UXデザインの法則 ―最高のプロダクトとサービスを支える心理学
- オライリージャパン (2021年5月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784873119496
作品紹介・あらすじ
心理法則に基づいた10通りのUXデザインパターンを紹介!
「意思決定にかかる時間は選択肢の数と複雑さで決まる」、「タッチターゲットに至るまでの時間はターゲットの大きさと近さで決まる」など、UXデザインにおける心理的法則と事例を、10通りの重要なデザインパターンに絞り、説明します。各章はキーセンテンス、概要、起源、事例、結論で構成され、すっきりとわかりやすくまとめられています。ノンデザイナーにもデザインセンスが求められる時代に欠かせない、手元に置いてパッと使えるハンドブックです。
感想・レビュー・書評
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10の法則と1つの警告、そして10のパターンをどう使うかがまとめられている。それぞれの法則について典型的なパターン、心理学上の概念、事例を挙げている。補足として極端はよくないという指摘もしている。たとえば、シンプルにすればよいからといってアイコンのデザインをシンプルにしすぎると何をするものか分からなくなってしまう、という失敗例も挙げている。
おそらく著者が本書においてもっとも伝えたいと考えたのは「力には責任が伴う」という警告ではないかと思う。ここだけ他の章と明らかに書き方が異なり、「楽しくない話」をしていることが分かる。よかれと思ってデザインしたものが社会に対してネガティブなフォードバックを与えてしまうことがあることに注意しなければならないということである。古くはスロットマシーン、パチンコ、最近ではソーシャルゲームがユーザを離さないようにする力を持ったデザインの事例になるであろう。それだけでなくワンクリックで購入、画面をスライドして更新、スクロールすると次々にページが表示されて終わりがない、といった便利に違いないと思ってデザインされたものがユーザの行動を規定しまう問題を引き起こしてしまっている。そうならないために立ち止まること、例外ユーザ(≒ルールを守らないユーザ、のめり込み過ぎるユーザなど)の存在をデザインに組み込むことを求めている。
本書自体がUXを考慮したものとなっていて、デザインの見本ともいえる。また、デザインのネガティブな側面にもきちんと触れていて、倫理を持ってデザインすること、デザインには責任が伴うことをあいまいにしていない。さらっとこういうことができる人が先頭に立っているのを見ると日本のWebビジネスが周回遅れで当然としか思えない。 -
この手の法則はいい加減名前を答えられるレベルで憶えねば。
UXの知識はデザイナーに限らず誰もが必要。
UXの重要性が明らかな中で、自分たちのコードやドキュメントのUXを高めない理由はないなと。
11章での倫理的責務の話が良かった、共感する。 -
UXデザイナーである著者が、主にwebベースのプロダクト開発において「人間の典型的な心理・行動特性の理論」とそれに紐づく「最適なUXデザインの事例」を紐付けて整理する教科書的な一冊。
全編カラーで豊富なwebサービスの実例に溢れているため、情報量は多くないのだが、豊富なビジュアルのおかげでわかりやすく整理されている。
例えば、「ピークエンドの法則」(ある体験の評価はその平均ではなく、開始時やピーク時などの特定タイミングの評価の影響を強く受ける)では、デジタルマーケティングサービスのオンボーディングや、あるメールマーケティングなどシナリオを実行した瞬間(サービス利用時のピークに該当する)での心情的な結びつきを提供するデザインの工夫などによって、うまくこの法則を生かしてサービスの満足度を高めているとされる。
個人的に一番なるほど、と思われされたのは「ドハティのしきい値」(コンピューターと人間のインタクラションは0.4秒以内が理想的)とされるものである。この法則をうまく生かしたFacebookの事例として、ページを表示するのに時間がかかる場合は、まずページのスケルトンスクリーン(投稿の骨組みだけ)だけを表示して、それから投稿の文字や画像などを表示させるようにして、ページ離脱を防いでいるという事例である。確かに、そう言われるとFacebookのスケルトンスクリーンはよく目にしていることに気づく。
逆に、スピードが早すぎてもいけないという事例も面白い。重要な手続き・処理を行なっているときにスピードが早すぎると、感覚的に人間は「本当に正確な処理が行われているのか?」と不安を抱いてしまう。そのために例えばFacebookのセキュリティチェックでは、自身のアカウントのセキュリティ脆弱性をチェックする機能を、あえてゆっくりと処理バーを進めさせることで対応している。 -
UXデザインのお勉強。
1.ヤコブの法則
ユーザーは他のサイトで多くの時間を費やしているので、あなたのサイトにもそれらと同じ挙動をするように期待している。
→ユーザーが慣れ親しんだプロダクトと見た目が似ていれば、同じように動くことを期待される。
→すでにあるメンタルモデルを活かせば、ユーザーは新たなメンタルモデルの学習なしにタスクに集中でき、ユーザー体験の質が高まる。
→変更時の違和感を最小限にとどめるためには、慣れ親しんだバージョンを使い続けられる移行期間を設けよう。
2.フィッツの法則
ターゲットに至るまでの時間は、ターゲットの大きさと近さで決まる。
→タッチターゲットには、ユーザーが正確に押せるために十分な大きさが必要だ。
→タッチターゲット同士は、十分な間隔が空いていなければいけない。
