佐藤一斎「言志四録」を読む

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  • 致知出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884746407

感想・レビュー・書評

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  • 昔の書物を解説した本は気をつけなければいけない。特にこういった自己啓発を主題としたものは、著者の主張に都合よく解釈されていないかどうか注意しながら読み進める必要がある。

    その点この本はおおむね立派に組まれていると思う。「おおむね」と言ったのは、「言志四録」が修身を目的とした書物であるにもかかわらず、著者がそれを用いて現在の政治批判・社会批判をしている個所が少しあるからである。「天を恨まず、人を咎めず」という言葉を紹介する一方で、著者の「虎の威を借る狐」的な傲慢さが多少見え隠れしているような気がするのである。


    とはいえ、この本で学ぶことは非常にたくさんある。数々のエピソードに刺激されていろいろな思索がわきあがり、私はときどき本を伏せて考え込まざるを得なかった。

    特に西郷隆盛の偉大さを紹介する第一章には刮目した。大久保利通らが猛烈に推進した「機構としての国家づくり」に対して「国家の基となるのは国民の志操」だという考えを持っていた西郷が、もう少し頑張っていてくれたらと思う。


    第二章にある漢三道一和尚のエピソードも面白い。

    お灸をすえていたら医者がやってきて「不浄日にお灸をすえると悪いことが起きる」と言ったので「そうですか」と灸箱を片付けたのに、医者が帰ったらまたお灸をすえにかかったというのだ。それを見た寺の小僧が訝しんだら「不浄日ならさっき帰ったよ。」

    和尚は不浄日など信じていないが、だからといって医者と論争しても始まらない。心が定まっていれば、世の中には譲って差し支えないことも多い。融通無碍とはこういうことかと感じ入った。


    それから、小学校校長だった東井義雄が卒業生に与えた詩には感動した。

    “太陽は
     夜が明けるのを待って
     昇るのではない
     太陽が昇るから
     夜が明けるのだ”


    私は妙にプライドが高いくせに気が弱くて、会議などで声の大きな人がリードしていくのを「ちょっと違うな」と思っても言い出すことができない。言い出しても「何を言ってるんだ君は」などと反論されると、「あスミマセン…」とすぐ主張を引っ込めてしまう。
    そんな自分が嫌で、第三章にあるような「その場、その場で主人公になる」ことを、なんとか心がけようとするんだけれどもうまくいかない。

    だが、言志晩録一三条(著者が一番好きだという)には励まされた。
    「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うることなかれ。ただ一燈を頼め」
    ないものねだりをするなということだ。自分が持つ光を信じろということだ。

    そしてさらに、あとがきにある坂村真民の詩に触れ、「ああこういうことか」と思ったのだ。

    “こちらから あたまをさげる
     こちらから あいさつをする
     こちらから 手を合わせる
     こちらから 詫びる
     こちらから 声をかける”

    とりあえずは、これを紙に書いて貼っておこう。

    ええ貼っておくだけじゃダメなことはよくわかります。わかっちゃいるんですが。

  • 志を持つべし!。人生とは何か、生きるとは何か、どうあるべきか、いつからか求め続けている気がする。そんなこんなで今回は、佐藤一斎という人を知り、言志四録を読みたくなって、検索したら神渡良平さんが著されていたので即買。自身の経験(反省)からも青年初期に志を持つことの重要性をあらためて学ぶ。師を持つことも縁にもよるが非常に有益。そんなこと、そんなあたりを読み取った。

  • 著者の言志四録を解説するお話が為になる。
    いろんな事が勉強になった。

  • 簗瀬紹介

  • 言志四録、欲しいなあ。

  • 読書会の第一歩…想い出の本。
    とにかく難しい内容だったが、素直に前向きになれた。

  • 学を為すには、人の之を強うるを俟たず。必ずや心に感興する所有って之を為す。

  • 大病を経て人生を見つめなおしたという著者:神渡氏から繰り出されることばは、やさしさと厳しさをもちながらも温かく、佐藤一斎『言志四録』を解説する。解説は単なる言葉の説明、現代語訳にとどまらず古今東西の偉人を例にあげ、心にしみる説明だ。繰り返し繰り返し読みたい1冊だ。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『いのちを拝む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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