べろべろの、母ちゃんは… (ふしぎ文学館)

著者 :
  • 出版芸術社
3.63
  • (2)
  • (1)
  • (5)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 29
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784882932871

作品紹介・あらすじ

母が作ったばかりの桶一杯のこんにゃく。そのべろべろの感触に、少年の恵市は限り無い官能を覚える。時は経ち、自分のもとに来た嫁の情事を知った恵市。長年求めた快感の欲求を果たそうとする恵市のとった、猟奇的行動とは(表題作「べろべろの、母ちゃんは…」より)。異国情緒や土俗の世界を背景としたSM・同性愛・フェティシズム。独特のエロスを極限まで押し進めた、凄まじい迫力の10作品。芥川賞作家・宇能鴻一郎の恐るべき全貌が明らかになる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 前々から気にかけていた
    出版芸術社《ふしぎ文学館》シリーズ。
    遂に手に取ったのは昭和の大官能作家(!)
    宇能鴻一郎の初期短編集(1963~1970年)。
    純文学からポルノに転向する途上の怪奇幻想系作品全10編。
    芥川賞受賞作家とは、
    この本を読むに当たってWikipediaを覗くまで知らなかった……。

    面白かったが、期待していた風合いとは少し違っていた。
    多分、文体の好みの問題だろう。

    収録作から浮かび上がるのは、
    女性に対する屈折した感情――のようなもの。
    メインキャラクターたちは性愛への憧れを強く抱きつつも
    希望を叶えられず、悶々としながら闇の彼方へ退場する。
    基調はマザコン×マゾヒズムか。
    肉体的にも精神的にもタフな女性に踏みつけられたい……とでもいった風な。

    ■地獄の愛(1969年)
     女子医大生・美樹の憧れの“おじさま”梶原の秘密。
     戦時中、見習い軍医として南方へ赴いた彼は
     奇怪な体験によって普通の女性を愛せなくなっていた。

    ■柘榴(1966年)
     淳司は徐々に身体の各部が麻痺して感覚を失っていく中、
     整復道場に通ってマッサージを受けている。
     担当の若い女性・清子に惹かれながら自らを卑下して
     彼女を悲しませる淳司だったが……。

    ■花魁小桜の足(1969年)
     長崎の按摩師が語った江戸時代の花魁・小桜の物語。

    ■菜人記(1963年)
     寂れた漁村で虐げられて暮らす、通称・蓑虫太郎の悲劇。
     一貫して残酷な、救いのない話

    ■わが初恋の阿部お定(1970年)
     初恋の女性が阿部定だったという語り手の被虐嗜好について。

    ■狩猟小屋夜ばなし(1969年)
     インドでハンティングを楽しむ日本人たちが、
     暇潰しに小屋で一つ話を語る。

    ■美女降霊(1970年)
     舞踊家の妻を失った一ノ瀬は霊媒師を頼って
     巫女の身体に妻の霊を降ろしてもらおうとする。

    ■べろべろの、母ちゃんは……(1969年)
     母が美しい足で桶の中身を踏んで作る蒟蒻に
     魅了された恵市。
     その肌触りに取り憑かれた彼は長じて結婚したものの……。

    ■お菓子の家の魔女(1970年)
     奇妙な招待状を受け取った河村は
     クリスマスイヴの夜に家を抜け出し、秘密のイベントへ。
     SMショーらしきものの連続の後に見た夢は……。

    ■リソペディオンの呪い(1970年)
     lithopedion(石児)
     =妊娠中に死亡した胎児が母体に吸収されず、
      異物反応の一部として石灰化したもの。
     鍾乳洞の怪しい地蔵を破壊した村長に降りかかった悲劇。
     その孫の釜足のさすらいと帰郷――。

    • 本ぶらさん
      うーん…。
      なんだか、すっごく読んでみたいです(^^ゞ
      うーん…。
      なんだか、すっごく読んでみたいです(^^ゞ
      2021/02/23
    • 深川夏眠さん
      ストーリーは面白かったのですが、
      個人的に文体が好みではなかったので、
      あまり心に刺さりませんでした(残念)。
      ハマる人はハマると思う...
      ストーリーは面白かったのですが、
      個人的に文体が好みではなかったので、
      あまり心に刺さりませんでした(残念)。
      ハマる人はハマると思うのですが……。
      2021/02/23
  • 雄尻(おしり。類義語、雄っぱい)だらけの表紙のインパクトもすごいが、読んでみたら中身の方がもっとすごかった。流石は芥川賞作家、「あたし、濡れちゃったんです」だけの人じゃない。

