エッセンシャル戦略的ブランド・マネジメント第4版

  • 東急エージェンシー
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784884971229

作品紹介・あらすじ

ブランド・マネジメントの権威の最新版「戦略的ブランド・マネジメント」から重要なエッセンスだけを再編集。ブランド・エクイティを構築、測定、管理するためのガイドラインと最新事例。

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  • ■顧客ベースのブランド・エクイティ:マーケティングにおける顧客の重要性(彼らのニーズとウォンツを理解し満足させること)を認識し、顧客の視点からブランディングにアプローチする

    ■製品と製品から連想される属性ないしベネフィットは、大きく3つのカテゴ リーに分類されている。
    ●探索財とは、食料品のように、消費者が目で見て強度、大きさ、色、スタイル、デザイン、重量、成分構成などの製品属性を評価できるものをいう。
    ●経験財とは、自動車タイヤのように、製品属性が目で見ただけでは簡単に評価できず、耐久性、サービス品質、安全性、扱いやすさや使いやすさを判断するには、実際に製品を試して体験する必要があるものをいう。
    ●信頼財とは、保険のように、消費者にとって製品属性が良くわからないものをいう。

    ■ブランド・エクイティの基本原理
    ●成果の差異は、当該ブランドのために行った過去のマーケティング活動の結果、製品に与えられた「付加価値」から生じる。
    ●この価値はさまざまな方法で創造することができる。
    ●ブランド・エクイティは、マーケティング戦略の解釈とブランドの価値評価を行うための共通基盤となる。
    ●企業に恩恵をもたらす(収益の拡大、コストの低減)ために、ブランドの価値を表明したり利用したりする方法は多種多様である。

    ■ブランド・マネージャーに必要とされるスキル
    ●マーケティングの基礎能力
    ●多種多様な消費者を理解できる文化的な素養
    ●デジタル活動を主導できるITとウェブのスキル
    ●新しいリサーチ手法やリサーチモデルを評価できる技術的知識
    ●デザイン技法を使いデザイナーと一緒に仕事ができるデザインの知識
    ●総合的なソリューションを考案できる創造性

    1.ブランドポジショニング・モデルとは、市場において顧客のマインド内に競争優位性を確立する手段である。
    2.ブランド・レゾナンスモデルとは、この競争優位性を生かして、顧客との間に強く活発なロイヤルティ関係を築く手段である。
    3.ブランドバリュー・チェーン・モデルとは、ブランドの価値創造プロセスを追跡し、ブランドマーケティングにおける支出と投資の経済的効果をより良く理解し、ロイヤル顧客を育成するとともに強いブランドを創出するための手段である。


     CBBEモデルの基本的な前提によると、顧客が長期にわたる経験を通じ、ブランドについて見聞きし、感じ、知ってきたものがブランドの力となる。言い換えれば、ブランドの力とは、何が顧客のマインドに残っているかである。強いブランドを構築するためにマーケターがしなければならないのは、製品およびサービスと、それらに付随するマーケティングプログラムを通じて、顧客に正しい経験をさせ、望ましい考え、感情、イメージ、信念、知覚、意見、経験などがブランドに結びつくようにすることである。
     顧客ベースのブランド・エクイティを改めて定義すれば、あるブランドのマーケティング活動に対する消費者の反応にブランド知識が及ぼす差別化効果となる。ブランドが特定されたときと、そうでないとき(つまり、製品に架空の名前がついていたり、名前を外したりした場合)を比較して、顧客がその製品や販売方法に好意的な反応を示す場合、当該ブランドはポジティブな顧客ベースのブランド・エクイティを有するといえる。

    ■強いブランドを持つことのマーケティング上の利点
    製品パフォーマンスの知覚の向上
    強いロイヤルティ
    競合企業のマーケティング活動への強い抵抗力
    マーケティング危機への強い抵抗力
    大きな利益
    価格上昇への消費者の非弾力的反応
    価格下落への消費者の弾力的反応 流通業者からの大きな協力と支援
    マーケティング・コミュニケーション効果の増大
    ライセンス供与機会の可能性
    ブランド拡張機会の増加
     
