三国志 3の巻

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894560512

感想・レビュー・書評

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  • これは本当に奥が深い!多くの視点から多くの人物を楽しめる。特にクローズアップされていたのが裏切りの連続で親殺しも関係なく無法者とされていた呂布の気持ちなど読んでいてよくわかる。池上先生のコミック「覇」にあるような荒々しい呂布とも違い男として時代を駆け抜ける彼の美しさに心震わされ、それに3兄弟の末弟として強さだけが誇張され続けた張飛の繊細さに心配り、そして人を愛する気持ちなどは彼が死ぬ時にすべて読んできた中の思いが一瞬で溢れてきて涙が止まらない!

    先日、北方先生の「黒龍の柩」を読んで山南と土方のお互いの見えない思いについて語ったが、やはりこの三国志も同様であって男性が読むには心を揺さぶるいい作品です。

    史実に沿った作品ではあるが、名前だけでしか知らなかった魏延・馬謖・姜維・王平・許褚・張遼・韓当・馬超などもっともっと知りたいと思える人物が本当にいた。話の中で作られた人物が何人も出てくるが、彼らがしっかりとサポートして史実上の人物をどんどんクローズアップさせていく。

    頭の中で多くのシーンがフィルムとなって映し出されたが一番は呂布の愛馬である赤兎馬が死に掛けた時に劉備の配下であった成玄固に赤兎馬の命を託すシーンなど今でも僕の勝手な映像として頭の中に残っている。

    元々は呂布の配下であった張遼。その後は曹操の勇将として知られるが、呂布軍の伝統を貫き闘志無敵の騎馬隊を率いる姿も忘れられない。やはり何度も言うが北方先生の作品を読むのはすべての先生の作品を読んだ一番最後が妥当だと思う。本当の漢達を読ませてくれます!

  • 二喬を攫う断金コンビのお馬鹿さが可愛かった。若い……。劉備の失敗は全て計算の上にされるところに若干納得がいかない。

  • 呂布ってこんなに格好良かったっけなー?この巻で曹操にやられちゃうわけですが、最強の麾下と高順、張遼らを取りまとめる呂布の軍人らしさに惚れてしまいます。演義で見る呂布とは正反対の印象です。
    張済の妻だった鄒氏。もちろん文章だけなんだけど色っぽさがムンムン伝わってくる。媚術だか何だか知りませんが虜にされたいものです(笑)。
    曹操はこの鄒氏をキッカケとして長男の曹昂、典韋が討たれたわけで、人生最大の失敗、本当に気の毒。
    あと、五斗米道のところはあまり知らなかったのだけど、本作オリジナルの鮮広(張魯・張衛兄弟の叔父)が良い感じで話に入ってくる。この続きは4巻になりそうで楽しみだ。
    北方三国志の、節ごとで主要人物の一人称視点でストーリーが展開していく感じは相変わらず面白いねー。
    (過去の読書記録登録のため評価なし)

  • 武人としての呂布の凄まじさ、人には見せぬ赤兎馬への感情が良く表現されている。ただ、逆に言えば、それ以外に見所は少ない。
    場面の切り替わりが分かりにくいのは相変わらず。

  • 面白いが、だんだんだれてきたかも・・・。早く諸葛亮が出てくればいいのに・・・。

    三の巻は呂布の興亡がかっこ良かった。曹操の逞しさも良いが、やっぱりもっと劉備に頑張ってもらいたい。劉備にはチョウ雲子竜が加わり、ますます期待が高まって来ている。今は曹操のもとに身を寄せ、許都の皇帝からは劉皇叔と呼ばれている。

    孫策もひそかに覇業を進めている。
    袁紹も公孫賛を滅ぼした。


    でもそろそろだらけてきたかも・・・。ここらへんで大きな展開が欲しいところ。

  • 二喬獲得戦

  • 三國志演義で最強と位置付けられて以来、呂布は哲学でもある。
    これほどまでに広大な土地で、長く群雄と無数の男たちが戦ったのは、世界史上類を見ない。支那だけだ。
    つまりどんな創作であろうと、これほどの舞台を調えて最強の地位に立たせなければ呂布とは並び立てない。つまり、ある程度の現実味を帯びさせてここまでの強を表現させるには、現代で広く最強とすでに言われている、呂布でしかありえない。
    つまり、史上最強は呂布でしか表せないと言っても、過言ではない。そしてその史上最強たる彼の内面をどうするか、これが三国志序盤を書くにあたり評価されるにあたって大きな基準となるだろう。北方謙三は、最高レベルだったろう。

    「やめろ曹操。男には、決してゆずることのできないものがある」
    「それは?」
    「敗れざること」

    格好良いよな。呂布が死ぬシーンには、かなり力が入れられている。老いた赤兎との語り合いや、別れ、呂布の死を感じた赤兎が海へと駆け出すシーンは、本当に切ない。
    北方謙三の、哲学としての呂布は。男として必要な物以外を切り落とした男だと俺は思う。
    何を残したのか。強さと誇り、愛と友情だろう。
    原作での呂布の命乞いを曹操の台詞にし、上に引用したシーンに繋げた。登場から死までを通して、強さと誇りを表した。
    呂布に愛はあっても恋はない。また、友は陳宮と赤兎のみだが、呂布からは何の打算もなく、余人が一生かけて多数の人と繋げる友情の深さを、赤兎との間のみで達するほど繋げている。牧としての体裁のために、言い換えれば陳宮のためだけに、父とした丁原や董卓を切った男が、煩わしい駕籠に乗るのだ。
    そして呂布には志がない。戦は生きていると感じるために、楽しいからやる。赤兎や自分の五百の分身たちと遊んでいるのだ。享楽とも言える。
    つまり、男として究極まで辿り着いた者には、他人への気遣いは元より仁も忠も孝も梯も、志さえ不要なのではないか。それらの美徳は、己を飾る心がなければ生まれないものなのではないか。

    呂布には、何を思わなくとも何の美徳を備えなくとも完璧な男には、ただ誇りと愛と友情の、自発的に生まれるもの以外は何もないのだ。
    呂布には赤兎さえいれば、天下さえ不要だった。

  • こんなに呂布がなくなってしみじみした三国志は、北方のが初めて。
    不器用な、けれど自分に正直で魅力的な男でした。

    張飛といい、他の三国志でただの力任せの馬鹿扱いされてる男たちが
    泣けるほどにカッコいいですのぉ。

  • この巻は呂布の話。
    北方版三国志は呂布がカッコ良い!
    劉備はイマイチ!

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著者プロフィール

北方謙三

一九四七年、佐賀県唐津市に生まれる。七三年、中央大学法学部を卒業。八一年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、八三年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、八五年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。八九年『武王の門』で歴史小説にも進出、九一年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、二〇〇四年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。一三年に紫綬褒章受章、一六年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した。二〇年、旭日小綬章受章。『悪党の裔』『道誉なり』『絶海にあらず』『魂の沃野』など著書多数。

「2022年 『楠木正成(下) 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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