すばらしい失敗 「数独の父」鍜治真起の仕事と遊び

著者 :
  • ニコリ
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784890723799

感想・レビュー・書評

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  • 写真を見れば なんとなく
    つかめてくるお人柄通り
    趣味の延長に近いような
    会社を立ち上げ それを軌道に乗せる力というのは
    やはり 独特の魅力をもった方ですね

    沢山の人に愛されたからこそ
    作った雑誌も愛され
    読者が雑誌を育てるという
    なかなか 稀有なものを生み出すまで

    魅力ある人の 光と影の部分を
    余すことなく書かれていると思います

  •  株式会社ニコリの創業者、そして数独の父(厳密には名付け親)である鍜治真起さんの評伝。鍜治さんは二〇二一年八月に六十九才で亡くなられた。本書は、関係者へのインタビューをもとに「ニコリ編」として書かれている。
     故社長の評伝を会社名義で出すとは、なかなかセンスが問われる行為だ。褒めすぎても、逆に暴露本みたいになっても、なんらかの政治的/経営的戦略があまりに見え見えになってしまっても、いずれにしても品のないものになってしまいそうで。だが、さすがセンスの塊のニコリだけあって、距離感はうまい具合だと感じた。妙なところでニコリへの信頼が強まった。
     鍜治さんの功績としてはなんといっても日本におけるパズル市場・パズルビジネスというものを開拓したことが一番で、世界的ブームとなった数独のゴッドファーザーという肩書きは、ある意味おまけのようなものかもしれない。でも数独ブームにより彼自身が世界の人気者となったのはそのお人柄によるところも大きく、かなり破天荒でいい加減でありながらも憎めない、なぜか人を惹きつける魅力のある、愛されキャラな人物だったようだ。多分、私もお会いしたら絆されてしまうクチだと思うが、意外と敵も少なくなかったのではないかという感想も抱いた(そう思わせるところがこの本の良いところ)。
     いずれにしても、まだ亡くなって間もない鍜治さんについて、みんなでああだこうだ語ってこういった本を出すという営みが、作り手にとっても、読み手にとっても、生前鍜治さんと関わった人々にとってのかけがえのない「喪の時間」となったのではないだろうか。そんな本だった。
     もちろん、日本初のパズル専門雑誌ニコリ(一九八〇年創刊)の歴史本としてもとても面白かった。また自分とは世代も業界も立場も個性も違うが、ビジネスパーソン的な視点で参考にしたいところもあったので、ひとつメモとして書き留めておく(完全な抜粋ではありません)。ニコリ創業初期メンバーのひとり、樹村めい子さんの言。
    「彼のしたことは、
    ・キッカケになる発言をする
    ・実働部隊をその気にさせる
    ・キモになるアドバイスをする
    肝心なところはヒトに任すのでズルいと思うことも多々あったが、いつも彼がニコリの中心にいた。でもその円は真円ではなく楕円。一つの中心ではあるけれど、いつも誰かをもう一つの中心に置いていた。」

     ここからは本ではなく自分の話。
     私自身は、母が雑誌『パズル通信ニコリ』のファンで物心ついたころからニコリが家にあり、娯楽として母がパズルをする姿を当たり前に見ていた。私も幼い頃から間違い探しや点繋ぎや絵ヒントクロスなど一緒に解いたり、十代くらいになると、それこそ数独のようなもう少し難しめのものを母とパイを奪い合いながら解いたりしていた。実は数独はそれほどお気に入りではなかったので(スリザーリンクが好き)、二〇〇五年の数独ブームは「ああそう、みんな好きなの、今頃知ったの」みたいな感じで興味がなく、その頃たくさんメディア露出していたであろう鍜治さんのことも全く知らなかった。ニコリの特徴である独特のコピーや「編集後記」には触れていたが、社長とか編集長が誰かということまで気が回らず、そちらからも鍜治さんを知ることはなかった(子どもだっただけに、メタな視点を持たずコンテンツだけを摂取していた超純粋な読者だったのだ!)。
     この本を読んだきっかけも、
    ①最近購読し始めた朝日小学生新聞に毎週ニコリのパズルが載っていることに気づく
    ②子どもが興味を持ち、一緒に解く
    ③意外と我が子も楽しんでいるので、久々にニコリの最新刊を買った
    ④母にそれを見せたら、母が裏表紙に載っていたこの本の宣伝に気づく
    ⑤そのときの会話「あら!鍜治真起さん、死んじゃったの…」「だれ?」「ニコリ作った人よ」(母は多趣味なので最近は別のことに忙しくニコリ離れしていた)
    というもので、私にとっては鍜治さんは名前こそ先週知ったばかりだけれど、「あの数独の」なんてものではなく、母私子三代の物語におけるキーパーソンのひとりと言っても過言ではない。ご冥福をお祈りいたします&ありがとう。

