- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784894347526
作品紹介・あらすじ
「9・11」はなぜ起きたのか?英米で絶賛された「テロvs対テロ戦争」をめぐる斬新な洞察。ムスリムの若者はなぜジハードに惹かれるのか?ユダヤ教、キリスト教、イスラームに通暁する著者が、今日の「世界」を解き明かす。いま必要なのは、原理主義者たちの「仮想戦争」を「地上」に引き下ろすことである。
感想・レビュー・書評
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思索
歴史
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結局は著者の自己探し?
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キリスト教徒もユダヤ教徒も、イスラム教徒も自己同一性をを規定するために、他者の規定を必要とする。グローバル化が進行し、民族的、文化的凝集性が薄まるなか、相対的に宗教的コミュニティの下に求心力が集まっている。
しかし、あるコミュニティの中で特定の集団が排斥されたとき、「他者」は「仮想敵」に姿を変える。さらに先鋭化した原理主義が物理的な攻撃を始める。お互いコミュニティのなかで排外主義的な原理主義者たちの形而上の虚妄がパンデミックを起こし、暴力がエスカレートしていく……。
経済と思想(宗教)は表裏一体なのだろう。思想の違いが排斥を生み、社会的排斥からくる経済的困窮が、再帰的に思想の原理主義への傾倒を加速させる。
ドミノ倒しを止めるものはなにか。自己に内に潜り、他者やコミュニティの関係を俯瞰して見る習慣。形而上の仮想戦争を客観視する目を養うために、もしかすると禅的なものに、ひとつの答えがあるような気がする。
いずれにしても、集団的自衛権などと言って原理主義同士の虚妄から起こる戦火に飛び込むことは、思わぬ火の粉を被ることにつながるだろう。
戦争をしない平和主義の国、病的なまでの完璧なものづくりを遂行する国として、国際貢献をする道がきっとあるように思うのだけれど、それでは甘いのだろうか……