大河の一滴 (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784877287047

作品紹介・あらすじ

なんとか前向きに生きたいと思う。しかし、プラス思考はそう続かない。頑張ることにはもう疲れてしまった-。そういう人々へむけて、著者は静かに語ろうとする。「いまこそ、人生は苦しみと絶望の連続だと、あきらめることからはじめよう」「傷みや苦痛を敵視して闘うのはよそう。ブッダも親鸞も、究極のマイナス思考から出発したのだ」と。この一冊をひもとくことで、すべての読者の心に真の勇気と生きる希望がわいてくる感動の大ロングセラー、ついに文庫で登場。

感想・レビュー・書評

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  • 2020-6-23 ブックオフ富士見店 220円

  • 40代にもなるとある程度人生の先行きが見えてきて、希望がない感覚に陥ることがある。「ミドルエイジ・クライシス=中年の危機」と呼ばれるこのアイデンティティや自己肯定感の喪失は、人生100年時代と言われても残りの時間がただ延長されて辛いだけみたいな絶望感に苛まれる。

    そんな人生の有意義・無駄を評価するメリトクラシー的な価値観こそが傲慢であり、自分自身だけではなく他者にもそんな考えを押し付けようという在り方が、実はその苦しさの正体なのではないか。とくに経済的な成功や社会的地位の上昇など、都市的な分かりやすいアイデンティティにこそ落とし穴があると筆者は指摘する。

    人間は時代という大河を流れるほんの一滴の水みたいなもので、基本的にこの世は地獄。自分にも社会にも期待しないところから出発するのだ、という筆者の論にはまだ理解が及ばないが、将来的な期待利益を勝手に想定していま現在を疎かにする、そんな資本主義的な生き方からは逸脱できていると感じる今日この頃である。

  • 時間をかけてゆっくり読了。
    幾つもの気付きがありました。
    示唆に富む良い本でした。

  • 五木寛之さんの作品を読んだこともなく、生い立ちも知らなく、ただこの本はおススメと言われ読んでみたら、なかなかよかったです。中身は共感できる言葉ばかりで、弱者、ネガティブな気持ち、がんばれない人たち、気持ちの切り替えが不可能なひとたち、そういう人や感情を受け入れて良しとすることを伝えてくれるから、勇気をもらえる気がする。

    初版は平成11年だけど、今にも通じる言葉がたくさん書かれている。全然古くない。

  • 五木先生らしい平易で明瞭な文章による、生きることや言葉についての随筆集。題名にもなっている冒頭部分の「大河の一滴」に関する章に最も心打たれた。自分は全編通じて興味深く読めたが、何かストーリーがあるようなの本ではないので、エッセイや評論を読むのが苦手な人はしんどいかもしれない。

  • 新しい視点をもらいました。
    この世は地獄。
    その中に極楽がある。
    マイナスの中のプラスが希望の光。
    冷たい夜と闇の中にこそ朝顔が咲く。
    暗黒の中でないと、小さな光は見つけられない。
    暗黒の中で見つけた光は、小さくても強い輝きのように感じる。

    ここからは読んで考えたこと。
     AIが医師や教師の代わりになるという意見がある。それに反対する意見もある。なんか、世の中が、AI対人間という考えに向きすぎている気がする。
     本の中に「面授」という言葉がある。面と向かって教えてもらうことが大切で、知識だけなら本で得れば良い。会って直接聴いて得るものがある、という考えだが、そうなるとAIにはできないことを医師や教師はできるので、AIはむしろ医師や教師の価値を高めてくれたのではないのか。
     なんて考える。

  • つまらんけどいい本だよ(笑)
    いやいや❗内容はめちゃいいんだよ❗

    ただ普段、ラノベとか小説ばっか
    読んでるからさ❓
    展開無い本って読むの辛い・・(笑)

    説法じみてるんだよね。内容が。
    淡々と説かれる感じで。
    だから途中で飽きる・・(笑)