    • なおなおさん
      akikobbさん、おはようございます。お久しぶりです。

      「ニコリ」好きでした〜。
      家族で楽しむって分かります。やはり私も家にあったので。...
      akikobbさん、おはようございます。お久しぶりです。

      「ニコリ」好きでした〜。
      家族で楽しむって分かります。やはり私も家にあったので。
      うちも実家の両親が数独にハマっております。
      父は新聞に載っている問題を切り取り持ち歩いたり、ノートに写したり…
      楽に写すために、枠や線を簡単に書ける定規を自作するくらいのハマりよう^^; そこまでするか!?(下敷きにカッターを入れたものですが)
      あと答え合わせもしております。しませんよね!?埋まったら満足しませんか?

      母と私は足し算クロスが好きです。
      あと私もスリザーリンク好きですよ(^^)
      時間がかかりますが、根拠だてて線を確定していき、一本に繋がるのは嬉しいですよね。
      いずれにしても、スマホにパズルアプリを入れるのは夢中になってしまって危険(××)
      何度入れては削除を繰り返しただろうか…^^;
      2022/12/23
    • akikobbさん
      なおなおさん、コメントありがとうございます。お久しぶりです♪

      ニコリ仲間見っけ!
      お父様、定規自作とはすごいですね。それから答え合わせ!ま...
      なおなおさん、コメントありがとうございます。お久しぶりです♪

      ニコリ仲間見っけ!
      お父様、定規自作とはすごいですね。それから答え合わせ!まじめ!はい、しませんね〜。私も埋まったら満足派です。
      子どもにつられて私も自分用にニコリ別冊『ザ・ペンシルパズル2023』というのを買ったのですが、昔はなかった新しい定番パズルも増えているみたいで、「美術館」とか「ヤジリン」なんてのが今楽しいです(足し算クロス「カックロ」も載ってました!)。
      解いていると時間が飛ぶように過ぎますね。アプリでなくても危険危険…。
      2022/12/23
  • 私がニコリに出会って30年あまり、ということは鍛治真起さんを知ってからも30年余りである。ここ最近は「数独の父」というのが鍛治さんのキャッチフレーズなんだろうけど、私の知っていた鍛治さんはニコリ誌上で管を巻いているよくわからないおじさんであり、でも単に管を巻いているだけでなくどうも会社の偉い人のようなので、ニコリがこんな変な雑誌なの(全力で褒めている)はこのおじさんのせいなんだろうなとなんとなく思っていた。
    今回、この本を読むことで、その漠然とした理解をまとめてクリアにできてたいへん満足した。鍛治さんの人生は破天荒すぎて、若人に参考にしてほしいとかはなかなか思えないレベルである。それに実際こんな人がそばにいたり上司だったり夫だったりすると本当に大変そうでもある。しかしそれをも上回る人間力とか実行力とかがすごすぎて、もし近くにいて巻き込まれたらそれはきっと大変だけど楽しいものだったのであろう。
    役に立つ立たないではなく、楽しいか楽しくないかでいうと間違いなく楽しい。ニコリも、鍛治さんも、この本も、そういうものであった。

  • 今年の1月4日に購読新聞に載っていた数独にチャレンジして、その面白さにはまってしまった。
    数独に関する何か情報がないかと図書館の蔵書を探すと、この本がヒットした。
    過去に数独ブームがあったことさえ知らずに生きてきたが、この本は数独の歴史も含めて、数独やパズル雑誌の創始者でもある鍛冶真起氏の人間力を魅力的に表現してあり、興味深く読んだ。

    数独のレベルはやっと中級ぐらいになったが、先日話をした93歳の知人も数独をやっており、彼女も中級ぐらいと言っていた。いくつになっても遊べる数独はますます興味深い。

