- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784891981419
作品紹介・あらすじ
いまや実力ではトヨタを凌いでワールドNo.1の自動車メーカーといわれるフォルクスワーゲン。ブランドの源流となったのはかの有名なポルシェ博士のビートルで、その世紀のヒット作の後継ゴルフもやはり世界のトップセラーとなり、シリーズ誕生38年目に生まれた最新7thゴルフは驚愕の完成度を誇ってすでに2つのビッグタイトル(欧州&ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー)を獲得。しかも、過去20年間巨大グループを率いてVWを現在の隆盛に導いたのが、ポルシェ博士の実の孫で欧州ビジネス界最大のカリスマといわれるDr.ピエヒ。車業界に大旋風を巻き起こすVWとその新作7thゴルフに関する奇跡のような真実の物語。
感想・レビュー・書評
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岡崎宏司氏の久々の単行本。Dr.ピエヒのカーガイっぷりを中心としたVW論。乗用車が普及し尽くし白物化が加速する日本においてただのスペック論、デバイス論に留まらない、企業文化、経営者のキャラクター、商品に詰め込まれた思想をベースとした論を展開することの意義は大きいと思う。Golfというクルマを購入する人でここに書かれていることを知っている人は相当レアだろう。しかしこの手の情報は「よく知っている人がいる」事が大事でそれには大きく貢献していると思われる。世界の名車グラフィティの21世紀版を読みたいなぁ。
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最近ゴルフを買ったので興味が湧いた。やっぱり魅力的なものはカリスマがリーダーシップを取らないと出ないのかな。
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2013年5月初版
岡崎宏 著
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フォルクスワーゲンの歴史とモノづくりの神髄を、伝説の担い手であった開発者のエピソードを紹介しながら綴った一冊。
業界研究的な一冊として読みましたが、
思いのほか面白かった。
(途中、自動車用語のオンパレードで死にましたが)
こと広告業界とかにいると気を付けないと、
「今はモノの時代じゃなくてコトの時代」とか
表面的に企画書で使っちゃったりしがちですが、
モノづくりはモノづくりで、とてつもない
深淵たる世界があるということを
敬意をもって知るべしだという戒めになりました。
(もちろんそこからどんな体験価値を創らないといけないかまでを、価値の送り手がプランニングしないといけない時代というのも事実だと思ってます)
ドイツ行ってみたいなー笑 -
本書は、モータージャーナリストの岡崎宏司さんが仕事を通して、またはプライベートで取材してきたフォルクスワーゲンのニュースやストーリーをまとめたものです。
岡崎さんは、本書で、「いつかフォルクスワーゲンのことを本にしてみたいと思っていた。」と書いています。
その理由は、岡崎さん自身がフォルクスワーゲンとの様々な接触を通じて、多くの驚きや歓びを体験してきたからから。
確かに、近年のフォルクスワーゲンの業績の伸びは著しく、商品である車も素晴らしい仕上がりになっていると評判です。
特に、昨年10月に日本でも発売されたゴルフ7。
本書では、岡崎さんに、
「その実力のレベルは、量販モデルとして完全に未踏の領域に達しており、ここまでゴルフを進化させたVW開発陣の努力執念に、ただただ頭が下がるばかりである。」
とまで言わせています。
このゴルフ7のヒットもあり、今やフォルクスワーゲンの世界販売台数は900万台を超えます。
その裏には、中国をはじめとする「新興国シフト」、MQBと呼ばれる「モジュール化」の推進などがあることは、様々なメディアで語られていること。
私も、本書を読むまでは、とにかく効率良く、開発・生産し、効率良く新車を適切な市場に投入すること。
これがフォルクスワーゲン躍進の理由だと思っていました。
しかし、本書を読むと、フォルクスワーゲン躍進の裏には、元フォルクスワーゲン社長で、現会長のフェルナンド・ピエヒの車に対する熱い想いがあることがわかります。
そのピエヒの熱い想いが、良い製品を生み、フォルクスワーゲンというブランドを生み出しているのです。
ピエヒの熱い想いが形になった例としては、「アウトシュタット」と「ガラスの工場」があります。
アウトシュタットは、フォルクスワーゲンの本社工場に隣接した、ミュージアム、パビリオン、レストラン、ホテルなどを収めた世界最大の自動車のテーマパーク。
敷地の中には、超一流ホテルのリッツカールトン、ミシュラン3つ星レストランのアクアがあります。
これによって、以前はフォルクスワーゲン生産拠点という以外取り得のない街であったヴォルクスブルクがアウトシュタット開業以来、一躍観光地として栄え出したそうです。
当然これは、フェルナンド・ピエヒの強い想いによって実現したこと。
また、ドレスデンという街には、全面がガラスで作られたフォルクスワーゲンの工場があります。
当然ガラスですから、壁は全てスケルトン。
したがって壁には、鳥が衝突してしまうことを防ぐための、特殊なスピーカーを設置していると言います。
そこまでしてどうしてガラスの工場を建てたのか。
それは、ピエヒの「これまで3K的に見られていた自動車工場に対する人々のイメージを改めさせたい」という想いがあるそうです。
アウトシュタットにしてもガラスの工場にしても、会社の利益という観点で見ると、決して効率の良いものではないはず。
MQBなどの考え方とは相反するように思えてしまうのですが、やはりメリハリが大事なのかもしれません。
ブランドを築き上げるために必要なことには、徹底的に投資をする。
それがフォルクスワーゲンのやり方のようです。
しかし、それもピエヒのように熱い想いを持って考えられたことでなければならない。
なぜならば、自動車会社の理想とは、車を売ると同時に、社会や未来に対する夢や希望を与えることであるべきだから。
人に希望を与えられるのは、人の熱意しかない。
そう岡崎さんは言います。
果たして、現在の日本の自動車会社に、ピエヒのような人間はいるのでしょうか。