久々にいいBLを読んだ、と思いました。
というようりも、「いい小説を読んだ」という感想に近いような気がします。
回りから見たら、不幸な生い立ちである直行が、悠人に出会って、少しずつ変わって行くお話。
不幸って自分がそう思ってなくても、そういうレッテルを貼られることがあって。
大人になったら、あんまり突っ込んだ話をしなくなるから、スルーされることも多いと思うんですけど。
でもやっぱり、回りから言われたこととか、そういうのってどうしても自分の中に残っちゃうので、まったく何にも感じてないってことはないんですよね。
自分自身を不幸だと思ってなくても、常に周囲からのプレッシャー的なものにはさらされるからね、まったく何にも変化を及ぼさないってことはない。
そういうところを上手に書けてた作品だったと思います。
こっからネタバレかもしれません。
作中で、悠人が、もうずっと会ってなかった父親に会うように、直行に悠人が言うシーンがあるんですけど。
そこで、直行がすっごく怒るんですよね。
それって、ある意味、とってもエゴなんですけど、いざ自分が直行の立場に立たされた時に、一番素直な反応なんじゃないかな……って、思いました。
なんていうか……
確かに、自分は不幸だと思っていない、というのは真実で。
それでも、周囲には「不幸な子」という目で見られたりしてて当然で、でも、それを言われるのって、本当、腹が立つ。
こうしたらいいよ、ああしたらいいよって、本当、事情もよく知らない他人のお節介でしかないんですよね。
それを正直に書いてあったのがとってもリアリティがあって、一気にこの小説を好きになりました。
本当、「自分は不幸じゃない」し、「同情してほしいわけじゃない」って言っても、わかってもらえないことって多いですもんね。
要は、自分の矜持の問題なんですけど。