作品紹介・あらすじ
ノートに綴られた覚書から、80歳を超えたグラックが編んだ188篇の断章。風景をつなぐ街道、夢の街道、記憶の街道、読書や芸術の街道…地理学者としての客観的な目、詩人としての幻想的ポエジー。各断章が響きあい絡む、紀行文的、回想録的、文学論的エッセイ。
感想・レビュー・書評
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前半は、旅の記憶が1~2ページ単位で1文がやや長めに刻まれている。なんとなく作者が通ってきた道や見てきた風景を感じとろうと思いながら読んでみたが、難しいなと思った。
文章に登場する町を俯瞰できる風景写真や絵が各文章に1枚ずつあると嬉しいけれど、作者の心の中の風景だから、映像にするのは難しい。
いつか描かれた街を訪ねてみたいなとは思ったものの
風景描写については、一気読みするものではなくて少しずつ読み進めるものだと感じた。
その後に続く思い出の振り返りや起こったこと見た夢の描写は読みやすいものと読みにくいものがある。
共感できるものは読みやすいし文のシンプルさにはっとさせられる。哲学的な短い文章はそうなのかもと思わせてくれる。
読みにくいものは迷路のようだ。思想や歴史を振り返るものは読みづらい。
気づいたら終点までたどり着いていた。
訳者も書いているが、読者が描写された風景にノスタルジーを感じることはほとんどないだろうというのは正しいように思う。
のめり込むほどではないけれど手放すには惜しい感覚。
直近テレビでロワール川を空撮して下る1時間ほどの番組を見ていたので、その風景を思い出しながら
かなりの量の解説が後半に割かれているまるで研究論文のような解説を読んだ。
実際に確認してみないと機械的な翻訳になってしまいそうな気がすると同時に、訳者が持つ深い作者への興味と理解を感じることが出来た。
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