昭和のヒット歌謡物語: 時代を彩った作詞家・作曲家たち

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  • 展望社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885462757

作品紹介・あらすじ

この歌が巷に聞こえていた頃、あなたは何処で、何をしていましたか?あの名曲はこうして生まれた。

感想・レビュー・書評

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  • 最近阿久悠、都倉俊一、筒美京平、萩田光男、松本隆、ディレクター、プロデューサーetcと、黄金期をリアルタイムで楽しんだ人達について書かれた本や彼ら自身が執筆した本が想像以上に楽しかったので「もうちょっと前の世代のも読みたいなぁ」と借りてきた本。

    目次には歌謡曲の大御所、9人の大作詞家と大作曲家の名前がある。

    服部良一
    昭和最終期のアンケートで一位だった「青い山脈」映画主題歌として西条八十の作詞が先。ヤミ屋などですし詰めの梅田から京都への列車の中メロディが浮かんだ服部は五線紙を広げるわけにもいかずハーモニカの略譜として数字でメモ書き。出来上がった曲はオシャレな感じを好む東大出の監督がNG。おりからの東宝デモもあって映画は封切られずコロムビアは曲だけ先にリリース。NHKのど自慢にバイトを雇って歌わせ認知をはかり大ヒットと。
    これが最初の16ページ。
    もー絶対おもろいやんこの本もー。
    チャブ屋と淡谷のり子と低すぎる出だしタバコと酒と大連。(別れのブルース)
    高峰三枝子と発禁曲と東條英樹。(湖畔の宿)
    李香蘭と蘇州夜曲のジョーク。
    第一章に相応しい内容。

    吉田正
    戦時下幾度も死線を超え「軍隊は運隊」と。
    シベリア抑留から帰国、作曲家不明だった人気曲「異国の丘」に米山正夫の後押しで名乗り出る。
    フランク永井、松尾和子、鶴田浩二、橋幸夫、吉永小百合でヒットを飛ばす。
    昭和32年「有会い」ヒットでようやく「作曲」から「作曲家」と宿帳に書けたとするエピソードがかわいらしい。

    菊田一夫と古関裕而
    「君の名は」エピ。にしても古関さんの「露営の歌」「六甲おろし」「モスラの歌」て。ウィキ曰く「気品ある格調高いメロディ」その通り。
    菊田一夫の「無二の親友だけどお互い酒が飲めないから刎頚の友となれなかったのが残念」
    ちょっと涙ぐんでしまった。おっさん同士愛おしいと思っていないと出てこない言葉。
    にしても菊田から古関への「天国の雲の中を走る天国タクシーの音楽」というリクエストは草。

    遠藤実
    片手で弾ける歌。音色。
    大手コロムビアから本名としてのデビュー「からたち日記」
    特攻隊からのイメージ、赤提灯からブランデー、女性ファン取り込み、作曲家による歌詞2番差し替え、裕次郎銀座逆立ちの「くちなしの花」
    遠藤実工房による「北国の春」
    学歴コンプの「高校三年生」はちとこじつけな気がする(作詞家作曲家のコメントもなく全て推定なので)でも学ランを着せたのは大成功。

    なかにし礼
    出たよ。作詞家作曲家小説家演出家。
    キング岸洋子、東芝越路吹雪との競作「恋心」のB面、菅原洋一とのレコーディング喧嘩、江利チエミの愚痴、指定作詞ありの印税ゼロ、全て「あ」から始まる「知りたくないの」
    一気にスター作詞家となり昭和43年はレコード大賞、歌唱賞、最優秀新人賞トリプル。1年でのべ1300万枚(のべって何。てか印税いくらですのん) で、その後「結局歌手と曲とレコード会社じゃん」と自らの仕事を無意味と切り捨てるのはテレビ台本屋から作詞家に転身した時と重なる。結果「時娼」でカムバック。
    平成元年「風盆」で作詞完了。以降小説と演出に。
    かっこよすぎなんよね。
    六本木の寿司屋で見かけた際、うちの母親があまりのダンディさに「ひゃあああ、なかにし礼だ」と舞い上がってたのを思い出す。

