うつ時代を生き抜くには

  • 日本実業出版社
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本棚登録 : 31
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784893761163

感想・レビュー・書評

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  • 評論家の小倉千加子とサントリーOLの斎藤由香のダブルエッセイです
    どちらも文系エリートに当たる階層だと思います

    お茶汲みOLが昔は良かったと回顧しつつ、小倉千加子がそのゆるいエッセイを世相を含めズバズバと切っていきます
    2010年に書かれたもので、両者とも社会への解像度が浅いです
    社会構造が視えていないので、問題を男性女性ジェンダー由来の個人へと還元しただけで、周辺環境が視えておらず世間知らずを披瀝しているだけになっています
    その視野の狭さが許されていたことを含めて、昔は良かったという感じでしょうか

    小倉千加子の舌鋒に載せられるのは世相のみならず、サントリーOLも巻き込まれいておもしろかったです
    「仕事をしたくないと管を巻くが、結婚していても家事をしたくないと嘯いているに決まっている」と身も蓋もない意見で、それをいわれてしまえば斎藤由香さんも形無しだろうなと思いました

    斎藤由香さん父親が北杜夫ということもあり、躁鬱の作家を持つヤングケアラーの属性が隠されており、それが企業への就職動機の根っこにあるのが透けてみえました
    生きづらさがジェンダーではなく、ヤングケアラーという社会構造にあると肌感感で理解しているサントリーOLは、フェミニズムが薄目です
    社会構造をジェンダーに必死に接続している小倉千加子とは対照的でした

    だからこそ、この二人を並べたダブルエッセイにしては読み応えがなかった
    斎藤由香の母親の献身性や、北杜夫の躁鬱にばかり焦点を絞らず、彼女のヤングケアラー的属性にまでに小倉千加子は視野を広げるべきでした
    認定保育園の園長でもある小倉女史が、どうして社会福祉的観点からサントリーOLを解剖できなかったのか、残念でなりませんでした

  • かつて開高健や山口瞳を出した自由度の高いサントリーも、人事考課制度が導入され、厳しい状況になっている。
    窓際OLを自認する斎藤由香のレポートと心理学者の小倉千加子の分析が交互に掲載されている。
    うつになるのが当然と言えるほど異様な会社の状況をどういなしていくかというアドバイスの書。
    人事考課では測れない斎藤さんのような才能をどう生かすかも経営者に問われるところだと感じた。

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著者プロフィール

1952年、大阪生まれ。早稲田大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程修了。大阪成蹊女子短期大学、愛知淑徳大学文化創造学部教授をへて、執筆・講演活動に入る。本業のジェンダー・セクシュアリティ論からテレビドラマ、日本の晩婚化・少子化現象まで、幅広く分析を続けている。現在は認定こども園を運営し、幼稚園と保育所の連携についても関心を深めている。
主な著書に『醬油と薔薇の日々』『シュレーディンガーの猫』(いそっぷ社)、『増補版・松田聖子論』『結婚の条件』(朝日文庫)など。

「2020年 『草むらにハイヒール──内から外への欲求』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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