都市をつくる風景

著者 :
  • 藤原書店
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894347434

作品紹介・あらすじ

"風景"を通じて考える、日本型都市の創造への道。西洋型の「近代化」を追い求めるなかで、骨格を失って拡散してきた日本の都市を、いかにして再生することができるか。庭園の如く都市に自然が溶け込んだ日本型の「山水都市」に立ち返り、「公」と「私」の関係の新たなかたちを、そこに探る。

感想・レビュー・書評

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  • 様々な著作を引用しながら、具体的なイメージをもって都市や町づくりの説明がなされている。都市や町について考えるきっかけを与えてくれる一冊である。

  • 風景とは決して場所だけで完結するものではなく、土地に固有の山や水や町と言った景色やその土地で育まれた歴史によって織りなされる場所と、そこで暮らす人を繋ぐことによって醸成されるものである。

    近代化する前の日本では、家という個人のものであっても、公共の場所に繋がるものであった。
    それは重要伝統的建造物群保存地区や修景によって有名になった長野県の小布施町を想像してもらえば理解してもらえるだろうか。

    それが明治時代の外発的な近代化で変わってしまった。
    西洋風の建物が建てられたり、交通網の発達によって、建物や道路と言った個別のものは確かに近代化された。
    しかし、それまで存在していた内外の関係性は近代化されなかった。
    そしてそのことを顧みずに、明治になってから150年程度が経った。

    西洋のような統一感のある都市を日本で見かけることは少ない。
    積み重ねてきた歴史の重みが違うこともあるだろう。
    さらに日本は都市の成り立ちである場所特有の景色、歴史、人を否定し、外面的な西洋化を目指してしまった。
    それによって日本の風景は混乱してしまった。

    西洋化を目指すこと自体は否定しない。
    良いと思える部分は吸収し、咀嚼して日本にあうように変質させれば良い。
    日本の風景は日本のものだし、西洋の風景は西洋のものである。
    それぞれに歴史があることを理解し、日本でこれまで育まれた歴史に思いを馳せて、日本の風景とは何であるかを考えるべきではないだろうか。

  • 「風景は美しいにこしたことはない。だけど美しくなくても困らない。」という人にぜひお勧めしたい本。
    結局のところ、国の風景なり景観が誇れるものになるには、国民がそれに関心を持って関わろうとするしかない。この本は、日本には伝統的にも風景へ深い造詣があったことを教えてくれる。西欧の「キレイめ」だけが風景の在り方じゃないと考えられるのではないかと思う。

  • まちづくり、景観形成の全国各地の事例が紹介されていて参考になる。
    【事例地域】
    ・黒川温泉(熊本県南小国町)山間の温泉町の風情をとりもどすため、市民が看板の全廃、建築や橋のデザインを修景
    ・安善小路の黒塀(新潟県村上市)住民がコンクリート塀に黒塀を立て込むと、その路地裏に竹筒キャンドルの灯りをともし、10月にはアートプロジェクトが催される。続いて、表通りにならぶ街やの面を覆っていた看板やアルミサッシュを取り除き、古い店構えに戻し、街道の街並みを取り戻した。また、町並み再生に書かせない古材バンクを立ち上げた。喜多方や上山にも広がっている。
    ・古川町(岐阜県飛騨市)あまり細かなデザイン規制には頼らず、常識はずれの建築を「相場くずし」といって退ける気風が生きている
    ・青島地区(長野県伊那市)沿道の屋外広告物、商業建築を禁止する住民協定を結び、大型店舗の進出も跳ね返す。
    ・古民家を借受けた囲炉裏端コミュニティサロンによる町並み再生活動(福島圏桑折町、伊那市高遠、熊野市のエコツアー案内拠点)
    ・平入と妻入の混じった古い町並みが重要伝統的建造物群保存地区に指定されている(熊川宿)
    ・近江八幡(滋賀県)汚れた八幡堀を町を挙げて浄化。市長は「町並みを商品化するな」と直言。
    ・美保関(島根県)北前船時代の宿が今でも立ち並ぶ港町
    ・古川総合公園(茨城県古河市)猿島台地が傾いて渡良瀬川の低地へ落ち込むあたりを潤していた御所沼を復元して公園化。中村良夫監修設計。「文化景観の保護と管理にかんするメリナメルクーリ国際賞を受賞。
    【引用図書】
    ・和辻哲郎「風土」1935
    ・ウィリアムモリス「ユートピアだより」1890
    環境文学のはしり。自然と人間との交渉の中に超越的な価値を生み出そうとしたジョンラスキンの思想を次ぎながら、ロマン主義的エコロジーの世界を目指した
    ・イザベラバード「日本奥地紀行」
    ・木谷文弘「湯布院の小さな奇跡」
    ・美しい景観を創る会「美しい日本を創るー異分野12名のトップリーダーによる連携行動宣言」
    ・谷崎潤一郎「陰翳礼讃」
    ・丸山真男「日本の思想」

  • 中村良夫氏を存じ上げなかったが、日本語使いが素晴らしい。理系な私は見習いたい。

  • 大学のころから、都市計画、都市工学などが面白いと思っていたので、こういう本にも興味が行きます。

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著者プロフィール

横浜国立大学国際社会科学研究院・経済学部教授(英語学)

「2022年 『ニュアンスや使い分けまでわかる アドバンスト英単語3000〈大学上級レベル〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中村良夫の作品

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