ココ、お話しよう 新装版 (自然誌選書)

  • どうぶつ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784886222817

作品紹介・あらすじ

アメリカに、人間のことばを覚えたゴリラがいる。名前はココ。ココは人間の手で育てられ、人間のことばを教えられ、人間とともに暮らしている。ココはどのようにことばを覚え、どのようにことばを用いることができるようになったのか。これは、ココの母親として、また教師として、九年間をともに生活してきた若きアメリカ人女性の記録である。

感想・レビュー・書評

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  • 手話を覚えたゴリラと付き合うことから
    人間が遊離してしまった自然界をあらためて
    理解しようという愉しいお話であるが

    どうも西洋学問というものは面倒なものである
    証明だとか証拠だとか全体観の乏しい競争原理が
    必要以上に働いた縄張りによってお互いを潰し合い
    自滅していくように思えてならない

    西洋的学問の限界かお互いの足をピッパリ合う愚かさに
    立ち向かわらざを得ないという環境で生き抜く以上
    視野の狭い無意味な批判に対して時間と心を割いて
    証明するという形で応えていかなければならない
    学者という職業の悲しい性を感じてしまう
    本質からそれているナンセンスな行為だということに本人は
    気付きながらもその心には損得感が付きまとっているようだ

    成長の度合いを云々するには細かい事例の比較分析という
    権利に関わることだけでなく
    その選択の判断を支配している意識の奥行きと
    それを支える視野の広さを見るべきなのだろう

    それには見る側の意識と視野が
    見られる側のモノよりはるかに大きな開きがなかれば
    見極められないという条件を
    満たしていなければならないのである

    関係性をたのしんだりムキになったりと感情豊かなつながりの中で
    お互いに確認し合える会話ができるにも関わらず
    証拠のデーターが欲しさに気が散ったり
    餌で釣る駆け引きを持ち込んで対等な関係を壊してしまう
    愚かさが残念だ

    「ココは可愛い」に対して「うそつき」という返事は
    相手の心をテレパシーで読んでのもので
    自分を可愛く無いと思っているからとかでも
    卑下しているわけでもないだろう

    人間がテレパシーと引き換えに作り出した言語は不完全で
    それ故に可能となった嘘と秘密を駆使する偽善的依存社会を
    経験するための道具になり得たのではないだろうか
    つまり信頼の上に成り立つテレパシーと
    信頼を捨てた知識と約束の上でのみ成り立つ言語環境の違いを
    理解する必要があるだろう

  • 苦労のない、穴に、さようなら

    数千の単語を覚え、人間と手話で会話するゴリラ「ココ」の研究記録。

    人間特有と思われているものが、どれだけ動物が本来持っている感情や行動なのかその境界を揺らがせる本だった。意固地になって要求されたことと逆のことをする、理解しているのに分からない振りをする、自分より小さい生き物を繊細に扱う、自分の失敗を誰かのせいだと言い張る。出来ることも、やることも、人間の幼児とほぼ変わらない。

    狩りをする猫を見て「鳥がかわいそう、悪い猫」と、手話で人間に伝えるくだりを読んで自分の中の一般的なゴリライメージが崩壊した。違うだろお前、もっと大雑把な生き物じゃないのかよ。

    ココが語るゴリラの死に対するイメージが非常に面白い。
    人類含む霊長類に共通する何かがあるとしか思えない。

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