→タッチターゲットは、インターフェース内で、ユーザーが簡単に到達できる場所に置かれていなければいけない。
3.ヒックの法則
意思決定にかかる時間は、とりうる選択肢の数と複雑さで決まる。
→応答に時間がかかって意思決定が遅くなっているときは、選択肢を最小限にまで減らそう。
→タスクが複雑なら、小さなステップに分解して認知負荷を減らそう。
→ユーザーが情報量に圧倒されないように、おすすめの選択肢を目立たせよう。
→段階的なオンボーディングを採用し、新規ユーザーの認知負荷を最小限にしよう。
→単純化によって抽象的になりすぎないよう注意しよう。
4.ミラーの法則
普通の人が短期記憶に保持できるのは、7(±2)個まで。
→「マジカルナンバー7」の数字に惑わされて無用なデザイン制約を作ってはいけない。
→コンテンツを小さなチャンクに分けることで、ユーザーがその情報を扱い、理解し、記憶しやすくできる。
→短期記憶の容量は、個々人が持っている知識や状況、文脈によって大きく幅があることを覚えておこう。
5.ポステルの法則
出力は厳密に、入力は寛容に。
→ユーザーがとりうるアクションや、入力しうる情報すべてに対して理解を示し、柔軟に対応し、寛容であろう。
→信頼性高くアクセス可能なインターフェースを提供しながら、入力、アクセス、および機能の面で実際に起こりうるあらゆることを予測しよう。
→予測・対応できることが多ければ多いほど、デザインはより柔軟になる。
→ユーザーからの多様な入力を受け入れ、それを要件に合わせて変換し、入力の境界線を定義し、ユーザーに明確なフィードバックを提供しよう。
6.ピークエンドの法則
経験についての評価は、全体の総和や平均ではなく、ピーク時と終了時にどう感じたかで決まる。
→ユーザージャーニーの中で最も重要な瞬間(ピーク)と最後の瞬間(エンド)に細心の注意を払おう。
→エンドユーザーを喜ばせるためには、プロダクトが最も役立つ瞬間、最も価値がある瞬間、あるいは最も楽しい瞬間を見定めてデザインしよう。
→人はポジティブな経験よりも、ネガティブな経験をより鮮明に思い出すことを心に刻んでおこう。
7.美的ユーザビリティ効果
見た目が美しいデザインはより使いやすいと感じられる。
→見た目が美しいデザインは、人の脳にポジティブな反応をもたらし、実際の場面でも良く機能すると受け取られる。
→プロダクトやサービスの見た目が美しければ、人は些細なユーザビリティの問題に対してより寛容になる。
→見た目が美しいデザインはユーザビリティの問題を覆い隠し、ユーザビリティテスト中に課題を発見しにくくしてしまうこともある。
8.フォン・レストルフ効果
似たものが並んでいると、その中で他とは異なるものが記憶に残りやすい。
→重要な情報やアクションを視覚的に目立たせよう。
→視覚的な要素を強調する際には、互いに競合したり、目立ちすぎて広告だと勘違いされたりしないように抑制をかけよう。
→コントラストを伝えるのを色だけに頼ると、色覚障がい者やロービジョン(弱視者)を排除することにつながる。
→コントラストを伝える上で動きを使用する際には、動きに対し敏感なユーザーに配慮しよう。
9.テスラーの法則
どんなシステムにも、それ以上減らすことのできない複雑さがある。複雑性保存の法則ともいう。
→どんなプロセスも、その核となる部分にはデザインの工夫をもってしても取り除くことのできない複雑性を抱えている。この複雑性による負荷を負うのは、システムかユーザーだ。
→この固有の複雑性をデザインと開発の過程でどうにかしながら、できる限りユーザーの負荷を減らそう。
→シンプルにしすぎてインターフェースが抽象的になりすぎていないかを気にしよう。
10.ドハティのしきい値
応答が0.4秒以内のとき、コンピューターとユーザーの双方がもっとも生産的になる。
→0.4秒以内にフィードバックを行うことで、ユーザーの注意を引きつけ、生産性を高めよう。
→体感性能を改善し、感じられる待ち時間を減らそう。
→アニメーションをいれることで、バックグラウンドで読み込みや処理が行われている間も、ユーザーをつなぎとめられる。
→プログレスバーは、正確であってもなくても待ち時間へのいらだちを和らげる。
→ほとんど処理時間がかかっていない場合でも、意図的に遅延させることで体感性能が改善して信頼感の醸成につながる。 -
書籍の装丁、ページ数、構成、章ごとの文量など、すべてがユーザーに優しいデザインがなされている。
ヤコブの法則(慣れの強さ)やピークエンドの法則(ピークと終わりが評価において重要)、テスラーの法則(複雑性保存)は、新奇性重視、第一印象重視、シンプル重視といった一般的なデザインのイメージと異なる法則だと感じた。
狭義のデザインに限らず、人に自分の意見を伝えたいすべての状況で活用したい。 -
プロダクトのUXについて考える機会があったので読みました。これまでつかいにくい、わかりにくい、と主観的な言葉でしか表現できていなかったことに名前がついていて、心理学的な裏づけがいくつか発見できました。エンジニアでいうところのデザインパターンと同じく、原則に基づいて議論ができる材料になりそうです。終盤にあった、ユーザの目的を達成するためのデザインは倫理的であるはず(ビジネスのためのDAUなどを追わない)、という趣旨は納得できました。
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書かれている法則は直感的にわかることだと思う。
そのため流し読みする感じになると思う。
より難しい本への導入としてはよかった -
UIUXのデザインをする時の心理学的な観点からのアプローチを学んだ