  • 性的倒錯を描いた短編作品集。SM、同性愛、カニバリズム…どれもアブノーマルです。
    鬼畜だと聞いた『菜人記』目当てで読んだけど思っていたより軽めだった。小説自体が短かったのと、主人公の蓑虫太郎の身体と芯がしっかりしていたからだと思う。人生は凄惨の一言ですが。
    表題作の『べろべろの、母ちゃんは……』が一番気持ち悪くて良かったです。主人公の狂気にぞわぁとした。こんな気持ち悪い男性を描けるのすごい。

  • いやー、びっくり!!!!!!!!!  驚いた。

    男の尻、尻、尻の表紙にこのタイトル。なんじゃこりゃ?な奇本。
    土俗なエロスというかグロテスクで残酷なエロス。
    カンニバリズム、フェティシズム、サディズム・マゾヒズム、ホモセクシュアル、纏足、隠れキリシタン、こんにゃくなど倒錯的な性の物語が強烈な匂いを放つ。読んでてクラクラするぐらい。

    阿蘭陀行きの花魁を描いた「花魁小桜の足」、筋ジストロフィーの少年の「柘榴」、あまりにも残酷な「菜人記」、あまりにもこんにゃくな表題作と奇作ぞろい。
    土着な澁澤龍彦、お下劣な赤江瀑、気取らない谷崎・・・。
    デカダンじゃない退廃。あ、バタイユに非常に近い。
    幻想文学でもなく、官能小説でもなく、純文学でもない。この感じは、まさに「中間小説」?
    いやいや、まだまだ知らない本っていっぱいあるし、こんな見っけもんがあるから読書って面白い。

    作者の宇能鴻一郎は、昭和に思春期を過ごした者にとってはドキドキする名前。「わたし・・・しちゃったんです」の文体で官能小説界に革命を起こした。(橋本治にも影響を与えた)が、ペンネームは、マルクス経済学者に因み、1962年に芥川賞を受賞、三島と並べ賞賛され、三島の自殺を機に純文学の筆を折ったことはあまり知られてない。僕も知らなかった。
    もっと読みたい、と古書を探すが、うーん、やっぱりお高いのね。このへんって復刻することってないだろうしなぁ・・。

    ところで、この「ふしぎ文学館」シリーズは、星新一、横溝正史などの大御所から、日影丈吉、北村想、戸川昌子、式貴士とマニアックなところまで揃えている。日本版「異色作家短篇集」か「奇想コレクション」?ちょっと注目。

    • chabu-daiさん
      黒糖さん、ありがとうございます。ぜひ読んでみてください。’60年代いや昭和30年代の香りがぷんぷんします。
      「ふしぎ文学館」、洗練されない装...
      黒糖さん、ありがとうございます。ぜひ読んでみてください。’60年代いや昭和30年代の香りがぷんぷんします。
      「ふしぎ文学館」、洗練されない装幀もまた魅力的(笑)。
      2012/12/27
  • 2009/
    2009/

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

宇能鴻一郎(うの こういちろう)
1934年、北海道札幌市生まれ。本名鵜野広澄。家族4人で、東京、山口、福岡、満洲国(現中国東北部)撫順、長野県坂城と移り住み、満洲国奉天にて終戦を迎える。福岡県立修猷館高校から東京大学教養学部文科二類に入学。修士課程在学中の1961年、仲間たちと創刊した同人誌『螺旋』掲載の「光りの飢え」が『文學界』に転載され、これが芥川賞候補となる。次作の「鯨神」が翌年1月に芥川賞を受賞。以後おもに性を主題として新しい文学を切り開くが、文壇では正当に評価されず、1971年から徐々に女性告白体の官能小説に軸足を移した。歴史小説、ハードボイルド、推理小説でも独自の世界を築いている。
 主な著書に『密戯・不倫』『楽欲(ぎょうよく)』『痺楽』『肉の壁』『黄金姦鬼』『お菓子の家の魔女』『切腹願望』『金髪』『斬殺集団』などがある。

「2022年 『甘美な牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

宇能鴻一郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
江戸川 乱歩
ガブリエル ガル...
ミヒャエル・エン...
安部公房
ボリス ヴィアン
ジャック ケッチ...
フアン・ルルフォ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×