     
    ■ブランド連想のユニークさ
     ブランドポジショニングの要諦は、消費者に買ってもらう理由を与える持続的な競争優位性、すなわち「ユニーク・セリングプロポジション(USP)」を、当該ブランドが有しているかどうかである。マーケターは、競合ブランドと直接比較したり、それとなく強調したりして、この独自の違いを明確に示すことができる。パフォーマンスに関連した属性やベネフィット、パフォーマンスに関連しない属性やベネフィットのどちらを利用してもよい。
     強くてユニークなブランド連想はブランドの成功に不可欠であるが、競争にさらされていないブランドでもないかぎり、他のブランドと同じ連想を共有していることが非常に多い。複数のブランドで共有される連想の役割の1つは、カテゴリーメンバーシップを確立し、他の製品やサービスとの競争の範囲を規定することである。
     
    ■優れたポジショニングの開発
     ポジショニングの指針として、最後にもういくつか挙げておこう。第1に、優れたポジショニングは「現在」と「未来」の両方に立脚している。ブランドに成長と改善の余地を与えるように、ある程度は願望が込められている必要がある。市場の現状に基づいたポジショニングでは将来性への考慮が足りない。とはいえ、ポジショニングが今の現実から離れすぎていればそもそも達成不可能になる。ポジショニングのコツは、ブランドの実態と可能性の間の絶妙なバランスをとることである。
     第2に、関連するすべての類似化ポイントを慎重に見きわめるのが優れたポジショニングである。マーケターは、強みのある領域にばかり目がいき、ブランドが潜在的に不利な領域を見過ごしたり無視したりすることが多い。しかし両方を見る必要があるのは明らかだ。類似化ポイントがなければ差別化ポイントの意味はなくなってしまう。重要な競争力のある類似化ポイントを発見する良策は、競争相手のポジショニングをロールプレイしてみて、競争相手が意図する差別化ポイントを推測することである。競争相手の差別化ポイントが、自社ブランドの類似化ポイントとなる。消費者のマインド内にある意思決定上のトレードオフを探る消費者調査も有益な情報となるだろう。
     第3に、優れたポジショニングは、消費者視点で、消費者がブランドから得るベネフィットを反映すべきである。かつてシェル石油が行ったように、自社を「世界最大の石油販売会社」と宣伝するだけでは十分ではない。差別化ポイントを効果的にするためには、それが消費者にとってなぜ望ましいことなのかを明確にすべきである。つまり、そのユニークな属性から消費者が得られるベネフィットは何かということだ。シェル石油のほうががガソリンスタンドの数が多いので便利という意味なのか、それとも規模の経済性によりガソリン価格を安くできるという意味なのか。こうしたベネフィットが明確であれば、ポジショニングの基盤にすべきである。その場合、立証ポイントすなわちRTBは「ガソリン販売最大手」となる。
     第4に、次章でブランド・レゾナンスモデルとともに詳述するが、ブランドのポジショニングには理性と感性に訴える二面性が重要である。つまり、優れたポジショニングに「頭」と「心」の両方に訴求する差別化ポイントと類似化ポイントがあるということである。 
     
    ■ブランドを構築するフィーリング
    1.温かさ:このタイプのブランドは落ち着いたフィーリングを呼び起こし、消費者に隠やかで安らいだ感覚をもたらす。消費者は、ブランドに対して感傷的になったり、温かい心や愛情を抱いたりする。ウェルチのジャム、クエーカーのオートミール、アーントジェミマのパンケーキミックスとシロップは、温かさのフィーリングをうまく利用している。
    2.楽しさ:陽気なタイプのブランドフィーリングで、消費者を笑わせ、うきうきさせ、楽しい気分にさせ、陽気にさせ、愉快にさせる。有名キャラクターやテーマパークの乗り物を有するディズニーは、楽しさを連想させるブランドの代表例である。
    3.興奮:消費者を元気にさせ、特別な経験をしている気分にさせる。興奮を呼び起こすブランドは、高揚感や「生きている実感」、クールやセクシーといったフィーリングをもたらす。ティーンエージャーやヤングアダルトにとって、MTVは興奮を与えてくれるブランドといえる。
    4.安心感:このタイプのブランドは、安心、快適、自信といったフィーリングをもたらす。このブランドのおかげで、心配や悩みを経験せずにすむこともある。オールステート保険と「守ってくれる手」のシンボル、ステートファームと「良き隣人のように」のスローガンは、多くの人に安心感を伝達している。
    5.社会的承認:このブランドによって、消費者は自分の外見や行動などが他者から好ましく見られていると感じる。このような社会的承認は、自分が当該ブランドを利用しているのを他者から直接見てもらうことで得られる場合もあれば、それほど直接的でなく、自分が製品を使っていると考えてもらうことで得られる場合もある。高齢世代の消費者にとってキャデラックは、昔から社会的に承認されたシグナルとなるブランドであった。
    6.自尊心:このブランドによって、消費者は自分自身をより良く感じる。たとえば誇りや達成感、充足感を覚える。洗濯洗剤のタイドのようなブランドは、多くの主婦(主夫に「家族のために最高のことをしている」という感覚を与えてくれる。
     これら6つのフィーリングは大きく2つのカテゴリーに分けられる。最初の3つのタイプのフィーリングは経験によってその場で生まれるもので、1~3の順で強さが増す。後者の3つのタイプは、私的で持続性があり、4~6の重みが増す。

