きこえるきこえる

  • らくだ出版
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784897770345

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  • マリー・ホール・エッツ作。ふなざきやすこ訳。
    原題をそのまま訳すと、「言葉なしのおしゃべり」

    もちろん、エッツの言葉によって語られるのだが、そのテーマは、身ぶりによる言葉。絵の中にあるのは、無言。ただ身ぶりがたてる音だけが聞こえてきそうだ。

    言葉なしの世界では、本書に登場する「ぼく」をはじめとする子どもたちと動物たちがまず、ひとつながりになる。例えば冒頭は、

    「きみの もっているもの なにか おくれ」
    ゾウは はなを のばします。

    「おいで」
    ぼくは イヌを よぶとき、トウッ トウッ したを ならして ひざを たたく だけです。

    今度は、子どもたちどうしのやりとり。「にいさん」と「ねえさん」がひもにしがみついて引っ張りあっている。
    「けんか するときも ことばを つかわないで できます」

    こうして言葉を引き算してみると、しだいに、いろんな感覚が色づいてくる。花の匂い、鳥の声、肌寒さ、風にとんでいくしゃぼん玉……

    かあさんの言葉による小言を聞きたくなければ、耳をふさげばいい。ボールを投げてほしければ両手を上げればいい。とぼけるためには肩をすくめて手を広げるだけ。

    最後のページがさすが。
    つい声を出して呼びかけたくなる瞬間が描かれる。
    「さようなら」と「ぼく」がじっさい言ったのかどうかはわからないけれど、去って行く友達にもう声はとどかない。ぼくが手を振り続けていることも、背を向けている友達には見えない。

    「きみは ふりかえって 手を ふってくれるかしら。
    ぼくは 手を ふります、いつまでも。」

    こういう、言葉さえあれば伝えられる場面でだって、言葉のいらない瞬間というのが、たしかにある。

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著者プロフィール

1893年,アメリカ,ウィスコンシン州生まれ。ニューヨークの美術学校を卒業後,シカゴ大学で社会学を学びながら,セツルメント活動に従事。その後,コロンビア大学の大学院で児童心理学を学び,『ペニーさん』(徳間書店)でデビュー。『クリスマスまであと九日』(冨山房)でコルデコット賞を受賞。作品に「もりのなか」,「またもりへ」,「わたしとあそんで」(以上福音館書店),「モーモーまきばのおきゃくさま」(偕成社)などがある。

「2023年 『わたしとあそんで PLAY WITH ME』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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