赤ちゃんの発達とアタッチメント: 乳児保育で大切にしたいこと

著者 :
  • ひとなる書房
4.17
  • (3)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 84
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (120ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784894642478

作品紹介・あらすじ

いつでも守ってくれる「安心と信頼の基地」があるからこそ、子どもは意欲的に外の世界に旅立てる。人生の出発にあたって幸せに生きる力の原点となる「アタッチメントの形成」をわかりやすく紹介。
赤ちゃん学の最新研究と保育に役立つポイントをコンパクトにまとめ紹介する待望の書。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • アタッチメントってなに?と聞かれた時に、とりあえずは納得感のある答えを言えるようになったと思います。

    非認知能力獲得にアタッチメントが重要と知り、そのアタッチメントについて少し深掘りしたいと思い購入。

    アタッチメントにより子供にとって「なにがあっても戻ってこれる安全基地」が出来るため、子供が不安なく外の世界へ飛び出していけるようになることで社会性を効率的に獲得する、という旨の内容だと理解しました。

    そのために、親は子供がネガティブ感情を感じた時、感情への“共感”や、“調節”の手助けをすることでアタッチメントを形成し、子供の安全基地となることが大切。

    アタッチメントにより獲得できる力についても、非認知能力と繋がるところが多々あるため、知識の補強にもなりました!

  • 平易な文章でタイトル通り「赤ちゃんの発達とアタッチメント」について語る本。発達心理学(乳幼児心理学)や保育,幼児教育を学ぶ学生さんにとってはまず概観する目的の本としておすすめ。それでも初学者は難しく感じるかもしれないが,具体例が示されているし,実際に子育て中の人なら思い当たることも多いだろうから,関連付けることでより理解が深まる。20数年前が懐かしい。その頃に学んだ内容はだいたい覚えているから不思議なものだ。一方で,ジョイントネスやmind-mindedは初めましての概念で,もう少し情報を足して話せるようにしておこう。

  • 2019年7月12日(金)に龍谷大学図書館深草で借り、7月14日(日)に読み始め、翌15日(月・祝)に読み終える。参考になること、勉強になることも多かった。保育者や子育てに関わる父、母、祖父母なんかにもおすすめしたい。

    以下、感想と勉強用メモ。

    50頁のコラム「『欲求の先読み』に注意」はなるほど。

    「一般的に『錯覚』というのは、あまりいい意味で使われることがなく,たとえば『現実を誤って認識している』とか、『過大に認識している』というような意味で使われることが多いのですが、保育や子育てを語る場合は、養育者が赤ちゃんの心の状態をやや過剰に読み取ってしまうことを『錯覚』といいます。心理学では、『Mind - Mindedness』という特別なことばで呼ぶことがあります」(47頁)

    「この錯覚はかなり個人差があります。同じ赤ちゃんの姿を見ても、感想が多いお母さんもいれば、とても少ないお母さんもいます。〔中略〕子どもの心の状態を豊かに読み取る傾向が強いお母さんは、その後、子どもが2歳~5歳と大きくなっても、子どもとのやり取りの中で、とくに心に関連することばかけをたくさんすることがわかっています。『うれしいの?』『悲しいの?』『何を思っているの?』ということをいっぱい聞くわけです。こうして心に関わることばかけが多い養育者のもとで育った子どもは、自分の心、ほかの人の心を理解する力の育ちが優れていることもわかってきています」(52頁)

    とすると、他人の気持ちを想像したり考えることが苦手な特性をもった養育者のもとで育った子どもにはどのような影響があるのか気になるところ。

    54-55頁の「特別な脳のしくみができあがるわけとプロセス」という項はなかなかおもしろい。要するに、赤ちゃんは人の顔というよりも楕円形をしたもののうち上方の密度が高く下方の密度が低いものに興味を抱くということ、当初は皮質下回路で顔の知覚処理を行っているが次第に皮質回路(大脳皮質)で行うようになるということ、顔の違いや表情の違いを認識するようになる「相互作用的特殊化」について、そしてそれを説明するものとして、日本人の子どもは当初は「LA」と「RA」の「ら」を識別できるけど徐々に識別がむずかしくなるということや生後6ヶ月の赤ちゃんは人の顔と同様にサルの顔の違いを識別できるけど生後9ヶ月になるとサルの顔は識別できなくなるといったようなことが書かれている。そしてこれをチューニング(調整・同調)と表現している。

