覇王不比等3巻・シリーズ完結編です。
なんというか・・・今までの常識が全て覆される大胆なストーリーでした。
1.2巻のレビューでも触れましたが、天皇家は渡来人が子孫だという仮説にもとづいて話が進んでいきます。
ちょっと抵抗があるけど・・・面白い説だとも思うので以下のとおりまとめておきます。。
任那(伽耶)の王族が渡来し、蘇我氏を名乗り欽明の後をついで大王になった→蘇我大王家
(よって蘇我氏は豪族ではなく天皇家!もっと言うと推古天皇は架空の人物で、実際には蘇我馬子天皇が政権を握ってたって)
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乙巳の変(大化の改新)にて蘇我王家滅亡
大化の改新に成功し、権力を握ったのが百済王家出身の孝徳・天智
(唐が新羅と組んで百済を討滅させようと画策。唐の作戦に新百済政権だった倭国が巻き込まれた。孝徳・天智らは百済からの亡命王族)
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壬申の乱で百済王家滅亡
覇者・天武は新羅大使
(白村江敗戦の後、倭国監視のため来倭したのが新羅唐両大使である)
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持統が不比等・三千代と組んで外国勢力を排除し、ここから正式に倭国の血統が国を治める
で、極めつけは古事記に出てくる神
須佐之男(スサノオ)と饒速日(ニギハヤヒ)
このふたりも新羅からの渡来人→葦からスズを製造する技術で権力を握り日本を統治
・・・とこんな感じです。
天皇家の太祖は外国人・なんですねえ。
小説でしか主張できないかなり大胆な仮説だとおっしゃっておりました。。確かに。
それから、不比等のお話ですから国家の成立についても触れておきます。
国家成立のためには上記のような外国勢力の排除が不可欠ですが、それと同時に内なる外国を追い払うこと、これも国家成立に欠かせない大事なことだそうです。
どういうことかと言うと・・・
当時それぞれの氏族、または個人の心の中にあるのは祖国への想いです。
純粋な土着の大和人よりも、技術を持って、または亡命して、新天地を探して渡来してきた外国人が多くいたからです。
祖国への想いはそのまま百済や新羅、高句麗や唐への想いにつながります。
その思いを消し去ってはじめて倭国人になれるのです。
そのために国史が必要となり、それが言わずと知れた古事記・日本書紀の編纂につながりました。
アイデンティティの基礎はやはり、歴史、なんですね。村上春樹や藤原正彦など、現代人もおんなじことをおっしゃってます。。
それから国の律令化、コレは大宝律令養老律令などで実現されています。
都を作り、法を整備し、日本人のアイデンティティを構築し、国力をつけ外国に脅かされない国の基礎を作った不比等。
役小角(えんのおづぬ)に「狐の狡知と獅子の威厳」と評され、悪人のイメージもある彼ですが、やっぱりこの人すごいです。
やっぱり歴史上の人物で彼が一番好きです!
上田正昭先生の不比等の本、また読み返したくなっちゃった。
あっ、そうそう。
不比等の師匠の道昭は弟子に行基もいたそうです。
不比等と行基、全く別の方向へ進んでしまった二人ですが、師匠が同じと言うのも興味深かったです!!