林業改良普及双書No.167 木質エネルギービジネスの展望

著者 :
  • 全国林業改良普及協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784881382523

作品紹介・あらすじ

この10年ほどのあいだに欧州などでは薪やチップ、ペレットを直接燃やす燃焼機器が目覚ましく改善され、ビジネスとして定着してきました。
本書では海外の状況を紹介し、日本の現状を顧みたうえで、進むべき今後の方向を展望したものです。
取り上げる主要トピックスは、木質エネルギーをめぐる過去半世紀の状況の変化、木質エネルギーのポテンシャル、森林バイオマスのサプライチェーン、木質バイオマスの成型燃料化、進歩するバイオマス燃焼の技術と環境負荷です。
これに加えて注目される新しい技術のいくつかを最後にやや詳しく紹介しています。

感想・レビュー・書評

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  • 結局、熊崎先生が一番詳しいということがわかる。

    今年度の調査でも協力してもらっていれば、と思うが、
    他方、自分たちで考えてやったことに意味があるとも。

    ただし、来年度以降、助けを求めるのであれば、熊崎先生だ。

  • 再生可能エネルギーの一つとして注目されている木質エネルギーって、いったいどのようなものなのだろうかという観点から、木質エネルギーの概要、ビジネス、最新技術までを紹介している。
    石油の代替エネルギーだから、その動向は石油の価格に影響されるのですが、今は石油が安いから少し逆風なのかなと思ったりします。

  • 木質エネルギーの歴史、先進諸国の取り組み、木質エネルギーのポテンシャル、木質バイオマスのサプライチェーン、などなど第一人者の熊崎実さんの熱い思いのつまった一冊。

  • 兵庫県で働いていた時に購入。鳥取にもバイオマス発電所ができるとのことなので、ちゃんとこの本読んでみよう。

  • ・IGCCは事業として動いていない。木質バイオマスからの燃料の製造もコスト高
    木質バイオマスに限って言えば最大のメリットはそのまま燃やしても効率よく熱が得られるということ。
    ・ニューヨーク取引所でのテキサス産軽質油(WTI)+運賃と保険=日本に入ってくる原油のCIF価格

    ・小規模の発電施設では、高温高圧の蒸気を作るのが技術的に困難で、低効率・高コストになってしまう。

    ・木の成長が止まると、二酸化炭素のネットの吸収量もゼロに近づいてくる。
    →植林したら積極的にそれを収穫し、エネルギーとして活用すべき。

    ・バイオマスから効率よく電気をとるというのは難事。少なくとも発電専用プラントは、効率が悪く採算をとるのが難しい。熱の生産をメインに、無理のない範囲で電気を取るCHPが本筋ではないか。
    →国内エネルギーの消費の40%は熱生産に向けられている。
    →風力や太陽光発電と比べてバイオマスがユニークなのは、質の高い熱が得られる点

    ・ボイラの熱効率の改善、CO排出量の低減が進んでいる。

    ・カナダやロシアは自国でのペレットを欧州への輸出用として生産拡大している。

    ・丸太を使うと、破砕と乾燥の工程が追加されコスト高になってしまう。大規模プラントにするしかない。

    ・ペレットが常にベストではない。薪を安く生産できるのであれば、薪ストーブや薪ボイラによる暖房、給湯が最適。チップが比較的安くて、効率的にもやせるのであれば、ペレットよりもずっと有利になる。

    ・軽い熱化学処理を加えたトレファイドペレット

    ・今日ではエネルギー取得だけを目的にして森林を伐採するケースはほとんどない。

    ・エネルギー植林という考え方

    ・最終用途は建築・家具に22%、紙・板紙に32%、残りの46%が燃料となっている。つまり、構造材やパルプ原料の採取を目的にして立木が伐採されたとしても、燃料にしかならない部分が多い。

    ・日本は木質燃料の森林や工場残材からの供給がきわめて少ない。

    ・日本は丸太の生産量が縮小していっている。
    →輸入材への抵抗が減った。

    ・良質材志向がいいのは良質材が高く売れるときだけで、それは長くは続かなかった。
    昔は国産材の価格が高かった。
    →旧前とした林業からの脱却を遅らせた。

    ・ハーベスタ等の自走式の機械
    →丸太やパルプ材と一緒でなければ、エネルギー用のバイオマスは山から降りてこない。
    調達コストを下げることが肝(集材・運搬コストが非常に高い)

    ・2030年にはバイオマスは10%から16%、風力・太陽は合わせても6%程度が限界

    ・日本の森林も高齢化している。

    ・早世樹種のエネルギー・プランテーションということになれば、低緯度の熱帯・亜熱帯にはかなわない。単位面積当たりの乾物生産量が段違いに大きい。

    ・バイオマスはつなぎ!太陽光やヒートポンプ、地熱の技術革新までの。
    (爆発的にエネルギー生産を増やすのは無理。ただ無駄はあるということ)

    ・日本は間伐材は狩り捨て。なぜなら木を運び出してくる道がないから。特に低質財の出口がない。
    →これをどうやってお金にするか

    ・疲弊著しい中山間地の経済を立て直すには、林業の再建が欠かせないが、当面は活用を通してエネルギー自立を目指すのが現実的

    ・小型のボイラは、低質なものを受け入れるのに余計な装備がかかる。小型は燃料の質を高めて対応するしかない。チップボイラが本領を発揮するのは地域冷暖房等のもう少し大きいもの

