ルートセッテン

著者 :
  • スターツ出版
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本棚登録 : 34
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (527ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784883810796

感想・レビュー・書評

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  • 第2回日本ケータイ小説大賞にて優秀賞を受賞し書籍化。書籍版では加筆修正や設定変更があるが、ネット版(野いちご・ベリーズカフェで公開中)は変更前の状態。帯のQRコードからスペシャルストーリーが読めるが、該当ページはもうない。作品自体は野いちご・ベリーズカフェに鍵付きで投稿されている。(QRコードからパスワードを入手できたらしい)
    番外編が野いちご・ベリーズカフェで公開中。
    前日談の続編もあるが、ネット版は非公開、個人出版の書籍版は完売している(上下巻、発行部数2,000部)。作品紹介など断片的に読める情報から推察するに、今作で出された《答え》と《真実》は違うような気がする。とはいえ、今作は今作で綺麗にまとまっているので《1冊完結作品》と考えれば問題はない。(けど存在を知ってしまったからには読みたいよ…)

    ↓以下、ざっくりとした感想。

    まずその厚みに驚いた。3cmくらいある。「ミステリーホラーで、この文章量って…」と怯んだが、いざ開いてみれば元がケータイ小説だからかページに文章がみっちり並んでいるわけではなく、頭がいい主人公の一人称視点だけど小難しい言い回しはなく、会話も多くて読みやすい。
    ホラーって三人称視点や「一方その頃」を使って《犠牲者が死ぬシーン》や《元凶のチラ見せ》を書きたくなってしまうものではと思うけど、主人公視点を徹底的に貫いているから余計な情報が入らず、主人公と同じ状態(=フェア)で読み進めていけるのが嬉しい。

    まだページが半分くらいあるのにメインヒロインに呪いが回ってきたのは「先が長くない?(残り半分をメインヒロインが呪われた状態というのを背負っていくのは重くない?)」と思ったし、終盤に呪いが解けてもまだまだページが残っていたから「エピローグにしては長くない?」と思ったので、油断しなかった。結果、正解だった。

    数学好きな主人公ではあるけど「結果には必ず過程があり、そうなる方式(つまり要因、組み合わせなど条件)が存在するはず」という考え方なだけで、数式を使って謎を解くわけではない。だから数学が苦手でも問題なく読める。公式あらすじを読んで「数学の知識がないと楽しめないのかな」と思ったので、主人公の数学好きをアピールするのはあんまりよくないと思った。紹介じゃなく強調と受け取った。

    人がたくさん死んでいる時点で「主人公が呪いの謎を解いて、周りの人が助かりました。めでたしめでたし」なんて終わりにならないことは想像できたけど(そんなんじゃ受賞できないでしょ)、なんともやるせない。
    呪いの謎は解けたし、最後に大きな犠牲が出てしまったが弔いはできていたので、その点はすっきりする。が、「死の恐怖が迫る中でも人を信じ、愛そうとする」物語とアオられているのに、主人公の愛が誰に向いているのかわからないまま終わるのでモヤモヤも残った。

    ↓以下、細かい感想。

    主人公の潤は淡々としていて冷たい印象があるけど、ひねくれ者でも薄情者でもない。女子が苦手(不慣れとかではなく、理解不能的な意味で)でも、家まで送るとか自然と庇ったり気遣いはできているので、嫌な感じはしない。
    かける言葉も論理的に思考・分析した結果だから冷たさはあっても嘘じゃないのは確かなので、相手にもまっすぐ伝わるのかなと思う。
    死の待ち受け事件に奔走するのも、ただの好奇心だけじゃなく、ただの正義感だけでもないのが、かえってリアルで好感を持てる。
    驚く出来事に遭遇しても取り乱すことはないので、こちらも落ち着いて読める。

    呪いの犠牲者は「呪いで死ぬ」というより「呪いの恐怖に耐えきれなくて自殺を選ぶ」という感じなのかなと思ったら、中盤からわけがわからない死に方も出てくる。グロテスクな死に方だけど、描写が詳細じゃないから鮮明に想像できるわけではないので個人的にはセーフ。

