昔話と子どもの空想 (TCLブックレット 「こどもとしょかん」評論シリーズ)

制作 : 東京子ども図書館  松岡享子 
  • 東京子ども図書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885692284

作品紹介・あらすじ

東京子ども図書館では、おはなし ― 肉声で子どもたちに物語を語って聞かせること―が、読書へのいちばんたしかな、いちばんたのしい道であるという信念のもとに、さまざまな活動を行ってきました。機関誌「こどもとしょかん」に、おはなしに関する評論や記事を数多く掲載してきたのも、その一つです。ここに、これまでに掲載された評論のうち、バックナンバーの要求がもっとも多かった三篇を収録して一冊にまとめました。
・人格形成における空想の意味 小川捷之 
・昔話と子どもの空想  シャルロッテ・ビューラー/森本真実訳・松岡享子編  
・昔話における“先取り”の様式――子どもの文学としての昔話 松岡享子
語り手たちは、物語そのもののおもしろさとふしぎさ、それを聞く子どもたちの目のかがやきや笑顔に助けられて、活動をつづけています。が、さらに自分たちの語る物語や、語りという営みについて学ぶことは、活動の意義をより深く理解し、活動への意欲を一層高める助けになります。この冊子がそのお役に立つことを願っています。松岡享子

感想・レビュー・書評

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  • 松岡享子さん死去 児童文学者、東京子ども図書館名誉理事長:時事ドットコム
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2022012801171&g=soc

    名誉理事長・理事長からのメッセージ | 当館を知る | 東京子ども図書館
    https://bit.ly/3IVQNm2

    昔話と子どもの空想 | 東京子ども図書館
    https://bit.ly/3IUlBni

  • 昔話と子どもとの関わりが知りたくて読んだ本。ビューラーの説が読める

  • 2021 機関誌「こどもとしょかん」の中の3つをまとめたもの

    ①人格形成における空想の意味 小川 捷之かつゆき 7号1980秋

    現代の心理学は、外側からの心理学であり、行動科学になっている
    心の中のブラックボックスのようなわからないものではなく、外側に出てきた行動や態度、実際につかめるもの、はかれるものだけを相手にしている

    自然科学の発達してきて、科学的なめのの見方が発展して、すべてをものとして見るようになった
    外側からつかめるもの(見えるもの、さわれるもの、はかれるもの)しな信用できないようになった

    外へ外へと向かっている=外向化
    目に見える世界、さわれる世界だけ信用してる

    身体のことを気にする現代人は、心が外側へ向きすぎるのを身体が反逆している
    「身体は油断のならない友だちである」
    自分の心の内側はおろか、自分の体に対する感覚すら失ってしまっている

    日本人は本来内向的な民族

    内面の弱さ強さ
    貧しさ豊かさ

    内的に弱いとは?
    自己疎外が起きている
    内的な衝動に対して弱い
    =怒りの衝動が生じるとすぐ外へ出してしまう
    心の中に歯止めがない
    歯止めの精神機能を「自我」という
    それが未発達 だと我慢できない、待てない
    本当の意味の落ち着いた感性がない
    物を素朴に感じとる内的な静けさがない

    内的な静けさがないと、欲求不満に耐える力がなくなる
    欲求不満を別の面で充足するようなことができない
    例)スケートが欲しい
    それはスケートそのものではなく、それに象徴される、託される「何か」である
    その「何か」をさぐるうちに、心の中のら「何か」が動き、活発に作動するとスケートそのものが買ってもらえなくても、どこかで満たされる

    欲求と充足の間に介在する心の動きがある
    それが心の豊かさ
    それがないと、ものがないと満たされない
    欲求=充足というパターンしかないと欲求不満に耐える力がない

    今の子どもは内面の豊かさを育てる教育をされていない。
    内面でものが動くための時間(ボーッとしている時間)がない
    感動しても、そのことについて、自分の個人的空間の中で、その体験について思いを巡らす、内的なものに定着させる余裕が与えられてない
    貯えることができない

    親も子も内面に注意向けない
    どんな思いで暮らしているのか、どんな気持ちでいるのか

    深い喜びを味わうというのであれば、ものと一緒でもよい

    内面の強さにもレベルがある、段階がある

    母親に愛されたという体験、安心感が安定感となる
    生きていくことに対する基本的な信頼は、危機的な状況にあっても強くなれる

    安定感は、身体感覚を通して得られる
    身体感覚=スキンシップ、マザリング、声を聞く(鼓動を動かす身体感覚の一種 視覚的よりも直接的)

    お話を語る声はある種の身体的満足感を与える、感じる

    人格の統合と空想
    まず、母との身体的な接触を通しておいしいもの、快いもの、よいものを、自分の中に取り込む。
    悪いものは外へ出す。外在。
    口唇二分法
    その二分されている世界が人格的に発達するにつれ統合される
    外在化されたおそろしいものを自分の中に取り入れていく。
    それは恐ろしいものに耐える力を自分の中につくりあげていく。
    昔話のような物語をくりかえし聞き、空想の中でおそろしいものに何回も直面し、克服することができるようになる
    聞いたことを自分でイメージして、その怖さに耐えられる力を作っていく

    怖い話が絶えられるのは、親しい人の声で身体感覚を通して聞くから。基本的な安定感を感じるから

    ユングいわく
    同じ空想といっても、ファンタジーとイマジネーションは違う
    ファンタジーはただ浮かんで消え、次から次へと流れていくだけ
    イマジネーションは、自分でそのモチーフを肉付けして自分にとって意味のあるものに仕立てる

    ファンタジーは散発的、分散、拡散
    イメージが浮かんでもそれを自分でまとめていない=自我に統合してない

    心の内面と深くかかわらせつつ、
    あるイメージを描く
    想像することは、心の強さ、豊かさを育てる上で重要


    心理学的には、
    昔話はわれわれの心の内面を描いている
    われわれが成長過程の中でどうしても直面しなければならない課題を、表現している

    ②昔話と子どもの空想 シャルロッテ・ビューラー 森本真実訳 82号1999夏

    ③昔話における「先取り」の様式ー子どもの文学としての昔話 松岡享子 111号2006秋

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著者プロフィール

1938年、北海道生まれ。東京教育大学教育学部心理学科卒業後、同大学院修士課程修了。教育学博士。横浜国立大学、上智大学で教鞭をとるかたわら、ユング派分析心理学の臨床・研修の拠点として山王教育研究所を主宰。カウンセラーとして多くの症例を扱った。著書に『夢分析 深層の読みかた』、編著に『児童臨床心理学事典』、共訳書に『分析心理学』(ユング著)他。1996年逝去。

「2021年 『昔話と子どもの空想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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