真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

  • 264人登録
  • 4.05評価
    • (44)
    • (34)
    • (38)
    • (0)
    • (0)
  • 46レビュー
著者 : 団鬼六
  • 幻冬舎 (1997年4月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877284596

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
ウィリアム・ゴー...
村上 春樹
ロバート キヨサ...
有効な右矢印 無効な右矢印

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 団鬼六と言えばSMというイメージしかないのだが、趣味の将棋では89年から将棋ジャーナルのオーナーとして93年まで私財をはたいて発行を続けた。その団が6年ぶりに小説家として復帰したのが92年に亡くなった新宿の殺し屋こと真剣師の小池重明の懺悔録「流浪記」を基にした本作だった。余命1年と宣告された小池に懺悔録を書かせ将棋ジャーナルに連載したのもその団の仕掛けだった。団と小池の付き合いが始まったのが88年ごろで、冷静に見れば団はいいカモにされているのだが、破滅型の小池を見捨てきれなかったようだ。

    中学生で将棋を覚えた小池は高校に入ると学校に行かずに将棋にのめり込む。ほぼ一年で三段になり中部日本学生将棋選手権では大学生も破り優勝した。小池の最初の真剣(賭け将棋)は通いつめた将棋クラブで席主の娘に片想いし、その娘と仲の良い大学生に彼女をかけての勝負を挑んだのがきっかけだった。結局不良高校生の応援団を引き連れた小池は勝負には買ったが真剣禁止の将棋クラブからは出入り禁止にされ、彼女はのちにこの大学生と結婚している。

    高校を中退し売春宿の番頭を振り出しに喫茶店、酒場などで働くが長続きしない。岐阜のホテルに勤めた際には浮気をするオーナーの当て付けにとオーナーの奧さんに誘惑され関係を持つのだが、わざわざそのことをオーナーに言いつけ、逆にそのまま関係を続けろと言われたのに逃げ出してしまう。後にも度々仕事場から金を持ち出したり、未亡人や人妻と3度駆け落ちしているが金と女にはとにかくだらしない。

    酒にもだらしなく団には娘に会いたいと泣きつきもらった金をその日のうちに飲んで使い果たしてしまうなど、飲みだすとコントロールが効かなくなる。大山名人との対局前夜には深夜営業のスナックでビールを飲み始めて口論になったボーイを殴り、留置場から対局場へ二日酔いで向かうのだが角落とは言え大山名人の考慮時間74分に対しわずか29分しか使わず完勝してしまう。この辺りが破滅型の天才と言われる所以だ。

    岐阜から戻った小池は名古屋の将棋クラブに居候をしながら真剣師と交流を持ち始めこのころ将棋の腕を上げていく。21歳でアマ名人戦の愛知県代表になりこの年名人になった関則可を頼って東京に出将棋修行を始める。奨励会入会試験の口利きを松田八段の推薦を取り付けたのはいいがキャバレーの女に入れ込んで道場の金を使い込み、松田にも関にも顔を合わさず名古屋に逃げ帰ってしまう。一定期間は真面目に働くのだが周りが信頼し始めたころに酒や女に溺れるとコントロールが効かなくなり逃げ出すしかなくなってしまう。時には世話になった店の金や車を持ち出して逃げるのだが、一応借用書だけは書いておくあたり弱い自分に対して言い訳を作っている。

    小池が新宿の殺し屋として名を挙げ出したのは名古屋で働いた葬儀屋をその仕事で知り合った未亡人と駆け落ちし再度東京に出てきてからだ。32歳になった小池は鬼加賀と呼ばれるアマ名人にもなった大阪の真剣師と死闘に挑んだ。初日勝てば50万円の5番勝負、二日目は1番10万の10番勝負を戦い、トータル7勝7敗ながら初日の勝ちが効いて加賀は小池を日本一の真剣師と認めることになった。翌80年からは2年連続でアマ名人を取り表の世界でも日本一となるとプロにも連勝し1982年には棋聖を取った森雞二に角落、香落ち、平手と3連勝をする。将棋は勝ち続けるが生活は破綻しており出入りしていた将棋酒場の金を持って女と逃げ出し、さらにはサラ金地獄。賞金百万円の大会で優勝してもその場で借金取りに抑えられてしまう。

    このころ再度プロ入りの話が出たのだが棋士会は反対し、更には新聞にに寸借詐欺の記事が出てアマチュア将棋界からも追放された。子供の将棋道場を作る、プロになるために紹介料がいると言って集めた金はすぐに使い込んでしまうのだった。この時小池は35歳になっていた。そしてまた数年間将棋界から姿を消した。

    小池の最後の公式戦は亡くなる前年で相手は竜王戦でプロ相手に3連勝をしたアマ名人の天野高志、結果は小池の2連勝だった。すでに肝硬変を発症していた小池は対局数日後にまた血を吐き、負けた天野は準決勝で丸山忠久相手に必勝の将棋を落とした。今やコンピューターが強くプロでもなかなか勝てなくなってきているが20年前はまだこういう時代だったのだ。

