武器輸出だけでは防衛産業は守れない

著者 :
  • 並木書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784890633074

作品紹介・あらすじ

コスト削減を目標に導入された「競争入札制度」が日本の国防力を弱めている-防衛装備品はコスト以上に、要求性能を満たすことが重要だが、現行の調達制度では研究開発に熱心な企業が価格競争で敗れてしまう。このままでは十年を経ずに日本の防衛技術力は取り返しのつかないほど弱体化するだろう。大手企業から町工場まで、生産現場の声を聞きながら、これからの防衛産業のあり方を提言する!

感想・レビュー・書評

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  • 国を守るのは自衛隊と思っていたが、自衛隊以外にも国を思い、それを誇りに仕事をしている人たちがこんなにもいるなんて知らなかった。

  • 被服・弾薬・装備品などの各種防衛産業の実態と、装備品の移転、調達に関わる問題点について。

    被服の糸一本も防衛機密。被服は、自衛官の活動のしやすさなども重要だが、自衛官としての誇りでもある。

    例えば、護衛艦の価格の高さと、中国と対峙する東南アジア諸国からの需要から、護衛艦を国が一度買い取り、他国に供与するという平和目的での軍事についてのODA支援を議論すべきとの指摘があったが、実際にODA大綱の改訂が進んでいるのをみると、本書はかなり時流を読んでいる面はあるのかな、と思った。

    次期多用途ヘリUHXの調達に関する談合事件に関して、官製談合防止法違反の行為に及んだ自衛官を擁護するような記述は気になるが、問題意識はなるほどと思う。競争入札は熾烈な価格競争がスペックダウンにつながる危険があること、純国産装備は、それを使う自衛隊員の誇りであると同時に、外国からの輸入にさいして伴う、供給面での外国からのコントロールの排除という意義があることなど、装備の調達方法に関しては課題がある。

    米国が推し進める、各国装備品をナショナル・ストック・ナンバー(NSN)という単位で登録し、売買できる仕組みをつくる、グローバル・ロジスティクス戦略のなかで、部品情報の共有・取得が可能で整備事業にも参入しやすいティア2国と、装備品購入しかできないティア1国の、後者に日本は位置付けられている。防衛装備移転三原則の決定や集団的自衛権行使容認などが進められたが現状はどうなのだろうか?
    同時に、米国で潮流になりつつある、パフォーマンス・ベースト・ロジスティクス(PBL)契約という、従来のようなメンテナンス作業量ではなく、稼働率や安全性といったパフォーマンスの達成に対価を支払うことで、修理が増えた方が儲かるというコスト抑制インセンティブの阻害を取り除く方式を採用するかという問題も、装備品調達に関して問題となる。NSN・PBLは米国主導の装備品移転の枠組みにどの程度参入するかという問題でもあるが、F35導入は、装備品に関して独立を貫くのではなく、米国主導の枠組みに参入する意思表示とみることもできる。

    「兵器の独立なくして、国家の独立なし」という大山巌の言葉は、国防の任に就く自衛隊員たちのなかでさえ、忘れ去られようとしている。とはいえ、コストや求められる能力等の観点から全装備の国産化がベストでもない。いかにバランスをとっていくか考えて行かなければならないと思った。

  • 防衛省における装備品取得の外観を掴むことができる書籍。航空機、戦車から人が身につけるものまで様々な装備品が紹介される。全体を通じて、関連企業における人の成長やレベルの維持の重要性を感じる内容であった。

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著者プロフィール

桜林美佐(さくらばやし みさ)防衛問題研究科
昭和45年生まれ。東京都出身、日本大学芸術学部卒。防衛・安全保障問題を研究・執筆。2013年防衛研究所特別課程修了。防衛省「防衛生産・技術基盤研究会」、内閣府「災害時多目的船に関する検討会」委員、防衛省「防衛問題を語る懇談会」メンバー等歴任。安全保障懇話会理事。国家基本問題研究所客員研究員。防衛整備基盤協会評議員。著書に『日本に自衛隊にいてよかった ─自衛隊の東日本大震災』(産経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸~星になった小さな自衛隊員~』(小社刊)、『自衛隊と防衛産業』(並木書房)、『危機迫る日本の防衛産業』(産経NF文庫)など多数。趣味は朗読、歌。

「2022年 『陸・海・空 究極のブリーフィング - 宇露戦争、台湾、ウサデン、防衛費、安全保障の行方 -』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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