    阿久悠
    既出エピが多いもののいくつかのインタビューは初見。阿久悠ではなく著者の意見だが「当時のテレビは1人2.5分。するとカットされてもいいように元々マシュマロみたいな歌を作ってくるのが悪賢い歌謡界」とはまさに。
    「大御所と言われれば終わり。ポスト古賀政男は要らない。作詞家作曲家は個人。」

    船村徹
    歳上の星野哲郎の扱いが見た目通りでウケる。
    サブちゃんがコロムビアからクラウンに移籍した際の「目の上のたんこぶがなくなって」というのは村田英雄ですかねぇ。
    ひばり「みだれ髪」 残念ながら一般には秋元康の「川流」の方が有名な気がするが(勿論こちらもいい曲だけど)どちらが往年のひばりを踏襲しながらのひばりならではかといえばそりゃみだれ髪。でも中年女性は川流だろうなぁ。(亜紀の花束とか美幸の二輪とかはるみの千年とか)
    これ高いんですよ。半音上げてたんだ。百恵の秋桜的な。

    古賀政男 市川昭介
    まぁ大川栄策に関してはその。。。顔がね。ちょっと似過ぎてて。政男に。内弟子になるまでのエピソードもうーんって感じ。(いくらなんでも全然売れないのに40曲はねぇ)
    古賀政男の「声を殺して情をとれ」は100納得。
    市川昭介って歌手志望だったんだ。星野哲郎が船村徹とクラウンに移った後、都はるみを会わせるエピは素晴らしい。

    山口洋子
    五木ひろし「よこたそ」「夜空」「千曲川」エピ。
    五木の出世魚のような改名歴、ここでは「いち、さん、と来たから五で」(松山まさる、一条英一、三谷謙)となっているが「イイツキを拾おう」説は?
    また他の方と違って山口洋子の生い立ちはばっさりカット(ウィキにあるからまぁいいけど)
    盗作騒動(っていうか盗作)については「麦と兵隊」作詞家のお言葉がかっこいい。(女性差別の部分は別として

    さてここまで読んで。
    全て楽しかったがなかにし礼が1番かな。
    彼のような才能と成功をもってしても「所詮こんなもんか」「どうせ他人の力のおかげ」なんてかんがえられるのは素敵な事。私を含め一般人は人生に悩む必要なんてない(というか悩む資格がない)ことを教えてくれる。
    あと彼の兄のエピも含めて。
    水原一平は勿論、なかにし礼の兄や新庄の叔父、みんな本当にこれ。私もとてもよく分かる。
    金があろうと美しかろうと賢かろうと書こうと歌おうと踊ろうと飛んで跳ねて投げて走って泳いでも、どうせ皆んな数十年で全てパーだしね。

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著者プロフィール

塩澤実信(しおざわ・みのぶ)1930(昭和5)年、長野県生まれ。双葉社取締役編集局長をへて、東京大学新聞研究所講師等を歴任。日本ペンクラブ名誉会員。元日本レコード大賞審査員。主な著書に『雑誌記者池島信平』(文藝春秋)、『ベストセラーの光と闇』(グリーンアロー出版社)、『動物と話せる男』(理論社)、『出版社大全』(論創社)、『ベストセラー作家 その運命を決めた一冊』『出版界おもしろ豆事典』『昭和歌謡100 名曲part.1〜5』『昭和の歌手100 列伝part1〜3』『昭和平成大相撲名力士100 列伝』『不滅の昭和歌謡』(以上北辰堂出版)、『昭和の流行歌物語』『昭和の戦時歌謡物語』『昭和のヒット歌謡物語』『この一曲に賭けた100人の歌手』『出版街放浪記』『我が人生の交遊録』(以上展望社)ほか多数。

「2020年 『歌謡曲が輝いていた時 昭和の作曲家20人100曲』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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