    ■ブランド レゾナンス
     ブランド・レゾナンスモデルの最終段階は、顧客がブランドに対して有する最終的なリレーションシップとアイデンティフィケーションのレベルに注目している。ブランド・レゾナンスとは、顧客がブランドにどれだけ「同調」していて、どのようなリレーションシップを抱いているかである。長期にわたって高いレゾナンスを有しているブランドにはハーレーダビッドソン、アップル、イーベイなどがある。
     レゾナンスは、顧客がブランドに対して抱いている心理的な絆の強さや深さと、ロイヤルティが生み出す活動のレベル(反復購買率、顧客がブランド情報やイベントや他の愛好者を探し出そうとする熱意)によって決まってくる。ブランド・レゾナンスは、以下の4つのカテゴリーに分類できる。
    1.行動上のロイヤルティ
    2.態度上の愛着
    3.コミュニティ意識
    4.積極的なエンゲージメント


    ■イベントと経験
     ブランドマネジメントにおいて、オンラインマーケティングと同様に重要な役割を果たすのがイベントと経験である。仮想空間のブランド構築は、現実の世界(実体の世界)でのブランド構築によって補完しなければならない。イベントと経験には、大規模な国際イベントの数百万ドル単位という多額のスポンサーシップから、店舗内の製品デモンストレーションやサンプリングプログラムのような単純なものまでいろいろある。こうしたさまざまなイベントと経験に共通するのは、ブランドが何らかの形で消費者の五感と想像力を魅了し、その過程でブランド知識を変化させる点である。
     経験はマーケターの想像力次第で、ありとあらゆる形態をとることができる。パナソニックは光学8倍ズームが可能なカメラ「ルミックスZX1」の認知を創出するために、人目を引く巨大な彫刻(特大サイズの鳩、トラフィックコーン、コーヒーカップなど)をロンドンやエジンバラほか、イギリスの4都市に配置した。デジタルの世界でも、フェイスブックで、カメラのズームレンズを使って日常的な物をデフォルメした画像の投稿を呼びかけるコンテストを行い、このキャンペーンを支援した。


    ■マーケティング・コミュニケーションの一般的ガイドライン
    1.分析的であれ:消費者行動や経営上の意思決定の枠組みを用いて、理路整然としたコミュニケーション・プログラムを開発せよ。
    2.好奇心を持て:あらゆる形態の調査を用いて顧客をより良く理解し、どうすれば消費者のために付加価値の創造ができるかを常に考えよ。
    3.1つのことに専念せよ:明確な標的市場に絞り込んでメッセージを送れ(絞り込んだほうが精度は高くなる)。
    4.統合的であれ:あらゆるコミュニケーション手段と媒体をまたがる一貫性と手がかりによってメッセージを補強せよ。
    5.創造的であれ:ユニークなやり方でメッセージを述べよ。強く、好ましく、ユニークなブランド連想を形成するため、既存のものにかわる新しいプロモーションや媒体を使用せよ。
    6.良く観察すべし:モニタリングや追跡調査によって、競合、顧客、チャネル・メンバー、従業員を把握せよ。
    7.忍耐強くあれ:ブランドエクイティを構築し管理するため、コミュニケーションの効力について長期的な見方をせよ。
    8.現実的になれ:マーケティング・コミュニケーションには複雑な様相があることを理解せよ。


     基本的に、ブランドビジョンはブランドの「高次の目的」に結びついており、消費者の願望とブランドの真の姿に関する十分な理解に基づいている。ブランドビジョンはブランドの物理的な製品カテゴリーや境界を越えたものである。P&Gの有名な元CMOのジム・ステンゲルは、成功しているブランドは明確な「理想」(たとえば「喜びを生むつながりを創る、探求を動機づける、誇りを呼び覚ます、社会に影響を与えるなど」)を掲げており、顧客ロイヤルティを築いて収益拡大を牽引するという強い目的意識がある、と述べている。