    それでも、少しづつ読み進めていくと、
    じわじわと内容が染み込んできて

    普段の生活の中での意識とか、
    立ち振舞とか、考え方とかね❓
    色んな事に気付かされる。

    .
    下手な自己啓発本とか、
    スピチュアル本を読むより全然オススメ。

    .
    ただ、この本の評価は、
    読む人によって全く分かれるかな❓

    今、毎日が充実してて、
    生きてる事が楽しい❗✨って人には、
    ぶっちゃけ、読んでもつまんないかも。

  • こないだ見た映画『大河の一滴』がムムムでね。明るくて力強いイメージの安田成美さんを全面に押し出しての「これからの女性像」が空回りの巻で。そしたら原作が五木寛之だっていうじゃないですか。こんな中身のないもんを五木さんが書くかね? って思ったらエッセイだそうで。

    エッセイを原作? 借りてみました。これを原作にされたら巨匠である新藤さんでも無理だわ。まるで別物でした。日本人がいま読むべき本の第1位よこれ。もう20年以上も前の本なのにまったく新鮮。当たり前すぎることばかりが書かれているんだけれどコロナ禍をすごした者にはスーっと染み込んでいくお話の数々間違いなし。

    と思ったら2020年に再ブレイクしているんだそうですね。そうなるとやはりこの本も用意された逃げ道のひとつだったのかと確信するわ。2020年に読むのと2022年に読むのとでは残念ながら価値がまるで違う。ましてや2023年の終わりに読むなんて……。

    いや、それでもまだ読んでなかったら読まないといけない本。来るべき2024年に向けてのバイブル。

    《証明することができない事柄を信用しない人がいる。科学的でない、という理由からだ。しかし、私たちは科学だけで生きているわけではないし、市場原理だけで暮らしているわけでもない。証明できようができまいが、それを信じて勝手に生きることはいっこう差し支えないのである。そういうわけで、最近とみに常識に合わないことを大事にするようになってきた。どうもそっちのほうが自然な生きかたのように思われてならないからだ。そっちとはなにか。それは直感である》

  • 家族に薦められた覚えがあるが途中で挫折。ブグ友さんの本棚で見つけて図書館よりお取り寄せ。

    「私たちは、人生は明るく楽しいものだと最初から思いこんでいる。それを用意してくれるのが社会だと考えている。しかし、それはちがう。」
    「どんなに愛と善意に包まれて看とられようとも、死とは自己の責任で向きあわなければならない」「なにも期待していないときこそ、思いがけず他人から注がれる優しさや、小さい思いやりが<争点の慈雨>として感じられる」
    「愛情も家庭も老・病・死する」

    看取られた際に家族や友人のあいだから自然と拍手がわいたという話
    「ご臨終です」と言われたおばあちゃんが、死に水の儀式で使う脱脂綿を探す家族へ場所をつぶやいて息を引き取るという話に、死に方の見事さを感じる。

    「人間はただ生きているというだけですごいのだ。死へ向かって一歩一歩あるいていく旅人のようなものだ。この世に生を受けた者は、ある種の役割があって、存在している」という考え方に勇気づけられる
    免疫の中の寛容というはたらき、なんでも排除するのではなく、自己の中に非自己を共存させていく側面があるらしい。寛容さを身につけたい。
    朝と夜、「おい、親指くん。きょうはくたびれただろう」などと話しかけながら、ゆっくりていねいに足を洗う話もやってみたいと思った。
    「泣くということにより自分の魂の浄化」「自分だけの、他人に明かすことのできない、悲しみとか痛みとか、そういうものを、それぞれに抱えて生きている」ということに同感。

  • 『大河の一滴』五木寛之氏
    冷たい夜と闇の濃さのなかにこそ朝顔は咲くのだ。(291ページ)
    【こんな方におすすめ】
    「少し心も体も疲れているな、、、」「でも、、、無理して頑張るという気持ちにすぐにはなれないな・・・」。
    もしも、そんな状態ならば・・・この書をポケットにいれて、お気に入りの喫茶店や近所の公園のベンチでくつろいでみる、そんなひと時はいかがでしょうか?
    ――――――――
    【作品】
    優しい、しっとりとした語り口のエッセーです。
     