  • 5月に亡くなられた団鬼六先生の追悼読書。追悼ならちゃんと SM 小説を読めという話はあるのだが、代表作である「花と蛇」は気楽に読むには長過ぎるし、一番のお気に入りである「鬼ゆり峠」にしてもまだ長過ぎる。結局、大学時代に読んで手元に置いてあった「真剣師 小池重明」を読み返すことにした。

    圧倒的な強さでトップ・アマはもちろん数多くのプロ棋士を薙ぎ倒した真剣師の生涯を、その晩年を共にした団鬼六が緻密な筆で描く。幾度となく勝ち筋に入りながら、土壇場で一手バッタリの借金、逃亡、駆け落ちを繰り返す小池重明の人生は、その将棋とは裏腹にとうとう逆転の妙手を見つけることなく微か44年という短手数で幕を閉じた。晩年、団鬼六のはからいで再び将棋を指す機会を与えられたときの喜びはいかほどであったろうか。

  • 「小池は終生、放浪癖を抜けなかった天衣無縫の人間だった。女に狂い、酒に溺れた荒唐無稽な人生を送った人間だった。〜 とにかく、面白い奴だった。そして、凄い奴だった。」

    と、ここまで団鬼六に言わせる小池重明。こういう人が存在していた事が時代だなと思うが、こういう人に生きる隙間がある時代はまだ世の中が清潔になりきっていない、生きやすい時代であったのでは無かろうかと思う。

    こんな人生がホントにあるのかと驚きとともに、この本は一気に読めてしまう。

  • 将棋の真剣師・小池重明の生涯を描いた評伝。
    「将棋が異様に強い」という1点を除けば、どうしようもない人間の屑の見本みたいな生き方である。
    が、そうした生き方も含めて小池重明は嫌われて愛されたのであり何とも面白い。

  • 何かの雑誌で薦められてた本。天才の人生とは如何に…

  • 団鬼六による、将棋指し小池重明の評伝。
    謙虚なようでどこか図太く、とにかく将棋が滅法強い一方で、生活は破茶滅茶、でもどこか憎めない、というキャラクターを描き出しています。
    「こんな人が本当にいたんだ」と驚きながら読み進めていたら終わっていました。
    将棋の出来ない私でも楽しめましたが、将棋を知っていれば、よりその凄い指し口を実感出来るのかもしれません。
    評伝でありながら、著者の小池重明への愛情も感じられる鎮魂歌のようでした。

  • どうしようもなく駄目な人間だが、人を惹きつけずに止まない魅力と才能を持つ男の伝記。自分はこういうアウトローの生き方に未だ憧憬を感じてしまう。どうして自分はまとも過ぎるのかとも思う。

    2年以上将棋から離れていた晩年の小池が、アマ名人や奨励会会員などを次々と打ち破っていく「果たし合い」のくだりは何度読んでもぞくぞくする。そして通奏低音のような、鬼六先生の無頼漢に対する優しさ。どんなに酷い話であっても、それがどこか喜劇的な色彩を伴うのは、この底無しの優しさによるものだろう。

  • 面白い。小池重明の幼少期から団鬼六に出会うまでのストーリーも面白いし、出会ってからの作者視点で描かれる小池像もストーリーも面白い。
    この男は人格が破綻していると言うよりは、単に自制心がなさすぎるんだと思う。そして将棋以外に関する知識、とりわけ人として幸福を追求するために必要な知識が圧倒的に少ないんだと思う。誰かがそれを教えてあげることができていれば、、いや、人生の責任は自分自身で取るしか無い。可能性の話をしても仕方はない。才能があるだけに残念である。しかしその才能自体が、彼の破綻した人格と表裏一体なのかもしれないということを考えると、その表裏一体性こそが彼の魅力そのものなんだろう。実際に彼と交友関係を持ちたいとは微塵も思わないが、物語の主人公としては魅力的であり、彼に対してではなく、彼の物語そのものに対して奇妙な感慨を覚えずにいられない。

  • おもしろい人の人生だけど、三十一番勝負の方を読んでいたので、二度目という感じ。
     もっと小池将棋についての評論が読みたかった。

  • ・ストーリー
     最初に,最後を匂わせて,ストーリーテラーから徐々に離れていく,という書き方は読者をひきつける。

    ・キャラクター~テーマ~世界観
     この本は小池重明のキャラクターだけでもっている。
     モーツァルトを思わせる破滅型の天才。人間として出来損ないであるが,出来損ないであるという弱さが,そして絶対に将棋だけは負けないという矜持が背反し,人を引き付ける魅力となっている。ある人は,こんな人がプロに勝ちまくっていることに痛快感を覚えるのだろう。ある人は,このような男に嫌悪を憶えるだろう。
     しかし,議論を呼んでもそれこそが人間的な魅力であり,これが本作のテーマであり,団鬼六の愛する世界観でもある。。
     勝負の中だけにしか生きられない人種。そういう男が勝負の場さえ奪われ,真剣に生きられなくなった男の悲哀。男ならわかるところがあるはずだ。

全46件中 1 - 10件を表示

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)の単行本

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)のKindle版

ツイートする