- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784870315648
作品紹介・あらすじ
僕たち二人が「日本」の名誉を守る最後の「保守」だ!現代日本のポチ思想家、ポチ言論人、ポチ知識人の俗説・妄言への思想的挑戦としての、叡智の至言。
感想・レビュー・書評
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(2012.12.27読了)(2010.09.20購入)
【12月のテーマ・[政治を読む]その④】
12月16日の総選挙の結果、親米保守の自民党が政権復帰を果たしました。小沢一郎を失った民主党は、大敗を喫し7月の参議院選でも敗れれば、再び立ち上がることは難しくなるでしょう。
安倍政権が、7月までの間にいくつか失態を演じると、チャンスはあるかもしれません。民主党みたいに実現不能な公約はしないと言っていた自民党政権は、早くも竹島の日は実施しないと言ったりしているので、ほかの公約も同じようなことがないとは言い切れません。
安倍さんは、親米保守でありながら、日本の独自性を言っているように見えますが、実態は、アメリカの望むような形の憲法にしたいだけなのかもしれません。
自衛隊を国防軍にするには、日本の米軍基地を全廃し、徴兵制をしくくらいの見通しを持っているべきではないのでしょうか。集団安全保障をいうならなおさらでしょう。
この本は、意見を同じにする二人がしゃべりあっているので、二人のいっていることに共感できない人には、わかりにくいところも多いかとは思います。
アメリカべったりの小泉純一郎さんに疑問を感じていた方とかにお勧めです。
それにしても、品のない題名の本ですね!!
【目次】
はじめに 「親米保守派」に始末をつける! 小林よしのり
第一章 「親米」という不作法
第二章 「保守の真髄」を知らぬアメリカ
第三章 「国益」が魔語となる時代
第四章 「国際法」を蹂躙する世界主義
第五章 「帝国主義」の亡霊に憑かれた新世紀アメリカ
第六章 底の抜けた「自由・民主」の文明
第七章 「大量破壊兵器」をもてあそぶアメリカ帝国
第八章 「日本国憲法」を一色で染めあげた単純アメリカニズム
第九章 「自主防衛」への道を塞ぐ親米保守派
おわりに 「祖先」も「子孫」も僕らを支持している 西部邁
●国際法違反(21頁)
(小林)日米戦争では原爆によるものをはじめとして、アメリカ軍は九十万人にのぼる非戦闘員の日本人を殺した。これはあきらかに国際法違反だったけれど、トータル・ウォー、つまり「総力戦」という概念が普及していた時代のことなので、相手の国力を徹底的に殺ぐというあのアメリカのやり方に今になって文句をつけても詮ないところがある。
●イラクの自由(31頁)
(小林)「イラキ・フリーダム(イラクの自由)」というのも酷いものだ。イラクの暴徒が政府の施設から物品を略奪するという事態について、かかる無秩序をアメリカ軍は放置するのかといったような記者の質問に答えて、ラムズフェルドいわく、「犯罪の自由というのもある」と言ってのけるんですからね。
●テロリズムへ(38頁)
(小林)西部さんが「近代主義→アメリカニズム→グローバリズム→ニヒリズム→ファンダメンタリズム→テロリズム」と書いたら、親米保守派のお歴々がチンプンカンプンだと西部さんを罵倒したのは面白かった。
各国の国民性がアメリカによって破壊されたらニヒリズムが深まるし、でも人間は生きている限りニヒリズムに浸りきることはできないので、価値の根本に回帰しようとしてファンダメンタリズムに近づくし、そして根本主義は現代では実現困難なのでテロリズムに短絡していく、という話でしょう。
●親米保守(106頁)
(小林)保守というのは人間社会における「持続的な関係」を保ち守ることでしょう。でもアメリカの保守は、日本や欧州の保守とは逆のものだから、夫の言い分に耳を傾けない妻や、先生の教えを無視する生徒や、日本の利益を踏みにじるアメリカの態度をよしとするわけだ。それを批判してはならぬという掟を保守するというのだから、親米保守派の精神は強靭なのか愚鈍なのか。
●世界主義と国際主義(111頁)
(小林)世界主義は「国家間の葛藤を解消に向かわせること」だ、つまり世界を一様の価値・規範でまとめ上げることだ。他方、国際主義は「国家間の葛藤を調整するルールを見つけ出すこと」、つまり世界を多様な価値・規範の交話する場とすることだ。
●イラクにおけるアメリカの野蛮(135頁)
その一、「証拠なしのテロ支援嫌疑」。その二、「確証なしの大量破壊兵器容疑」。その三、「イラクの独裁制を世界で最悪と見なす過誤と政体の民族自決を否定する野蛮」。その四、「イラクの国連決議違反のみを問題視して、イスラエルおよびアメリカ自身の違反を看過する不当」といったところです。
●政府テロ(146頁)
(西部)先制攻撃には「予防的」と「覇権的」の二種類がある。そして覇権的先制攻撃のことを一般に「侵略」と呼ぶ。侵略が国際法に反するからには、それは「政府テロ」と同義です。つまり、侵略には政府機関が行うものと非政府組織が行うものとがあり、前者を「侵略戦争」、後者を「テロ攻撃」と呼ぶんです。
●イスラエルの不法占拠(173頁)
(小林)「イスラエルは占領地区から撤退すべし」という国連決議はどうなるのか。ヨルダン川西岸の308か所におけるイスラエルの入植者がその決議をすんなり実行するはずがない。
●独創性(213頁)
(西部)オリジンというのは「源泉」ということですから、「物事の源に立ち返って表現すること」、それがオリジナリティの本意なのに、個人が「独りで創ること」と誤解された。その誤解は、一切の表現の源は個人のアイディアにあるとした個人主義のせいなんです。
●国防意識(241頁)
(西部)国民の国防意識を高めるのが先決です。そのもっとも有効な手立ては徴兵制でしょうね。一年か二年、兵役義務に従事するという人生体験が一番だと思います。
☆関連図書(既読)
「日本改造計画」小沢一郎著、講談社、1993.05.20
「総理の資質とは何か」佐伯啓思著、小学館文庫、2002.06.01
「美しい国へ」安倍晋三著、文春新書、2006.07.20
「とてつもない日本」麻生太郎著、新潮新書、2007.06.10
「大臣 増補版」菅直人著、岩波新書、2009.12.18
「小沢一郎は背広を着たゴロツキである。」西部邁著、飛鳥新社、2010.07.29
「グリーン・ニューディール」寺島実郎・飯田哲也・NHK取材班、生活人新書、2009.06.10
「原発社会からの離脱」宮台真司・飯田哲也著、講談社現代新書、2011.06.20
(2013年1月3日・記)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
帯裏
生まじめな誘い
-小林よしのり
今回、「親米保守派に始末をつけよう」という西部さんの誘いにはいつになく生まじめなものがあった。アメリカが狂暴に暴走する姿に、西部さんは「終末の啓示」という意味でのアポカリプスを感じとっていて、それで「酔わずに話そう」ということになったのではないか。わしはその誘いにあっさり乗った。
「祖先」と「子孫」の支持を得て
-西部邁
僕たちの見解は真正のデモクラットのそれである。僕たちは投票権を「祖先」という名の既死者にも「子孫」という名の未生者にも宛がうのであり、その結果、過去において蓄積された伝統も未来において継承される伝統も、ともに僕たちに賛成との票を投じてくれるのである。