- Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
- / ISBN・EAN: 9784882932871
作品紹介・あらすじ
母が作ったばかりの桶一杯のこんにゃく。そのべろべろの感触に、少年の恵市は限り無い官能を覚える。時は経ち、自分のもとに来た嫁の情事を知った恵市。長年求めた快感の欲求を果たそうとする恵市のとった、猟奇的行動とは(表題作「べろべろの、母ちゃんは…」より)。異国情緒や土俗の世界を背景としたSM・同性愛・フェティシズム。独特のエロスを極限まで押し進めた、凄まじい迫力の10作品。芥川賞作家・宇能鴻一郎の恐るべき全貌が明らかになる。
感想・レビュー・書評
-
前々から気にかけていた
出版芸術社《ふしぎ文学館》シリーズ。
遂に手に取ったのは昭和の大官能作家(!)
宇能鴻一郎の初期短編集(1963~1970年)。
純文学からポルノに転向する途上の怪奇幻想系作品全10編。
芥川賞受賞作家とは、
この本を読むに当たってWikipediaを覗くまで知らなかった……。
面白かったが、期待していた風合いとは少し違っていた。
多分、文体の好みの問題だろう。
収録作から浮かび上がるのは、
女性に対する屈折した感情――のようなもの。
メインキャラクターたちは性愛への憧れを強く抱きつつも
希望を叶えられず、悶々としながら闇の彼方へ退場する。
基調はマザコン×マゾヒズムか。
肉体的にも精神的にもタフな女性に踏みつけられたい……とでもいった風な。
■地獄の愛(1969年)
女子医大生・美樹の憧れの“おじさま”梶原の秘密。
戦時中、見習い軍医として南方へ赴いた彼は
奇怪な体験によって普通の女性を愛せなくなっていた。
■柘榴(1966年)
淳司は徐々に身体の各部が麻痺して感覚を失っていく中、
整復道場に通ってマッサージを受けている。
担当の若い女性・清子に惹かれながら自らを卑下して
彼女を悲しませる淳司だったが……。
■花魁小桜の足(1969年)
長崎の按摩師が語った江戸時代の花魁・小桜の物語。
■菜人記(1963年)
寂れた漁村で虐げられて暮らす、通称・蓑虫太郎の悲劇。
一貫して残酷な、救いのない話
■わが初恋の阿部お定(1970年)
初恋の女性が阿部定だったという語り手の被虐嗜好について。
■狩猟小屋夜ばなし(1969年)
インドでハンティングを楽しむ日本人たちが、
暇潰しに小屋で一つ話を語る。
■美女降霊(1970年)
舞踊家の妻を失った一ノ瀬は霊媒師を頼って
巫女の身体に妻の霊を降ろしてもらおうとする。
■べろべろの、母ちゃんは……(1969年)
母が美しい足で桶の中身を踏んで作る蒟蒻に
魅了された恵市。
その肌触りに取り憑かれた彼は長じて結婚したものの……。
■お菓子の家の魔女(1970年)
奇妙な招待状を受け取った河村は
クリスマスイヴの夜に家を抜け出し、秘密のイベントへ。
SMショーらしきものの連続の後に見た夢は……。
■リソペディオンの呪い(1970年)
lithopedion(石児)
=妊娠中に死亡した胎児が母体に吸収されず、
異物反応の一部として石灰化したもの。
鍾乳洞の怪しい地蔵を破壊した村長に降りかかった悲劇。
その孫の釜足のさすらいと帰郷――。 -
雄尻(おしり。類義語、雄っぱい)だらけの表紙のインパクトもすごいが、読んでみたら中身の方がもっとすごかった。流石は芥川賞作家、「あたし、濡れちゃったんです」だけの人じゃない。
-
性的倒錯を描いた短編作品集。SM、同性愛、カニバリズム…どれもアブノーマルです。
鬼畜だと聞いた『菜人記』目当てで読んだけど思っていたより軽めだった。小説自体が短かったのと、主人公の蓑虫太郎の身体と芯がしっかりしていたからだと思う。人生は凄惨の一言ですが。
表題作の『べろべろの、母ちゃんは……』が一番気持ち悪くて良かったです。主人公の狂気にぞわぁとした。こんな気持ち悪い男性を描けるのすごい。 -
いやー、びっくり!!!!!!!!! 驚いた。
男の尻、尻、尻の表紙にこのタイトル。なんじゃこりゃ?な奇本。
土俗なエロスというかグロテスクで残酷なエロス。
カンニバリズム、フェティシズム、サディズム・マゾヒズム、ホモセクシュアル、纏足、隠れキリシタン、こんにゃくなど倒錯的な性の物語が強烈な匂いを放つ。読んでてクラクラするぐらい。
阿蘭陀行きの花魁を描いた「花魁小桜の足」、筋ジストロフィーの少年の「柘榴」、あまりにも残酷な「菜人記」、あまりにもこんにゃくな表題作と奇作ぞろい。
土着な澁澤龍彦、お下劣な赤江瀑、気取らない谷崎・・・。
デカダンじゃない退廃。あ、バタイユに非常に近い。
幻想文学でもなく、官能小説でもなく、純文学でもない。この感じは、まさに「中間小説」?
いやいや、まだまだ知らない本っていっぱいあるし、こんな見っけもんがあるから読書って面白い。
作者の宇能鴻一郎は、昭和に思春期を過ごした者にとってはドキドキする名前。「わたし・・・しちゃったんです」の文体で官能小説界に革命を起こした。(橋本治にも影響を与えた)が、ペンネームは、マルクス経済学者に因み、1962年に芥川賞を受賞、三島と並べ賞賛され、三島の自殺を機に純文学の筆を折ったことはあまり知られてない。僕も知らなかった。
もっと読みたい、と古書を探すが、うーん、やっぱりお高いのね。このへんって復刻することってないだろうしなぁ・・。
ところで、この「ふしぎ文学館」シリーズは、星新一、横溝正史などの大御所から、日影丈吉、北村想、戸川昌子、式貴士とマニアックなところまで揃えている。日本版「異色作家短篇集」か「奇想コレクション」?ちょっと注目。-
黒糖さん、ありがとうございます。ぜひ読んでみてください。’60年代いや昭和30年代の香りがぷんぷんします。
「ふしぎ文学館」、洗練されない装...黒糖さん、ありがとうございます。ぜひ読んでみてください。’60年代いや昭和30年代の香りがぷんぷんします。
「ふしぎ文学館」、洗練されない装幀もまた魅力的(笑)。2012/12/27
-
-
2009/
2009/
なんだか、すっごく読んでみたいです(^^ゞ
なんだか、すっごく読んでみたいです(^^ゞ
個人的に文体が好みではなかったので、
あまり心に刺さりませんでした(残念)。
ハマる人はハマると思う...
個人的に文体が好みではなかったので、
あまり心に刺さりませんでした(残念)。
ハマる人はハマると思うのですが……。