    ・出力規模の大きいボイラほど安く燃料を入手しているのは、質の悪いバイオマスを安く入手しているから

    ・中間土場・・集荷も簡単、乾燥もさせられる (集荷のコスト低減)

    ・含水率は熱効率に大きく効いてくるので考慮する必要がある。

    ・バイオマスが成長するBG
    ① 伐出作業の機械化・集団化
    ② 原油価格の上昇
    ③ 再生可能エネルギーへの政策支援

    ・林業が補助金なしでやっていくにはバルクの低質バイオマスからの収入が重要なカギ

    ・残材を林に残しておくと、メタンのような管玄炭素が多く発生する。→地球温暖化

    ・間伐でお金を得られる仕組み作りを!

    ・外国にお金を払うのではなく、国内で二酸化炭素の削減を推進するような資金の流れを作るべき。

    ・川上と川下をつなぐには木質燃料の生産と配給を担う事業体が介在しなければならない。サプライチェーン。これらの会社が二酸化炭素クレジットをまとめて申請すればよい。

    ・山から降りてくる残材で発電したものは高く買い取る仕組みは?

    ・毎年補助金を1%ずつ下げていき、コスト削減を事業者に求める。

    ・木材市場での常識的な序列は、構造用木材・パルプ材・上質の燃料用材・低質の燃料用材。

    ・木質バイオマスの本命は熱生産であり、発電するにしても熱電併給でなければならない。

    ・低い効率をそのままにして、チップの価格だけを高めるような政策は避けるべき。

    ・ペレットの含水率は10%

    ・ペレット化・・一定の固形物に成型すること。細かく粉砕して乾燥・圧縮する。

    ・ペレット2kgは灯油1Lに相当する。

    ・木材自体に備わっている凝縮力のようなものを利用している。

    ・鉄筋に相当するのが細かい繊維質のセルロース
    →一度高温でとかして、変形。そして温度を下げて再固化

    ・プレーナ屑で7.5m3で1tのペレットが作成可能

    ・ペレットは差別化する銘柄化の動き

    ・ペレットは、燃料の製造に要するエネルギーの比率が低い。液化ガスはエネルギーのロスが大きい。

    ・大型の石炭火力と混焼することで、バイオマスの持つ化学エネルギーの40%前後が電気に変換される。バイオマス専焼だと20%~25%になってしまい。二酸化炭素の削減効果も半減してしまう。

    ・熱量で10%程度までの直接混焼であれば、既存の石炭火力のシステムにバイオマスを投入するだけでよい。

    ・トレファクション・・・焙煎バイオマス。石炭に近くなる。腐らない。含水率も非常に低くなる。屋外貯蔵可能。280度程度で熱化学処理。エネルギーは10%程度損失するのみ。質量は30%減る。

    ・日本における木質ペレットは増加傾向。おが屑は家畜の敷料として比較的有利な価格で取引されている。そのため、初期のペレットはほかに使い道のない樹皮を主原料にせざるおえない。ポテンシャルからすれば、間伐材・林地残材のペレット。おが屑やプレーナ屑と比べると、灰分量がやや多くなり、生産コストが高くなるという不利はまのがれない。

    ・ペレットを導入してもらうのには、価格と安定供給が重要。ペレットの品質に見合った燃焼機器が入手できること、取り付け・メンテナンス・灰の処理のような事後サービス体制が整っていること。良質のペレットが必要な時に確実に入手できること。

    ・燃料が完全に燃えていればCOは発生しない。ガス性の有機物や有機性の排出も減ってくる。

    ・燃焼によって熱を放出するのは、炭素と水素。水分があると、その熱が水の分解に使用されてしまう。

    ・燃焼によってCとHの結合が敗れる。これによりエネルギーが放出される。絶乾木材の発熱量は20MJ/kgで石炭の3分の2、石油の半分。

    ・含水率55%を超えると燃えない。

    ・不完全燃焼の理由・・燃料と燃焼空気とが完全にまじりあっていない。空気が不足している。燃焼温度が低すぎる。残留時間が短すぎて酸素との反応が不十分。

    ・二段階燃焼は発生ガスを燃焼させる。

    ・草木やストローでは塩素の含有率が高い。塩素がダイオキシンなどの生成に寄与する。

    ・メタンは炭素が二酸化炭素に、水素が水になるときの中間生成物

    ・樹皮に灰分が多いのは樹皮自体の組成のほか、土や石などの付着物があるから。
    廃木材には加工や利用の過程で付加された異物や汚染物質で灰分が高くなる。

    ・有害物質は揮発してフィルター飛灰に濃集。さらに濃集率を高める技術開発が必要。

    ・ボトムアッシュとサイクロン飛灰は肥料として再利用可能。
    廃木材の場合はボトムアッシュ等にも有害物質が含まれてしまう。

    ・吸収冷温水機を使えば木質バイオマスも冷房に使用できる。容器内を真空にすると水は低温度で帰化(沸騰)する。

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