    呪いの原因を別人格にしたのは上手い。「ひどい目にあったからって、他人を呪っていいわけないだろ」の感情は呪いの人格=ルートの女だけに向けられ、元の人格の七海には「つらい目に遭って、かわいそう」だけを向けることができる。だから呪いの元凶とはいえ七海を憎むことにならないようにできている。

    隠語の「ウリ」がわからない。前後の内容から推察するに「売春」? 2008年頃だと「エンコー(援助交際)」はもう古いか…。潤なら「ウリ?」って返してはっきり説明してもらってもよかった気がする。

    潤とある人物が同じブランドの手帳を使っていると判明するが、潤は情報の記録・整理を全部頭の中でやっているから手帳を使っているイメージが全然なくてピンとこない。

    口絵や挿絵がなく描写も少ないから登場人物の外見がよくわからなくて、場面を想像しにくいのが難点。あとから描写が出てきて「そうだったんだ!?」ということが結構ある。
    潤がリボンタイなんていう普通の男子高校生では珍しいものをつけているのが終盤も終盤で判明するし、敦子は始まってからしばらくずっと「尻がでかい」しか情報がなかったよ…。
    河田は「主人公の友達のおバカで軽い情報通」からギャルゲーやハーレム漫画の主人公の友達(猿っぽい、モテない)を連想するけど、バカでも特進クラスだし、女の子にモテるし、染髪カラコンだしで、全然イメージと違って混乱した。
    堀口は登場時の「廃墟のクラブに張り込む女連れのいかつい男」からヤンキーっぽいのかと思ってた。実家が病院なのはギャップで済むけど、番外編で部活や進路が判明して全然イメージと違って混乱した。

    他の感想で「鈴木光司の『リング』に似ている」とあったので確認してみた(Wikipediaを読む程度)が、確かに共通点がいくつか見られる。怨念が残る要素もきっちり揃っているし、意味合いは異なるが柑橘の匂いまで。
    だからって、どうこう言うつもりはない。

    ↓以下、番外編の感想。
    ◇三人称視点で見ると、潤がめちゃくちゃかわいい。何かあればすぐオレンジジュースを要求するし、本編では一人称だからわからなかったけど結構笑っている描写があるし、ちょっと子どもっぽかったり猫っぽい行動もある。
    態度や口調はそっけないけど優しい上にこんなにかわいかったら、ギャップにやられてしまう。それで頭がいいんでしょ? そりゃモテるよ。
    ◇山岸の死に際はもっと激しく絶望的なものかと思っていた。だって本編で潤は山岸からの電話を(山岸と知らず)いたずらと判断して着信拒否したから、その後は何もわからないわけで。「山岸がまた潤に電話していたらどうしよう。好きな人に着拒されたと知った絶望で車に飛び込んだのでは…」と、ハラハラしていたから。
    ◇番外編を全部読んでみて、潤に本当に好きな人がいるなら、その相手は芙美かなと思った。敦子は七海が好きだと思っているようだけど、「美少女相手なら見とれちゃっても仕方ない」までで、恋愛感情を持っているとは思わなかったし。
    タイトルから明らかに潤絡みなスペシャルストーリーが読めないのが口惜しい。

  • 携帯小説で唯一確りとしたホラー作品

  • 途中ホラーやグロ要素もあるけど、最後まで一気に読みました。
    真相に辿り着く過程と、それにまつわる人の交差がおもしろかった

  • 携帯小説ながら、深くて好き。ストーリーも構成もしっかりしてる。理系の主人公が、理系の思考で携帯で繋がる謎の死を乗り越えようとするお話。推理小説ではない。

  • ケータイ小説から生まれた本だから読みやすいと思ったけど、自分には合わなかった。
    【10'7/30】読書再開するがやはり断念。
    分かりづらい箇所が読み進める度にちらほら…なんだか読みづらい。
    結局、集中できなかったのでリサイクルへ。

  • ホラー。携帯の待ち受けが勝手に変わり、その待ち受けには数字が。
    日々カウントダウンを続ける数字、そして0になったら携帯の持ち主は死ぬ。

    ありがちなストーリーですが、さらさらと読みやすかった。

  • ありふれた内容。
    でも文章が軽く読みやすい。

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