ブレンダと呼ばれた少年

  • 無名舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784895859370

作品紹介・あらすじ

1967年、アメリカで包皮切除手術に失敗した8ヶ月の双子の男の子のひとりが、性科学の権威、ジョン・マネーの勧めによって、性転換手術を受け、ブレンダという名前で女の子として育てられた。性転換をすれば、女性の生殖機能を持つことができ、正常な性生活をおくれるとマネーは説得したが、実は、ブレンダは「性別の自己認識は環境的要因によって決まる」というマネーの理論を裏付けるための格好のモルモットとして利用されたにすぎなかった。マネーは、この症例を医学ジャーナルに発表し、自説の正当性を主張し、キンゼーレポート以来の偉大な発見としてセンセーションを呼ぶ。だが、少女となった男の子のこころと身体は、成長するにつれ重大な危機を迎える…。

感想・レビュー・書評

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  • 医療事故により女の子として育てられた少年が本来のジェンダーを取り戻すまで

  • 己の過ちを認められない大人にどんな権威があろうとも、そのせいで、ひとりの少年の人生が狂うなんてことがあってはならない。
    でもこういう現実は確かに存在している。

  • ジェンダーの改変を成し得た先生は、実は怪しすぎるをっさんで、その被験者は、男から事故でアレしたので女になりませう と言はれて処置されたものの先生のいふ「成功例」ではなく大失敗例で、てふかジョン・マネー大先生は、まぁこれでもかとすごいトンデモ物件を垂れ流しまくる大変な方で、人間としてもアレな人だったと大暴露。
     ブルースってオタクっぽい名前だったんかー。

  • 医療ミスで性器を失ったブルースは、女の子として育てられる。果たして性別は先天的なものなのか?後天的なものなのか?
    彼の不幸は医療ミスのほかにも、双子だった点にある。性器を失った少年と遺伝子的に全く同じ、欠損のない少年。二人を比べることで医学が発展すると考えられた。
    14歳のとき、ブルースは自分が男だと確信する。しかし医者に逆らいたくなかった両親は、女性として成長していると嘘の報告をする。
    真実を知ったブルースはデイヴィッドと改名し、結婚。しかし双子の弟・ブライアンは自殺してしまう。彼自身の結婚生活もうまくいかず、デイヴィッドは拳銃自殺でこの世から去ってしまう。
    医学とは、性別とは。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:936||C
    資料ID:50002427

  • セクシャリティは遺伝か育ちかの結論が出たような・・・
    遺伝で。
    性格は育ちが優先されそう。

  • 1967年、生後8ヶ月になる一卵性双生児の男の子の一人が、包皮切除手術の失敗でペニスを失ってしまった。両親はこの子のことを、著名な性心理学者であるジョン・マネー博士に相談した。マネーの助言によって、この赤ん坊は性転換手術を受け、ブレンダという女の子として育てられた。
    マネーにとって、この双子は自分の提唱する「性意識は育ちによって形作られる。したがって1つの性を持って生まれた赤ん坊を、周囲の人間によってもう一方の性に変換することは可能である」という説を証明する格好の実験対象であった。まったく同じ遺伝子を持ちながら一人は女の子、一人は男の子として立派に育てば、自説を裏付けるこれ以上の証拠はない。
    しかし、ブレンダはマネーの思惑通りには育たなかった。「女の子」である自分に違和感を感じ続け、常に悩みながら育っていく。しかし、マネーに面会するときには無理に女の子らしく振舞い(それはマネーがそれを求めているのがわかったから)、マネーはそれを見て「実験は成功である」と結論づけ、学会に発表した。
    しかしそれは、大きく間違った見解であった。ブレンダは14歳のときに自分の出生の秘密を知り、男として生きることを選ぶ。元の性に戻る手術を受け、それ以後の人生を「デイヴィッド」という男性として生きている。
    マネーの論文の影響は深刻で、この研究発表以後、ブレンダと同じような事故で性的身体機能を失った赤ん坊や、萎縮したペニスや肥大したクリトリスなどを持ったいわゆる「半陰陽」の赤ん坊に対する性別再判定手術(つまり手術によってどちらかの性に決定してしまうこと)が一般化した。彼らの大半は再判定された性に疑問を抱いており、苦しい生を強いられている。

    非常に理系らしからぬ感想になるのだが、これを読んでまず思ったことは「どうしてブレンダの周囲の大人たちはブレンダが彼らのご機嫌を取るために女の子らしく振舞っていると気づかなかったのだろう」ということである。子供がまったく無邪気であると思ったら大間違いなのだ。大人の顔色をうかがうことも知っているし、だから大人たちが気に入るように演技することだってある。自分だって子供の頃そうした経験があるだろうに、どうしてそれを忘れてしまうのだろう。
    そして、科学者のおろかさである。発表された論文が絶対なわけではない。その意味で、マネーの論文の招いた問題はマネー自身の過失というより医者全体の過失である。マネーは心理学者である。心理についてはエキスパートでも、人体の機能に関しては素人である。医者たちは手術を一般化する前に、マネーの専門外であった身体機能の面から彼の論文を再検討すべきではなかったのか。

    現在、デイヴィッドは結婚し、血のつながった子供こそいないが、妻の連れ子を慈しみ、幸せな日常生活を営んでいる。性別再判定手術の犠牲となった人々全員が、彼のような幸福に恵まれることを切に願う。

  • 他人が安易に性を判断することの危険性と、身体の性に違和感をもつ人の苦しみ(この事件に限らず)を訴える。

    マネー博士の非人道的な振る舞いへのインパクトがあまりにも強いが、訳者あとがきにもあるとおり、博士は性科学の発展に大きく貢献した人物でもある。
    男女の性差は生まれ持ったものではなく、成長の過程での刷り込みによって完成するものだという博士の主張は、実際にジェンダーフリーの後ろ盾にもなっていたのだろう。
    ただ博士の結論は男女二分の常識を見直すことには至らなかった。デイヴィッドの言うように、正常な性器によって男/女と認められることが人間らしさにとって必要不可欠であるかのような考えが、根本的な原因の一つなのではないか。
    また、結局ジェンダーフリーからはほど遠い世界で生活したブレンダから見た女性の扱われ方というのは説得力がある。

    博士の若き日の論文が私にとってはかなり受け入れやすかった一方、何が彼の思想をここまで変えたのかというのがとても気になる。

  • インターセックスじゃないけどインターセックスと同じような問題が描かれている。
    生き方どころかアイデンティティを他人に決められてしまうのは恐ろしい。

  • 驚愕した

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