ダニーボーイ

著者 :
  • 青林工藝舎
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本棚登録 : 131
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883792979

感想・レビュー・書評

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  • この話に出てくるイトウサチオという架空のシンガーは、その類稀なる歌唱力で周囲を圧倒していく。
    時は過ぎイトウサチオの存在が人々の記憶から消えていこうとしても、それでもなお歌の響きだけが頭の片隅に残って、懐かしい余韻となって彼らの人生に寄り添う。読者はその記憶の掘り起こし作業を一緒に追体験する形になる。

    島田さんは描き込みの細かい人ではなく、極力シンプルな描写を得意とする漫画家ではあるけれど、コマの運びとか、余白の使い方がとても上手だ。全ページが映像的というか、丁寧に作られた映画を見ているような気分になる。

    繰り返して読みたい一冊。

  • トニー賞にノミネートされた日本人俳優・伊藤幸男の人生。

    サチオの視点で語るのではなく、サチオに関わった人々の回想の形で人生を追っていくのがうまいです。ストーリーの芯はしっかりしていながら群像劇的な面白さもあり、何よりもなんとも言えないノスタルジーを感じさせる漫画です。
    キザになってしまう一歩手前の台詞回しも素晴らしいです。

    ラストの解放感、そして『東京命日』ほど複雑怪奇ではないものの、一度読み終わってもう一度読んだ時の「このシーンがここにつながっていたのか!」という驚きを味わえる構成の妙。
    洗練されたシマトラ節を味わえる傑作です。

  • 1976年、ブロードウェイで圧倒的な歌唱力を披露し、
    その後消えてしまったとある日本人。
    その生涯を様々な人達の視点で語られるストーリー。

    島田虎之介氏の作品はどれもこれもすごすぎるが
    これもとても良かった。
    どこからこんな題材を探してくるのか、そして
    どうしてこんな語り口でその人物を生き生きと
    描かせるのか。

    すごいとしか言い様がない。最後泣きまくった。
    絶対万人受けはしないだろうが、漫画には
    こんな作品もあるというそれだけでありがたい気持ち。

  • 映画っぽいから
    映画化すればいいのに

  • 舞台化をきっかけに拝読。
    そのまま読んでももちろん素晴らしいんですが、youtubeなんかでタイトルになっている曲を探してきて、それかけながら読んでみてください。素敵な読書体験ができます。
    音楽へのリスペクトと愛に満ちた作品でした。
    「フィッシュストーリー」「大阪ハムレット」あたり好きな方におすすめです。

  • ブロードウェイで活躍した日本人。
    本当にあったエピソードから話を膨らませていったんじゃないかと思う
    素敵なファンタジー。
    圧巻です。

  • 天才か!
    どうして今までこの作家の存在を知らなかったのだろう!
    というか今更かも知れないけど、知ることができて良かった。

    すごい。
    一人の男をこんな風に断片をつないで描く。
    「記憶」の物語。
    記憶はどんなときに甦るのだろう。
    ふいに。
    おそれず。

    すごい。
    すごいなあ。

  • 天性の歌声を持つ俳優 伊藤幸男の人生が、彼の歌を聞いた人たちの語る思い出という形で描かれている。

    「東京命日」と同様、いくつもの人生が交錯しながらラストにつなげてゆく描き方。

  • 相変わらず嘘がうまく、大風呂敷を畳むのが上手い。

    まず一番大きな嘘は
    作中劇の『極東組曲』。
    実在するのは『パシフィック・オーバーチュア 太平洋序曲』。
    で舞台も戦後日本でもなく幕末日本(幕末日本が題材のブロードウェイミュージカルがあったというも衝撃だが)。

    で、肝心な内容は
    とある役者に関わった人々の記憶の断片を積み上げて描かれる物語。
    ずっと記憶に残るような力があっても歴史に埋もれてしまうと言う残酷さも感じるけど、美しくまとめられてる。
    (記憶が一番美しいってことなのかな??)

    それにしてもこの作者の題材に鎮魂歌的なものが多いのはなぜだろう。
    『ラスト・ワルツ』の消防士達、『東京命日』、『トロイメライ』のピアノ、そして『ダニー・ボーイ』の伊藤幸夫(モデルはイサオ・サトウ)。

  • 島田虎之介待望の最新作。
    この作品では伊藤幸男という役者の取り巻く人々を描いている。
    実際に実在した役者をモチーフにしているようだ。
    この人の漫画は映画的とよく評価されるようだが、本当に実写化して欲しいと思えるような作品ばかり。
    この作品はミュージカルを取り上げているので、物語の奥行きが更に広がっているような感覚すらある。
    深くじっくり漫画を読ませるということに関しては右に出る者を知らない。
    ただこういう作風は商業的には厳しいだろうな、と思う。
    青林工藝舎だから成立しているというか。
    前にも書いたけどサブカル畑に留まっているのには惜しい才能。
    何だか作者と漫画の主人公に重なる部分があるような気がした。
    もっと売れてほしい

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著者プロフィール

1961年生まれ。2000年「エンリケ小林のエルドラド」(青林工藝舎)でアックスマンガ新人賞佳作を受賞しデビュー。2008年、『トロイメライ』(青林工藝舎)で手塚治虫文化賞新生賞を受賞。著書に『九月十月』(小学館)『ロボ・サピエンス全史』(講談社)など。

「2019年 『片岡義男COMIC SHOW』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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