    「ミラー・ニューロンとは、その名の通り、鏡のような役割を果たす神経組織を指します。たとえば、人が転びそうになっている場面を見たとき、わたしたちは『あ、危ない』と反応します。そのとき使われている脳の神経は、自分がつまずいて、『あ、いけない!』と思ったときに使われている神経と同じ可能性があるということです。そうした働きをする神経組織をミラー・ニューロンといいます。言ってみれば、『人のことを自分のことのように感じてしまう』、つまり共感性を支える脳内基盤ということです。そして、このミラー・ニューロンは、生まれつき完成体として備わっているのではなく、その一部は発達するなかで徐々にできあがってくるもののようです。では、どのようにできあがっていくのか。一説には、既にミラー・ニューロンという共感する脳をもった養育者に、鏡になってもらう(自分の中で起きていることを映し出してもらう)ことで、子どもの共感する脳(ミラー・ニューロン)ができあがっていくと考えられているのです」(56頁)

    ミラー・ニューロンがどのようにしてできるのかについては、まだはっきりしていないという書き方だけど、もしここに書いてあるようなことが部分的にでもあるのだとすると、やはり他人の気持ちを想像したり考えることが苦手な特性をもった養育者のもとで育った子どもにはどのような影響があるのか気になるところ。

    64頁で「自律性」の逆を「依存」と説明しているけど、心理学でそのような使い方をすることがあるのだろうか。哲学では自律性(自分のことは自分で決める)の反対は他律性(自分のことを他人に決められる)であり、依存(自分のことを他人に頼っている)の反対は自立(自分のことは自分でできる)。

    アタッチメント(愛着)を最初に提唱したのはイギリスの児童精神科医のボウルビィ(Bowlby. J)と65頁。施設に収容された子どもたちの心理的な治療や、第二次世界大戦の戦争孤児たちの研究をしていたとのこと。

    70頁から「安全感の輪(Circle of Security)」について。

    90頁「養育者主体から子ども主体へ」の項で「敏感性」に対する「情緒的利用可能性(emotional availability)」という概念について。emotional availabilityは「情緒的応答性」と訳されることが多いようだが、これだと養育者主体のニュアンスを帯びるので「情緒的利用可能性」と子ども主体の表現に訳しているとの説明。

    情緒的利用可能性との連関で93頁に、子どもにはたくさん話しかければよいというものではないという説明。

    「たとえば、親子関係の良好さを見るとき、ある一定の時間内でたくさんのことばかけをしたお母さんが、少ないお母さんよりいいかというと、そうとばかりは言えません。子どもが一人で集中してあそんでいるときに、あそびとは関係ない働きかけをしても意味がありません。また、子どもが一人で頑張ってやろうとしているのに、『こうしたほうがいい』『そこは違う』などと横やりを入れるようでは、ただ干渉しているだけです」(93頁)

    104-5頁にアタッチメントとの関連で複数担任制の注意点について。

    「3歳未満児の場合は、複数担任で保育を進めていきます。大人の観点から言えば、子どもが弱っていたときは、だれかがその都度、応じてあげればいいと思うのですが、子どもにとっては『だれがいつ』ということがわかっているほうが、容易に安全性の見通しを立てることができます。ですから、子どもへの対応は、『だれかがその都度』ではなくて、『だれがいつ』をできるだけ徹底しておくことが大事になってきます。つまり、子どもの中に『このとき、この場では○○先生が必ず応じてくれるはず』という明確な予測が成り立つよう配慮することがアタッチメント形成の大きなポイントになります」(104-5頁)

  • アタッチメントについて包括的に、わかりやすく説明されていて、基本的知識の整理ができた。
    家庭だけではなく、保育所等でのアタッチメント形成を想定されているため、子育てに関わる機関にも役立つ本だと感じる。
    自分の子育てを考えると、侵害的になりすぎないように気をつけよう。

  • 東大の遠藤先生のアタッチメントに関する本。
    以前、講演を聞いた時とほぼ内容は一緒だった。
    「情緒的利用可能性」については、より深く書かれていた。心理学の専門用語や研究論文については、理解するのに少し時間がかかる。

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

責任編集

「2012年 『社会・文化に生きる人間』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠藤利彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×