日本金融恐慌 間奏曲~日経平均4000円時代が来る

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  • フォレスト出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894519138

感想・レビュー・書評

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  • 来年予測のために購入した本の1冊目。

    著者はニューヨークで活躍するファンドマネージャ。
    この手の本の共通点は、著者がとても自信満々で、同じ主張が本の中に繰り返し出てくることだ。
    でも、私は経済初心者なので、いいとも悪いとも評価できない。
    淡々と、情報収集と割り切って、著者の主張とよりどころをこの読書メモに書くことにする。

    【読書メモ:本書からの引用です】
    ・ 日本経済の不均衡が、均衡化していく。2012-2015に、長期金利5%、失業率10%、所得半値以下、日経平均4000円となるだろう。
    結果として、企業・社会ともに二極化する。(2割の勝ち組と、8割の負け組)

    ・ 金利
    現在の長期金利は、自然金利に近い数値に向かって動かざるを得ず、最終的に国債が暴落し、銀行など金融機関に影響を与える。
    金利が上がって国債の価格が下がると、長期債である国債の魅力が増し、株から国債へ投資先が移る。金利がゼロから5%近くになると、株価は2万円から4000円まで下がる。

    ・ 賃金
    日本は高度経済成長期からバブル期まで賃金が上がり続けた。グローバルで見ても名目賃金はかなり高い(アメリカの2倍、中国の10倍)。しかし、賃金の差に見合うだけの付加価値はつけていない。
    所得を押し上げてきた要因は、日本の不動産と教育費の高さ。

    ・ 失業率
    失業率の低さも、賃金を高くしてきたことの要因。失業者が多ければ、安い賃金で労働者を雇える。
    日本では、潜在的失業者が多い。工業労働者として職を失い地方に帰って農業に従事、結婚して専業主婦になるなど。今後は、彼らも職を得る必要が生じる可能性があり、失業率は高くなる。
    また消費税があがると、失業率が高くなるという、事例もある。

    ・ 不動産
    バブルが生じ、それが崩壊して価格が底を打つというプロセスの中で、その中心になった商品の価格は、ピーク時のだいたい10分の1程度にまで下がる。
    不動産の流動性不足と、日本人の不動産好きから、日本の不動産は、激しく価格下落した有価証券などと違い、地価がボトム打ちして反転するまで通常25年かかる。
    1990年第に端を発した日本の恐慌は、不動産を中心にしたバブルのため、ゆったりとした推移で進む。ゴンドラチェフサイクルに従い、2012-2015年のどこかで大底に達する。
    今回のゴンドラチェフの波で重要なポイントは、その波をつくり動かしている源が日本の国内経済の不均衡である点。
    たとえば、国民貯蓄余剰が、アメリカの景気を引きずりまわす。アメリカは、日本からどうやってその貯蓄を引き出すかに腐心している。

    ・ 株価
    株価は、一本調子にさがるのではなく、下がってはまた持ち直し、を繰り返す。

    ・ ドルは基軸通貨とは呼ばず、準備通貨(Reserved Currency)と呼んでいる。
    各国は、ドルをいくら準備として持っているかにより、自国のマネーサプライをある程度増やしたり減らしたりする。ドル準備の多寡が規制となっている。ドルを海外からどれだけ稼げるか、支払いになって減るかに応じて、その国の通貨量、マネーサプライが決められ、景気も実物経済の動向も決まる。

    ・ マネーの信用創造のしくみや、マネーの移動を理解していないと、実際のモノの経済、あるいは実際の生活、仕事などがどう回転していくかが読めない。マネーが増えたり減ったりすることは、一種自然の動きである。自然現象であるならば、自然の摂理を見抜いていればどうしてこうなるかはわかるわけだ。

    ・ 欧米のトップが、日本のバブル時のような土地投機をすることはありえない。その理由の一つは、会社が余分なカネを持っていないから。会社は資金があれば本業に投資する。それでも余剰がでたら、株主に配当する。

    ・ 第二次大戦後のアメリカの世界戦略は、日本・ドイツにモノをつくらせ、アメリカが買い上げ、自国で消費する。それにより、ドルを国際通貨としてあまねく広める。アメリカの経常収支は赤字になることが前提で、日本・ドイツはアメリカにモノを売り、アメリカの国債を買わなくてはならない。
    アメリカから得たドルは、日銀・市中銀行を経て企業の資金に回された。日本企業はカネづくりに頭を悩ませなくてもつくれば売れる特殊な環境の中にいた。
    資金供与の担保になったのが土地。土地があればいくらでも資金供与された。日本企業が他の外国企業に比して、廉価で技術力の高い製品を大量に生産し、輸出できたのは、土地担保主義による銀行の信用供与があったから。
    巨大なアメリカ市場と、土地本位体制による資金供与があってこそ可能なバブルだった。
    アメリカがドルを供与しなくなった時、アメリカが日本のモノを買わなくなった時にこの構造は必然的に崩壊する。

    ・ コスト構造を左右する最大の要素は労賃、店舗・工場などの施設の賃貸費。
    人権費・賃貸費はそもそも実態にそぐわないレベルにまであがりすぎているのだから、これを実態に近いレベルまでに落とし、それでも経営を続けていけるかどうか、この点が極めて重要なポイント。
    サンマルクは予想売上高に対して、賃金比率がいくらという社内規定があり、上回る場合は決して店舗を借りない。
    売り場を作りなおす、商品構成を見直す、などもはやその段階ではない。仮に売上高が7%下がったとすると、その分人件費や賃貸費をどうやって下げるかが緊急課題でなくてはならない。
    これからは、企業が一定の経営比率を目標にとらえ、それに向かって努力していくことがますます大切になる。

    ・ ビジネス英語に習熟していても、コミュニケーション能力を欠いている。日本社会で、「うんうん、なぁなぁ」で通じ合ってきた彼らは実は日本語でもコミュニケーション能力を欠いている。
    自分は何をしようとしており、それに対して相手はどうこたえているのか、応えているものの中から何が必要で、何がいらないか、コミュニケーションをとるためには、延々と話しをしなければならないはずなのに、「相手の言い分は聞いた」「ひとこと言えばそれで要件はすんだ」と錯覚して平気でいる。

    ・ 給料が半分になって障害になるのは、住宅ローンと子供の教育費。賃貸マンションに移り、子供を大学に行かせるのはおやめなさい。

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著者プロフィール

日・米・欧で活躍するファンドマネジャー。一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了後、ドイツ・ケルン大学、イギリスLSEに留学。野村総合研究所研究員、ロンドンのチェース・インヴェスターズ、ニューヨークのAIGグローバル・インヴェスターズを経て独立。欧米ファンドのグローバル株部門でトップクオーターを続ける成績をあげる。これまで訪問した日米の会社は1500社を超え、その徹底した現場主義には定評がある。著書に『ブレないトランプが世界恐慌を巻き起こす』他多数あり。

「2019年 『米中壊滅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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