惑星

著者 :
  • 港の人
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本棚登録 : 222
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784896293692

感想・レビュー・書評

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  • 詩人・絵本作家の片山令子さんがいろんなところで書いた文章がまとまっている本。
    「十力の金剛石」「リボンのように」が特に素敵だった。
    「あなたの血……。わかりますか?この血の赤い色は、宇宙から地球におちてきた、隕石にふくまれていた鉄の赤なんです」
    遠く離れてみることで、あたらしく結ばれるものたち。無機物と有機物、遠い所と近い所の橋が渡される感覚。

    「好き」という気持ちのリボンは、胸の中から横向きのひとにするりと飛んでいって、「贈り物を結ぶように蝶々結びになってみせる。でも、こっちを見たら、すぐに端を引いてほどき、戻ってくる」。
    手を差し入れて掬えばふわふわと飛んでいってしまいそうな、とらえどころのない気持ちをこんなに柔らかくふさわしく表現できる方がいるのだなとびっくりした。

    くまさんの絵本の話は懐かしくて、子どもや親がそれぞれ違うくまさんを見ている、というのにはなるほどと思った。
    子供のことが、本当に好きでいらっしゃるのが伝わってくる。うーん?と思うところもないではないが、時代もあるし私の至らなさもあり何とも言えない。この人の愛は疑いなく強いまっすぐな愛、包み込む愛であって私にはまぶしい。
    あと、アンデルセンの雪の女王は知らなかったんだけど、自分も人魚姫やマッチ売りの少女のお話って好きになれなかったタチなのでぜひ読んでみたい。

    ロージナ茶房や白十字のことがたまに出てくるけど、特にロージナ茶房は私も良く行くので、つい嬉しくなる。この同じ場所で、こんなに豊かな思考と表現とを持っていたひとが、同じゼリー食べてたんだな、などと感慨にふける。でも今はもういらっしゃらないひと。
    「わたしはいつも、大切なものは失ってはならないと思っています。もしほんとうに大切だと思うことができたならば、一度失ったものでも、また帰ってくるのではないかと思っています」
    読んでいて、ああ素敵だなあと胸の壁にかけておきたいような言葉にたびたび出会った。そう、言葉を何度も口の中で転がして思い返すとき、ロージナ茶房の向かい側の席にまたいらっしゃるのかもしれないな、と思う。

  • 詩人の作者だからか、その扱う言葉のひとつひとつが宝石のように美しく、一編ごとにまさしく星の瞬きを眺めているかのような心地になった。

    使う表現はとてもシンプルなのにとても幻想的で、そうするとほんの短いエッセイでもまるで不思議なショートショートや短編SFでも読まされているよう。
    常に視界は極彩で、絵本を眺めているかのような写真集を広げているような、長編メルヒェン映画を観ているようなふしぎな心地になった。

    片山さんの文章はやわらかで優しく、遠くの世界へ連れて行ってくれる。

  • 京都の恵文社で出会った本。鮮やかな黄色と幻想的ですこし妖しい表紙の絵に惹かれた。

    丁寧に観察して柔らかい言葉で書かれたエッセイと、抽象的なのに情景が浮かぶような不思議な詩の本だった。
    言葉を選ぶのに相当こだわっているのがわかり、さすが詩人だなあと思う。夫婦で絵本を書いたり、子どもたちとの交流から物語が生まれるエピソードは素敵すぎて、汚れた心を持った自分が読んでいていいのだろうか、おこがましくないだろうか、と不安になってしまった。

    全部読んでから、表紙を見たとき、やっぱりいいなあと思った。最高の装丁。

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著者プロフィール

1949年群馬県生まれ。詩人。著書に詩集『夏のかんむり』(村松書館)、絵本『たのしいふゆごもり』(福音館書店)、「のうさぎのおはなしえほん」シリーズ(ビリケン出版)などがある。2018年没。

「2021年 『おねぼうさんはだあれ?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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