子どもの貧困 未来へつなぐためにできること

著者 :
  • 水曜社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784880654393

作品紹介・あらすじ

きちんとした身なり、おしゃれな子もいる、清潔感もある。スマホも持っている。
でもお昼代は100 円、そして1,000 円の参考書が買えない。
ひと目ではわからない「子どもの貧困」はなぜ起きているのか…。

 現在、日本の子どものおよそ6人に1人が貧困の状況と言われている。厚生労働省発表「子どもの貧困率」は2009 年の14.2%から2014 年には16.3%に上昇、そして多くのメディアが「子どもの貧困」を取り上げ、政府も緊急の課題として検討を進めている。

 一見それとはわからない子どもの貧困。「自己責任論」などの安易な批判や「かわいそうな子どもたち」という福祉的観点で捉えるむきもある。しかしそれは近い将来、日本経済の破綻を招きかねない重大な問題であり最優先で取り組む課題である。

 本書は子どもの貧困問題を生活保護など増大する福祉コストや高止まりする非婚率、少子高齢化等の社会問題と関連づけて考察し、また「子ども食堂」や「フードバンク事業」そして「無料教育支援」などの取り組みを紹介する。政府や自治体、企業、NPO、市民それぞれが問題解決のため何ができるのかを考える

感想・レビュー・書評

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  • ブク友さんのレビューで知った本とは異なるが、同じカテゴリーということで読んでみた。
    新しいだけのことはあり、貧困の実態とその原因のみでなく、今すぐ可能な対処法が載っている。

    「朝食の甘納豆が兄弟よりひと粒少なかったというだけで家出した子がいた」
    そんな話をすると、必ずと言って良いほど批判の嵐である。
    朝食が甘納豆? 母親は何をしているの? 怠慢じゃないのか?
    果ては、「自己責任」だの「自業自得」だの「子どもが可哀想」だの。
    そして、その子たちの進路問題に及ぶと「貧困なら中卒で働けば?」と来る。
    残念ながらどれも甚だしいほどの的外れな意見だし、もっと言えばその考え方が貧困を助長させているということを先ず知ってほしい。
    「早寝・早起き・朝ごはん」が出来る環境ならばその環境に感謝し、それが不可能なひとたちのことを理解し手を差し伸べようというのが、この本の主旨。

    著者は特定非営利活動法人「キッズドア」の理事長さん。「キッズドア」は無料の学習塾だ。
    経済的に困窮している家庭の子が対象の塾で、教える側もすべてボランティア。
    貧困家庭には出来ない「学習の場」があり、「学び方のハウツー」から細かに教え、個人に合った勉強の方法を共に模索し、成績アップを目指す。
    更に素晴らしいのは、この塾で社会を生き抜くソーシャルスキルを学べること。
    困窮家庭の子たちに圧倒的に不足しているのが、コミュニケーション能力と対人関係スキル。
    信じられないかもしれないが、貧困家庭の子たちは、コミュニケーションのチャンスがそもそも失われていることがとても多い。そして、ボランティアの側もそれを学びながら共に成長していくという。

    子どもの貧困問題は単独で生まれるものではない。
    生活保護など増大する福祉コストや上昇し続ける非婚率などとも決して無関係ではない。
    「頑張ればなんとかなる」時代はとっくに終焉を迎えており、子ども・若者・子育て支援にもっともっと税金の再分配が出来るように声を挙げて欲しいと、著者は力説する。
    お金がないから子どもを産むことを諦める。
    お金がないから結婚することを諦める。
    お金がないから進学することを諦める。
    いいえ、「お金の心配をしないでも子どもが安心して成長できる社会」を実現させなくては。

    そんなことは国がすること、という考え方もアウト。遅まきながら国はとっくに動いている。
    ただ、それは時間がかかることなので、あなたは何が出来るか、である。
    どうか対岸の火事と片づけずに、この本を開いてほしい。自分自身の未来のために。
    読むきっかけを下さったブク友さん、ありがとうございました!

  • 学校での勉強についていけない子供たちが、貧困の連鎖にいることは、ここ最近個人的に気になっているテーマなので、興味深く読んだ。
    「勉強の仕方がわからない子たちに、勉強そのものを教える前に、基本的な勉強のやり方を教えてあげること」
    これは学校教育でも、学習塾でも意外と見落とされている視点だとはずっと思っていた。
    学校でできることには限界があり(何しろ、さまざまな家庭環境、能力の子どもたちを一斉に指導するのだ!)、学習ボランティアという形での支援を実践してきた筆者のこれまでの取り組みの事例や理念がわかりやすく書かれている。

    「無償なのに、自分の勉強を、本気で応援してくれる大人がいる」という事実が、子どもたちの心を揺さぶり、将来に光を灯す、というのは、確かにボランティアだからこそなしえることだろう。
    自分にできる支援の形を、改めて考える本になった。

  • 書店の書評コーナーで見つけて手に取った本。
    日本の7人に1人の子どもは貧困である。信じがたいけれどこれが現実。このような家庭で育った子どもたちが大人になっても貧困から抜け出せない現状を打開するためにも、まずはみんなが知ることが大事なんだと思いました。物質的にも経験的にも貧しい子どもたちが1人でも減らせるように政府にも頑張ってほしい。興味深かったのは、貧困な家庭の子どもは、コミュニケーションの機会が少ないということ。確かに母子家庭で、母親が朝から夜中まで仕事をしてると親とのコミュニケーションもとれず、お金がないから外にも出られず会話もない。不登校になってしまえばなおさら。そういう子どもたちにコミュニケーションの機会を与える場でもあるタダゼミ。同じような場が全国に広がっていくといいな。

  • 子どもの貧困についての正しい理解が得られる書籍であった。

  • 親の収入が少ない、十分な教育が受けられない、進学・就職に不利、更に下の世代も貧困に。
    収入の低さや手当の低さがこのように貧困の連鎖を呼んでいる。
    キッズドアの開催している学習会は単なる勉強を教えるプログラムではない。
    社会技能、相手の話をきちんと聴いて理解したり、分からないことを積極的に質問し、質問に適切に答える力などソーシャルスキルの育成に力を入れている。
    子供の貧困というのは実態が見えづらいところに特徴があるが、出生数も100万人を割り、社会福祉費の負担が増大し、一人の若者が多くの高齢者を支えていく中で国を上げて子育て支援の充実が必要になっている。

  • 実際に現場を知る人が書いているから説得力もあって、学びも多かった。

  • とてもわかりやすく理解できる。

  • OECDの中で日本の子どもの貧困率は一番高い。でも、国は教育に予算をつけようとしない。ただ、だからといって、嘆いてばかりいては何も事は進まない。だったら、「自分たちができることをどんどんやっていけばいい」と、子どもの貧困のために行動を起こした著者。

    著者の言うこと全てにその通り、とは思わないけれど、教えられることのほうが多かった。

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著者プロフィール

1963年東京生まれ。ライター。東北大学文学部を卒業後、『月刊社会運動』(社会運動研究センター:当時)編集部勤務などを経てフリーランスに。家具道具室内史学会会員。昭和のくらし博物館企画展研究員。共著に、小泉和子編『パンと昭和』(河出書房新社2017)、同 編著『楽しき哀しき昭和の子ども史』(河出書房新社2018)、工藤員功 監修『昔の道具』(ポプラ社2011)など。

「2020年 『掃除道具』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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