なアーティストに期待が高まる。2005年、ジョンメイヤーも書簡を執筆、人生を変えた数少ない名盤、休業を終えてほしいと懇願。クエストラヴは2007年の楽曲の一部をオーストラリアのラジオでリークし、ディアンジェロとの関係にヒビが入った。2010年第3子誕生。2012年、ヨーロッパミニツアー、テネシー州ボナルーフェスティバル出演、メアリーJブライジとのツアー。2013年、クエストラヴとのbrothers in armsツアー、ブルックリンアフロパンクミュージックフェスティバル出演。2014.12.15black messiahリリース。voodoo参加クルーの大半が集結し、同じ質感で、アナログテープに録音。ギターを弾く機会が多かったため、オルガンよりもギター影響の曲も見受けられた。クエストラヴがリークしたのはreally love。グラミー賞。イントロで囁く、ジーナフィゲロアが戻ってきた。政治的表現に足を踏み入れる。ジャケットはアフロパンクの観客。the charadeは黒人が絡む事件からインスパイア、back to the future part1はセックスシンボルの過去を皮肉る。チャーリーハンターは自作に戻り、ツアーバンドを断った。共同作曲のthe root、greatdayindamornin'の印税を受け取っていない。ハンターはディアンジェロのことが好きで、再び仕事をする気はある。2006年、Jディラは32歳ルーパス合併症で死去、2008年スパンキー死去、2016年トレニア死去、プリンス死去、2018年ロイハー腎臓病で死去。
    ディアンジェロの影響、フランクオーシャン、H.E.R、ジェイムズブレイク、ダニエルシーザー。ソランジュ、voodooは教会。ソランジュの姉ビヨンセ、今日も重要、ハーモニー演奏アレンジは時代を超越している。
    ・訳者あとがき
    1995インタヴューで、ディアンジェロ、作りかけの曲はたくさんあるが少しでも気に食わないとボツにしちゃうから何曲あるかわからない、という職人肌で完璧主義。褒めると否定、電話で椅子を持ってくるのに中断するのが悪いと思っていた、礼儀正しく謙虚な南部のチャーチボーイ。身長が低くずんぐり、バギーなファッション。デビュー前は、チリーチルという名でラップバトルしていた。日本ではトリオ編成で、好きなshit,damn,motherfuckerは失礼になるから演奏しなかったとした。チェーンスモーカーだが吸っていいか周りに聞き、周りに勧めたという。
    →気を遣いすぎて、神経をすり減らすタイプ。自己評価も低い。
    時間を守る以外のリスペクト。日本人でもミュージシャンには握手を求めた。自分の興味のない音楽でも、成功している人には敬意を表した。マネージャーではなく、本人が仕事の打診をする。しかし、レーベル重役のスピーチで笑い出したり、ホテルの部屋を汚したり、特に時間感覚は大きな問題となった。音楽以外の能力は機能してない。スケジュールが過密で、bitches brew、カーティスアンソロジー1961-77のCDを買いたいと騒いだ。
    スペースジャムのサントラにplaya playaが書かれたがワーナーが難色を示し、brown sugarのアウトテイクI found my smile againを使用した。
    ディアンジェロはvoodoo直後インストアサイン会、氷点下で1000人以上集い、サイン写真ハグを全員に行っていた。誰でも誠実に対応してしまう性格だからこそ、インタヴューで神経をすり減らし、疲弊してしまう。金銭的報酬に執着しない潔さも伝説的ステータス。
    ・解説
    著者は映画監督作家フェイスAペニック、ブラックライブズマター、第四波フェミニズムを経験。トキシックマスキュリニティ有害な男性性は、男性中心主義である一方、恐怖を身につける。タフは弱みを晒すこと、ゲイと見られることはホモフォビア同性愛嫌悪。ヒップホップは白人中心主義に対し、タフな男を誇示してきた。暴力的性的という白人の偏見を黒人男性が内面化した。しかし、フランクオーシャンが同性愛経験を公表し、シーンが支持した。リルナズXはゲイ公表しつつも、大ヒット。旧弊な男らしさに縛られなくなってきた。その意味でvoodooは極めて先進的で、端緒はleft & rightの歌とラップの分裂に現れている。ディアンジェロは、女性に自らを捧げる。獲得ではなく、自らの弱さも全て晒し愛に身を任せる。黒人男性と愛し合う親密な関係の難しさに直面する女性は、稀有なアルバムに美と悦びを見出した。ペニックはロマンティックな音楽体験と同時に、普遍的魅力があったこと。反動的な異性愛者たちも時間をかけて、自らを縛りつけた男らしさから解放される。

  • 名盤の裏話、ディアンジェロでもメディアに翻弄されることに驚く一方で、感受性豊かなことで影響を受けやすい一面もあるのかと思うと超天才でも1人の人間なんだと。また皆が卒倒するような音楽を作ってほしい。

  • Voodooを初めて聴いた時、酔ってるかのような感覚になったしそんな感覚は初めてだったのを覚えてる。まさに本書に書いてあるとおり呪術的なグルーヴという表現がにふさわしい感触だった。
    Voodooの各曲が的確に描写されててそれだけで国語の勉強になったし、その裏側も知ることができた。
    何より著者のディアンジェロラブが伝わってきて、読みやすかった。

    感想
    ・アナログとデジタルの音の違いがわかった、アナログの方が生音に近い。ディアンジェロはアナログにこだわりあり。
    ・酔い効果はビートとは敢えて遅らせて演奏されるベースの効果。

  • “スタートボタンを押すだけの話なんだ。とはいえ、そのスタートボタンはいつも壊れているのだが” 等のDの性格や思考を垣間見ることのできる言葉や、本人/世界の当時の状況などから紐解くVoodooの秘密。D好きなら必読の一冊でしょう。 個人的にはDevil's Pieのリリックでアーティストを小作農に例えている部分が現在を切り取っていてとても秀逸に思う。

  • Dは身長が低くずんぐりむっくりしているというのが一番の驚きだったかも。
    『Voodoo』にあたって肉体改造、ワークアウトの後にスタジオ入りというのは驚き。

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