  •  一昨年亡くなったパズル通信ニコリの創始者のひとり鍜治真起さんの評伝。鍜治氏についてはいろいろ話には聞いていたが、まさに想像通りの奔放な自由人だったのだな。本人はともかく周りの人は振り回されていいことばかりではなかっただろうに、没後の思い出話なので好意的な評価ばかりが並ぶのは致し方ないところか。もちろん本人にだって表に出さない葛藤はあったのだろうが、自伝ではないのでそちらも葬られたままだ。ニコリについていえば、思いつきとしかいえない発端から、幾多の危機を乗り越えて知る人ぞ知るという唯一無二のパズル誌に育て上げた手腕はすごいものだとは思う。もちろん初期の仲間をはじめそのときそのときで支えてくれた多くの協力者の存在を抜きには語れないし、そういう人が集まってくるということこそが彼の人徳なのかも。

  • 数独の父・鍜治真起氏の評伝。
    飄々としたその生涯が、生前親しかった人たちの言葉から浮かび上がってくる。
    「日常と非日常の間を生きる」感覚、遊ぶように生きる哲学。
    「brilliant mistake=すばらしい失敗」が、実にすばらしい。
    カッコイイ生き様を体感できた。学ぶところ多々だ。

  • 私は数独のファンで、数独歴は15年程。鍛冶真起氏が「数独の父」と言われていることは知っていたが、同氏がどのような人であったのかはまったく知らなかったので本書を読んでたいへん驚いた。破天荒と言うか、ぶっ飛んでると言うか・・・

    ニコリはベンチャー企業であったと思う。鍛治氏の異才で日本におけるパズル需要を掘り起こし、熱狂的なファンを生んでいった。しかし、多くのベンチャー企業がそうであったように、天才社長にマネジメント能力があることは稀で、ニコリも同じであった。ぶっ飛びながらも愛されキャラの鍛冶氏は倒産の危機を乗り越えるが、家族を含め多くの人に支えられていたことを忘れてはいけない(どんなことがあってもサポートされるだけの魅力が鍛冶氏にはあった、と本書は述べているが)。

    私が鍛冶氏のセンスに感服したのは、
    「目にとまった日が発行日」というフレーズ。定期発行が難しいことをどう解決するか?見事な逆転の発想である。

    ニコリの数独がナンバープレイスに比べて解き味が勝っているのは何故か?等々、数独ファンが知りたい内容が満載。

  • ニコリ元社長、鍛治真起氏の生涯や人柄について、著書や周囲の人の話をもとにまとめた一冊。ニコリ社長として読者に接する顔しか知らなかったので、それ以外の面を見ることができて面白かった。まぁ、酒が入ってしまうと、相手によって変わることはなかったような気もするけど。

  • <目次>
    はじめに  鍜治真起と二コリのあらまし
    刊行に寄せて~おもしろい男だった(鍜治真起のこと)目黒考二
    第1章  世界を席巻した「SUDOKU」~2004-2006・2021
    第2章  『パズル通信ニコリ』の軌跡~1978-1992
    第3章  若かりし頃の鍜治真起さん~1951-1977
    第4章  遊びと苦悩のはざまで~1993-2003
    第5章  数独ブーム後の夢~2006-2021

    <内容>
    数独やカックロなどを載せる、ペンシルパズルの『ニコリ』。その創設者の鍜治真起さんの評伝。彼が起こしたニコリ社が書いているのがまずスゴイ。社史編集室があるような会社ではないし、社員たちがいかに彼を愛していたかの証だろう。そして魅力的な人物だったことが、次々と明かされるエピソードからわかる。一緒には仕事をしたくない感じだが…。でも、この社長はあまり出社しなかったようなので、そういう意味ではやりやすかったか…。これからの時代、日本にもこういう人が現れ、いろいろな地域を引っかきかわして、新しい日本を作ってくれたら、いいなと思う。

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著者プロフィール

パズル専門出版社。1980年創業。パズル関係の出版物やパズルの制作を手掛ける出版社。パズル本の出版のほか、新聞、雑誌、ゲームソフトなどにパズルを提供している。

「2021年 『別冊NHK俳句 脳活! まいにち俳句パズル 春夏編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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