子どもと絵本を読みあう

著者 :
  • ぶどう社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (133ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784892401572

感想・レビュー・書評

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  • 絵本がときどき出てくる、深刻で、感傷的なエッセイ。感傷的というと月並みな印象を与えるが、その月並みさこそ、誠実さになり、救いになることも多いことを私は知っている。だから本書の価値を否定はしない。

    本書の舞台は病院だ。病院にはタブーがある。タブーには、心のセーフティネットとして、それなりの意味があるが、息苦しさの源でもある。解放だけでは危険だが、解放を意識しない取り組みは空虚である。著者の取り組みはエッセイにしていいかどうかは疑問だが、貴重だと思う。

    ・「なにいってるの。りえさんは、病気になれていないじゃない」
    ・彼女は、くまのことを「なぜ名前をいわなかったのか」と言った。それはそのまま「心臓病の患者」として生きさせられることの中で見失いがちな自分自身に向けての問いかけではなかったか。
    ・ここには、ふたつのごうまんが、背中をおしあい、悲鳴をあげている。無意識のうちに彼女からなにかをひきださせようとしたごうまんと、そのごうまんさを、ドクターとクライエントというひとつの関係をふみにじって、自分のところへひきよせようとしたごうまんと。
    ・ひとりで、とじこもって、かぎをかけて、泣く場所が、さゆみにはなかったことに、みんな、気づいた。
    ・〈くくる〉ことのたやすさと、〈くくられる〉ことの痛みを、同時に知った。
    ・わかる、理解する、ということの次にくるものは、〈何かをしてあげる〉ではなく〈感じあう〉ということだったのである。

  • 小児病棟の子ども達と絵本を読み合う。古いけれども骨太な絵本たちがラインナップされていました。机上の理論ではない、実体験に基づいた文章は迫力があります。来週の講演会が楽しみです。

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著者プロフィール

ノートルダム清心女子大学人間生活学部児童学科教授
児童文学作家・児童文学者
保育園・幼稚園・図書館・児童養護施設・老人保健施設・刑務所など様々な場所で絵本の読みあいを続ける。
『チャーシューの月』(小峰書店)で,日本児童文学者協会賞。
「長期入院児のための絵本の読みあい」(西隆太朗と共同研究)で,日本絵本研究賞。
『あららのはたけ』(偕成社)で, 坪田譲治文学賞。『こくん』(童心社)でJBBY賞。
主な著書に、『感じあう 伝えあう ワークで学ぶ児童文化』『「こどもの本」の創作講座』(以上、金子書房)、『保育をゆたかに絵本でコミュニケーション』(かもがわ出版)、『幼児理解と保育援助』共著(建帛社)など。

「2024年 『立ちあう保育 だから「こぐま」にいる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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