先日「もっ知りシリーズ」のクリムトを手にしました。
クリムトの作品、知らない物が多すぎて(当然なのですが^^;)、でも、そんな中で惹かれる作品に出会ってしまいました。
そうすると俄然興味が湧いてきますよね♪
ということで、本書も図書館にてお借りした一冊です。
「もっ知り」のクリムトに記しましたが、
知らなかったことばかり。
どうしても豪華絢爛な黄金様式に目がいきがちですが、他の作品もやはり素晴らしい
(*´ ω`*)
生涯で約230点の作品を残したクリムト、女性を描いた作品のイメージが私には強いですが、うち風景画は54点。
割合を考えると決して少なくないですよね。
初めて目にしたクリムトの作品も多く、非常に興味深く読み終えました。
<アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I>
グスタフ・クリムトによって1907年に完成された絵画です。この作品は、キャンバスに油彩、銀箔、金箔を使用して描かれ、サイズは138 cm × 138 cmです。現在はニューヨークのノイエ・ガレリエに展示されています。
この肖像画は、ウィーンの銀行家で実業家のフェルディナント・ブロッホ=バウアーの妻、アデーレをモデルにしており、クリムトはこの絵の完成に3年をかけました。ユーゲント・シュティール様式の複雑で凝った装飾が特徴的で、クリムトの「黄金時代」後期における最も完成度の高い作品とされています。
アデーレ・ブロッホ=バウアーは、クリムトのミューズであり、社交界のセレブでした。彼女は1925年に亡くなり、遺言でクリムトの絵をオーストリア・ギャラリーに寄贈するようにとありましたが、ナチスによるアンシュルス後、夫フェルディナントはスイスに亡命し、作品はナチスに没収されました。第二次世界大戦後、フェルディナントの遺言により、甥や姪が相続人となり、長い法廷闘争の末、アメリカ在住の姪マリア・アルトマンに所有権が認められました。その後、2006年にロナルド・ローダーに売却され、ノイエ・ガレリエに収集されました。
この作品の歴史は、美術品の所有権とナチスによる略奪の問題を浮き彫りにするものであり、美術史だけでなく、法的および倫理的な観点からも重要な意味を持っています。また、この話は映画『黄金のアデーレ 名画の帰還(Woman in Gold)』の題材にもなりました。
<接吻>
1907年から1908年にかけて制作された彼の代表作の一つです。この作品は、180cm x 180cmのキャンバスに油彩と金箔を使用して描かれており、ウィーンのベルヴェデーレ宮殿オーストリア絵画館に所蔵されています。
「接吻」はクリムトの「黄金時代」を代表する作品であり、愛、親密さ、性愛といったテーマが表現されています。作品には、抱き合う男女が描かれており、男性のローブには長方形の模様、女性のローブには円形の模様が特徴的です。クリムトはこの作品で、当時のウィーンの前衛芸術を象徴すると同時に、退廃的なウィーンの精神状態を視覚的に表現しています。
また、この作品には日本の平面性や琳派の影響が見られ、クリムトの父親が金版画を専門としていたことや、彼自身がイタリア旅行でビザンツ様式のモザイク画に感銘を受けたことが、金箔を多用するスタイルに影響を与えたとされています。
「接吻」は、クリムトの作品の中でも特に人気が高く、ウィーン分離派やアール・ヌーヴォー様式の代表的な作品としても知られています。この作品は、クリムトの愛、親密さ、性愛を主題とした作品群の中でも、最も傑出した作品の一つと評価されています。
<あらすじ>
19世紀末の帝都ウィーンで活躍した画家グスターフ・クリムトの生涯と作品を紹介しています。この本では、クリムトが貴族社会の寵愛を受けながらも、やがてそれに反逆する才能豊かな男として描かれています。彼の豪華な装飾性と蠱惑的でデカダンな作品を多くの図版を中心に紹介しながら、世紀末ウィーンで繰り広げられた芸術家たちの交遊や当時のアートシーンをヴィヴィッドに伝える内容となっています。
本書は、以下の章で構成されています:
世紀末ウィーン
クリムトとアカデミズム
ロマンティシズムとクリムト
分離派
ベートーヴェン・フリーズ
ストックレー邸と生命の木
黄金様式と女たち
素描
クリムトと表現主義
風景画
また、ハンス・マカルトと旧世代の芸術、ウィーン工房とストックレー邸、<アデーレ・ブロッホ=バウアーⅠ>の肖像がめぐった数奇な運命、エゴン・シーレとオスカー・ココシュカなどに関するコラムも含まれています。この本は、クリムトの作品だけでなく、彼の時代とその芸術的背景に興味がある方にとって、理解を深めるための入門書として最適です。