- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784892959066
感想・レビュー・書評
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勝者の歴史と認識して教科書を読んだ方がいいでしょう。
考古学の資料だけではない歴史があるはずだと思います。
その参考になるかも?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ヘミシンクの話がオーケーな人なら楽しめる本、かな。
面白かったです。
それにしても著者の何事にも対する態度が、安定して冷静なのが印象的です。 -
歴史を追究する歴史ミステリーというのは大変面白いのだがトートさんなるものが出てくると???になる。
作者の考察力で解決するのではなくあちらの力を使っているのが気になる。
でも、内容自体は興味深いしいろいろと考えさせられることがある。 -
オカルト系の本(っていってもいいと思うんだが、どうかな)なんだけれど、まあまあ面白かった。
高次意識なる宇宙人的存在に、所謂記紀の謎を聞く、という構成で、全編かなり飛ばしているのだけれど、意外と面白い。
(記紀とは、古事記、日本書紀のことをさす)
本書の大きなテーマは、卑弥呼が誰なのか、邪馬台国とはなんなのか、というあたり。
個人的に、記紀には大雑把にいって以下の疑問を持っている。(まあ、不勉強なところもあるのだけれど)
・太陽神は、世界的に見てもほぼ男神であり、天照大神のように女神の太陽神は希である。(メジャーなものでは北欧神話、ヒッタイト神話くらいか?)
全編的に記紀の歴史は神功皇后などの例を除くと、男性的な社会形勢を概ね描いており記紀の中心たる天皇家の系譜も皇位継承も男性が優先して行われている。
その正当性を担保する主神といえる天照大神が、女神であるのは何故なのか。
・国譲り、神武東征、日本武尊の西征、東征の正当性がない。
国譲りは神代の話としても、神武東征、日本武尊の西征、東征は人世の話であり、侵略・征伐の正当性を、ほぼ全く主張せずそれを行うのが当然として書かれているのが、非常に奇異に映る。
・大国主の異名が異常に多い。
・大和政権が成立する以前にあったはずの、日本国内の各国家の姿がよくわからない(例えば邪馬台国や、狗奴国。これらは中国史書に名があるため、日本書紀編纂時に朝廷が認識していなかった事は考えられない)。
・素戔嗚尊(スサノオ)の扱い。母を求めて根の国に向かいたいと父の命を聞かない、天照大神との間の誓約(うけひ)、八岐大蛇の討伐、葦原醜男(大国主)との邂逅など、それぞれのエピソードにおいて、ほぼ別人のようなパーソナリティの差が感じられる。
・月読(月神)の存在の軽さ。天照大神、素戔嗚尊と並ぶ三神の一としては驚くほどに存在感がない。
この本では、とりあえず、上記のうち、
・なぜ天照大神が女神なのか
・侵略・征伐の正当性が詠われていない点について
・大国主の異名が多い理由
・大和政権成立前の日本の姿がよくわからない点について
一応の論を立てている。(まあ、高次意識なる宇宙人的存在に聞いた、っていう設定で、なんだけれど)
大雑把に言えば、
・卑弥呼は尾張氏からの出で、アマテルという太陽神を祭っていた。これは男神である。
・アマテラス族は、高天原、すなわち朝鮮半島南部からの渡来人であり、勝れた技術を持っていた。
・崇神天皇(この本では、崇神天皇は神武天皇と同一である、という説を採っている)による大和政権樹立の際、旧勢力であるアマテルという太陽神を祭る勢力は既に広く存在が知られていたため、これを抹消することは出来なかった。
・従って、太陽神を祭っていた卑弥呼を神格化し、天照大神という太陽神たる女神を創り出す事で、自己の正当性と旧勢力との統合・抹消を試みた。
という論っぽい。一点大きな点を除いて(後述)概ねつじつまが合っており、宇宙人がどうとかはおいておくとしても、面白い。
ただ、この本で著述されている論には、根本的な問題が一点ある。
この本では、「高天原を朝鮮半島南部」とし、そこから農耕や鉄器などの技術を持った集団が日本に入ってきたことを「天下り」としているが、これはおそらくはない。
理由はいくつか有る。
一番大きな理由として、そもそも稲作の技術が日本に入ってきたルートについて、昔は朝鮮半島ルートで入ってきたということが事実のように言われていたが、最近の米のDNA鑑定などによる伝播経路の追跡の結果、半島経由で入ってきたルートは完全に否定されている。それどころか逆に水稲については日本から朝鮮半島に伝播したことがほぼ確定的だといっていい。
鉄器などもそうで、日本での鉄器の出土の最古例は紀元前三、四世紀くらいまでは遡るが、朝鮮半島での出土はもっとも古いものでたしか二世紀くらいだったと記憶してる。ついでに、鉄器の出土は日本の方が圧倒的に多くて、朝鮮半島からの出土は少ない。
墓地もそうで、例えば西日本、および、朝鮮南部では前方後円墳が有るわけだけれど、日本にあるもののほうが明らかに大きく、また年代も古い。端的に言えば日本の有力者の墓の作り方が朝鮮半島に伝わった(そして立てた)という事になる。
総合的に考えて、少なくとも本書で扱われる時代において、朝鮮半島の人のほうが、日本の人よりも圧倒的に勝れた技術や武力を持っていた、ということはぶっちゃけ考えられない訳ですよ。
少なくとも、今のところそれを裏付けるに足る史料がまったくない。
二十年前ならいざ知らず、今この論を基底に据えて展開するのは、ちょっと無理があると思うんですよね。
まあ、そこそこ楽しめましたが。