灰色の季節

著者 :
  • 光風社出版
4.00
  • (1)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 5
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784875194507

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 胸に沁みる連作短篇ミステリ。
    図書館のお世話になりましたが、ずっと手元に置いておきたい本。
    東京創元社さんあたりで復刊お願いします。

    帝大出身の科学教師堀上は、頭脳明晰だが気取ったところがなく生徒思いの熱血漢。ちょっと茶目っ気もあり、ビリケンのようなとんがり頭が『魚雷』に似ている事から、親しみを込めて『ギョライ先生』と呼ばれている。そんな彼の下宿に生徒達から持ち込まれる様々な事件。
    戦時下の東京の中学を舞台に、一組の級長野沢正彦を狂言廻しにして語られる六篇。

    生徒の万引容疑を晴らす『不思議な声』

    降霊会での出来事『おふくろは霊媒』

    死んだと聞かされていた生徒が通夜の席でひょっこり顔を出す
    『池の見える家』

    空想家で虚言癖のある友人が目撃した殺人『イソップとドイルと...』

    事件の決着が素晴らしい『てけつの緑子』

    夜の中から絞り出されるようにあらわれた『夜から来た女』

    『灰色の季節』の青春とほのかな性への目覚め、時代への不安と精いっぱいの明るさの物語の中に、それとなく伏線を紛れ込ませる手腕はお見事。これだから梶龍雄はやめられない。ミステリの面白さと物語性が両立している好短篇ばかり。

    それぞれのエピソードには後日談がついているが、寂寥感のある余韻が物語を引き締めている。それもいい。

  • タイトルの灰色の季節とは第二次大戦前の不穏な時代のことだろう。
    中学校で化学を教えるギョライ先生が生徒が持ち込む謎をとく、という連作短編集だが、読みどころはやはり謎を持ち込む生徒の目から見た、この混沌とした時代とそこに生きる子供たちだと思う。
    事件の内容も殺人、万引き、降霊術など様々で面白い。

全3件中 1 - 3件を表示

著者プロフィール

1928年岐阜県生まれ。慶應義塾大学文学部英文科卒業。出版社勤務を経て文筆活動に。52年探偵小説専門誌『宝石』に短篇「白い路」が掲載され、ミステリ界へデビュー。77年『透明な季節』で第23回江戸川乱歩賞を受賞。『海を見ないで陸を見よう』、『リア王 密室に死す』など旧制高校を舞台とした清冽な作品で注目され、『龍神池の小さな死体』『清里高原殺人別荘』『葉山宝石館の惨劇』等、巧緻な作品で、本格ミステリファンの記憶に残る傑作を多数発表。90年逝去。

「2023年 『梶龍雄 青春迷路ミステリコレクション2 若きウェルテルの怪死 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

梶龍雄の作品

最近本棚に登録した人

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×