    ■コーズ・マーケティング
     1980年代にコーズ・マーケティングが出現した。コーズリレーテッドマーケティング(あるいはコーズ・マーケティング)とは、「組織あるいは個人の目的を満足させるとともに、収益が発生する交換に顧客が関わるとき、企業が特定の社会活動(コーズ)に対して一定額を提供するというマーケティング活動を企画し実施するプロセス」であると定義されている。パラダラジャンとメノンが述べているように、コーズ・マーケティングの大きな特徴は、特定の社会活動に対する企業の貢献と、収益をもたらす取引への顧客の参加が結びついているという点である。

    コーズ・マーケティングの利点
     コーズ・マーケティングが盛んになっている理由の1つは、消費者からポジティブな反応が引き出せることである。企業に対してコーズ・マーケティングに関するアドバイスを行っているトップ企業の1社であるコーン・コミュニケーションズ社が発表した2011年コーン/エコー・グローバルCRオポチュニティ調査によると、次のような結果が出ている。

    ●消費者の81%が、企業には自社の周囲の地域にとどまらない、主要な社会問題や環境問題に対応する責任があると答えている
    ●消費者の93%が、企業は法令順守にとどまらず、責任ある事業活動を行うべきだと答えている。
    ●消費者の94%が、企業は自社のビジネス手法を分析し、できるだけ社会に良い影響を与えるように進化させるべきだと答えている。
    ●消費者の94%が、環境に良い製品を購入する意思があり、76%が過去12ヵ月間に環境に優しい製品を購入している。
    ●消費者の93%が、コーズ(訳注:社会活動)に関連した製品を買う意思があり、65%が過去12ヶ月間にコーズ関連製品を購入している。


    ■ブランド拡張の利点
    新製品の受容を容易にする
     ブランドイメージの向上
     顧客の知覚リスクの低減
     流通経路の獲得とトライアルの獲得可能性の増大
     プロモーション費用効率の向上
     導入やフォローアップにおけるマーケティング・プログラムのコスト削減
     新ブランド開発コストの回避
     パッケージング効率とラベリング効率の向上
     消費者へのバラエティシーキング機会の提供
    親ブランドへベネフィットをもたらす
     ブランド・ミーニングの明確化
     親ブランドのイメージ強化
     ブランド愛顧者の新たな獲得と市場カバレッジの拡大
     ブランドの再活性化
     さらなる拡張の可能性


    ■ブランド拡張の欠点
    消費者の混乱や不満を招くことがある
    小売業者の反発を受けることがある
    失敗すると親ブランドのイメージを損なうことがある
    成功しても親ブランドとカニバリゼーションを起こすことがある
    成功しても特定カテゴリーとの一体感を弱めることがある
    成功しても親ブランドのイメージを損なうことがある
    ブランドの意味を希釈化することがある
    会社が新ブランドの開発機会を逸することがある

  • 企業が長年の活動や製品体験で顧客に植え付けてきたブランドの印象は、他社は簡単に真似できない。                              ブランドは消費者行動に影響を与え、将来の持続的な収益も確保する、企業にとって貴重な法的財産だ。                                       ブランドは、消費者の脳内に存在する。ブランディングの鍵は、同じカテゴリーの中で、消費者が他ブランドとの違いが分かるようにすることが大事。

    強いブランドをつくる道筋を教えてくれるのが、ブランド・レゾナンス・モデルだ。                                                   ポイントは、理性と感情の両面を考え、ブランドと消費者の共感の絆をつくること。ロレックスは、高級時計=ロレックスというイメージを浸透させ、精巧な技術でつくられ、最高の品質とデザインで「世界最高の時計」を思われている。その後、ジェームス・キャメロンやタイガーウッズをアンバサダーに向かえ、「一流の人たちが使う時計」という印象を与え、顧客は「ロレックスをつける人は一流だ」という感情を植えつけられる。最終的に、顧客はブランドに対して共鳴と共感の絆(レゾナンス)が出来ている状態になる。 

    マクドナルドも、ディズニーも、メルセデスベンツも、同じようにブランド・レゾナンスが生まれ、一貫した戦略にて進んでいる。顧客との強い共鳴と共感の絆は、ブランドエクイティを高めている。

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