怪物 (ブッツァーティ短篇集 3)

  • 東宣出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784885881008

作品紹介・あらすじ

知られざるエッフェル塔建設秘話、流行り病に隠された恐るべき真実、砂漠での謎の任務に出立する若い医師……幻想と寓意とアイロニーが織り成す未邦訳短篇集第三弾


〈なんてこった! おれたちは入っちまった!……〉謎のメッセージを残し、地球の周りを回りつづける人工衛星の乗組員が見たものとは?……人類に癒しがたい懊悩をもたらした驚愕の発見を語る「一九五八年三月二十四日」、古代エジプト遺跡の発掘現場で起きた奇跡と災厄を描く「ホルム・エル=ハガルを訪れた王」、屋根裏部屋でこの世のものとは思われない、見るもおぞましい生き物に遭遇した家政婦兼家庭教師の娘が底知れぬ不安と疑念にからめとられてゆく「怪物」など、全18篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 「まだ午後だった。陽射しは十分に美しかった。私は道で人と出会った。「こんにちは」私は言った。相手は私を見て、答えた。「こんばんは」」

    この巻は、初期も後期もぜんぶまぜこぜの短篇集。B面のベストアルバムみたい。
    当時、ちょうど最中であったのだろう戦争にまつわる話も多かった。彼はその晩年において、やわらかな慈愛に満ちていっていたように想えた。哀れで身勝手なにんげんへ、そしてなにより、じぶんじしんへの。そうして、俯瞰して世界の不可思議を眺めていた。

    表題作「怪物」が圧倒的に好み。いつだって慰めになるあわい月灯り。心の深奥に在る、グロテスクな秘密と世才、そして護るべき(取り繕う)親密さ。

  • 短編集三冊目。
    なんとなく後味悪かったりするけど、やめられない。

  • ブッツァーティの幻想世界を存分に楽しめる短編集です。全3巻ですがこちらの短編集が1番面白く感じました。

  • どういう訳だか、見掛けると手にしてきたこのシリーズ。そもそもこの人誰だっけ?「タタール人の砂漠」の人か。そうかイタリアなのね。勝手にヨーロッパで人種的に迫害されて、とかそういうイメージ持ってた。本編。現代のもあるが、昔の設定もあり、この辺りがさすが知識人という感じ。理解できてない篇もあるが、わかるやつは面白い。人嫌い、の印象。人の揚げ足取るのが生き甲斐、新人捕まえては自分の嫌いな人物を一方的に悪く言う、そういう悪意に苛まれた人間の、さが、というか、愚かさが表現されてるかな。川に浮かんだゴミみたいなさ。。。

  • 無彩色寄りだった前2作と比べて、禍々しい赤と黒の表紙が印象的。ブッツァーティが作家として活動した期間全体から選ばれた18作品が収録された短編集。

    衰弱から起こる変身や、避けようのない破滅などブッツァーティがよく用いた要素はありつつ、よりじわじわ追い詰められるような雰囲気の作品が多かったように思う。気付かないうちに今までの日常から逸れていってしまっている、とか、奇妙なものを奇妙なまま置いて生きていくしかない違和感、みたいなものを感じた。

    好きだなと思った話は、エッフェル塔建設を舞台に起こる、バベルの塔物語「エッフェル塔」。人間の猜疑心と時間の残酷さを描いた「五人の兄弟」。ほんのりミステリー風味も感じる「密告者」あたり。

  • ブッツァーティの未邦訳短編集第3弾。「流行り病」が好きだった。

  • 今回も面白かったけど今まで読んできたブッツァーティの中では一番ささってこなかったかもしれない、個人的には。

    一番好きだったのは『可哀そうな子!』。
    この手法のものは他にもそこそこ読んだことあるけどやっぱり好きだな。
    たった一言のインパクトのでかさ。

    あとは『ラブレター』、『五人の兄弟』、『密告者』が好きかな。
    ブッツァーティお得意の、無駄に時間を浪費してしまうことや取り返しがつかないことへの恐怖と後悔があらわれてる話がやはり多かった印象。

  • 短篇集。1、2巻と同じく、3巻もよかった。時間とか人生の残酷さも感じてしまうことになるけど…
    「可哀そうな子!」は個人的にこういうオチに弱い。誰かが愛せばよかったのに…そうはならなかったのがつらい…。

  • 973||B||B10049187

  • 短篇集の第3巻。
    読み始めると面白いのでなかなか止まらないのが困る。これ、続刊あるのかなぁ……確か全3巻だったような気がするんだが。

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著者プロフィール

1906年、北イタリアの小都市ベッルーノに生まれる。ミラノ大学卒業後、大手新聞社「コッリエーレ・デッラ・セーラ」に勤め、記者・編集者として活躍するかたわら小説や戯曲を書き、生の不条理な状況や現実世界の背後に潜む神秘や謎を幻想的・寓意的な手法で表現した。現代イタリア文学を代表する作家の一人であると同時に、画才にも恵まれ、絵画作品も数多く残している。長篇『タタール人の砂漠』、『ある愛』、短篇集『七人の使者』、『六十物語』などの小説作品のほか、絵とテクストから成る作品として、『シチリアを征服したクマ王国の物語』、『絵物語』、『劇画詩』、『モレル谷の奇蹟』がある。1972年、ミラノで亡くなる。

「2022年 『ババウ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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