    五木さんは敗戦を「平壌」で迎えたと記述しています。戦後の復興から現代までをつぶさに観察してきた作家のおひとりです。
    作品は、バブルがはじけて約10年、阪神淡路大震災のあとに生まれています。また、当時の自殺者人数は2万人を超えていました。
     
    五木さんは、そんな時代に危機感を持ちながらも、決して批判をするわけではありません。ご自身のなかで「どのように解釈をしたらいいのだろうか?」と悩みながら、読者のわたしたちに語りかけてくれます。
    ――――――――
    【読み終えて】
    自身と外の世界の対比 ★★★★★
    自身の心の光と闇の対比★★★★★
    二律背反の世界への解釈★★★★★
     
    自分の心と体、そして五木さんが見る世界を対比することによって、足りていること、足りていないことを考える機会に浸ることができました。
    また、同時に、なにに光を見出し、どんな闇に怯えているのか?についても併せて考えることとなりました。
    何が正しい、何が正しくないという二進法で物事をとらえることが多いです。この考え方に加えて、もう少しいい加減にとらえてもいいのでは?という解釈、選択肢をもつ「しなやかさ」に出会うことができました。
     
    30代前半で読んだときと、人生折り返しで読んだときのとらえ方、受け入れ方。
    面白いほどに大きく違うんだな・・・と認識することができました。

    30代のころは、自分に置き換えるというとらえ方ではなかったから・・・。
    五木さんの世界を知るがメインであったから・・・。
     
    【本書より】数字は掲載ページ。
    25
    親切に慣れてしまえば感謝の気持ちも自然と消えていく。だから慣れないことが大切だ。いつもなにも期待しない最初の地点に立ちもどりつつ生きるしかない。
    65
    世の中はときに澄み、ときに濁る。(省略)清らかにすんでいないことをひとり嘆き、怒っているばかりでは生きていくことはできない。
    77
    私という自分が二つある、というのは、そういうことである。すべての人間と共通している自分と、だれとも異なるただひとりの自分。その二つの自分は、ときとして対立し、ときとして同調する。
    112
    人間の値打ちというものは、生きている、この世に生まれて、とにかく生き続け、今日まで生きている、そのことにまずあるのであって、生きている人間が何事を成し遂げてきたか?という人生の収支決算は、それはそれで、二番目くらいに大事に考えていいのではなかろうか、
    124
    なにもやらなくてもよい、失敗した人生であってもよい、それはそれで、人間として生まれてきて、そして人間として死んでいく、そのことにおいて、まず存在に価値があるのだ、と思うことがある。
    129
    混沌を認め、もう少しいい加減になることによって、たおやかな融通無碍の境地をつくることが、枯れかけた生命力をいきいきと復活させることになるのではないでしょうか?
    159
    ひょっとしたらマイナス思考とか、あるいはネガティブ・シンキングとか、こういうものもすごく大事なことではなかろうかと考えるようになってきました。
    187
    規則正しい生活というものをあまり強調しすぎることによって、規則正しい生活をしなければいけないということが人間の心と体の自由を奪うようになっては、これも問題なのではないか、
    188
    問題は、その人間にとって、どういう生きかたがいちばん自分らしく、そして自分で納得のいく生きかたなのか、ということにかかわっているのではないでしょうか
    189
    プラスとマイナスがお互いに反撥しあい、また引かれあうような、そういう物の考えかた、両極端のどちかではなく、<どっちも>という考え方を、このへんで、もう一ぺん振りかえってみたいという気がします。
    248
    自由に、豊かに、言葉を使って、自分を表現することは素晴らしいことです。しかし、その<言葉>にも限界があるということを、常に感じていたい、と、ぼくは考えるのです。
    291
    冷たい夜と闇の濃さのなかにこそ朝顔は咲くのだ。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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