- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784880654799
作品紹介・あらすじ
女も男も、いつの時代も人は顔に手を加える。
心理と行動、文化と風俗の二つの側面から、わが国の「化粧」文化を捉えなおす初の試み。
古代から現代にいたる、「化粧」をすることの意味と効果を男女問わず丹念に分析した、気鋭の心理学者による最新の社会論。
*本書は『化粧にみる日本文化』(2009年9月刊行)をソフトカバーにし新装版として刊行するものです。
感想・レビュー・書評
-
振仰【ふりさ】けて若月見れば一目見し人の眉引【まよびき】おもほゆるかも
万葉集
秋冬はよそおいの季節。ファッションもメークも楽しめる時期だが、そもそも、化粧はいつから始まったのだろう。
たとえば掲出歌の「若月」は三日月のことで、「万葉集」のころから、眉墨で三日月形の美しい眉を描いていたことがわかる。
日本では化粧に関する書物や研究が希少だそうだが、化粧研究で博士(教育学)を授与された平松隆円の著書によると、化粧の起源は人類の誕生にまでさかのぼるという。しかも、男性の化粧に関する記述が多いそうだ。
平安貴族の男性の眉化粧は、だれのためのものだったのか。文化人類学者の見解によると、化粧は、社会的に弱者にいる者が強者に対して行うものという。貴族社会の最上位にいる天皇に対して、ほかの貴族よりも優位になれるよう男性も化粧をしたそうだが、天皇自身も化粧をしていたため、その姿を模倣したという説も興味深い。
戦国時代の武士も、出陣のときはひげを整えるなど化粧を施していた。それは、戦というハレの場に「変身」するためだったとか。
近代のノモンハンの戦いでも、将校が頬紅を塗り、顔面蒼白となって部下を動揺させないよう配慮していたそうだ。戦争と化粧という研究テーマは、まだまだ追う余地があるのではないだろうか。
「変身」と「よそおい」のための化粧行動、より深く認識していきたい。
(2022年11月27日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
すごく面白かった!やたら本の名前やら先行研究やらデータやら出てくるから信用出来そうだなって思うけど全部鵜呑みにしていいのかわからないので他の本も読みたいと思います
-
何とブクログの登録者が他にいない。誰にも読まれていないのかな? ちょっと残念。
化粧の歴史を社会学的にとらえ直す試みは面白い。文化はこうでなくちゃね。ここで書かれていることが、どれだけ正しいのかは分からないけど(著者の記述もけっこう恣意的で危なっかしい)、男の化粧ってのは歴史的にもめずらしいものではないらしい。自分の育った環境だと「男が化粧するなんてとんでもない」ことだったし、抵抗感もある。けど自分の世代がそうだからといっても、それが常識とは限らないんだね。もちろんこれは化粧のことだけじゃないよね。