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- / ISBN・EAN: 9784897770345
感想・レビュー・書評
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マリー・ホール・エッツ作。ふなざきやすこ訳。
原題をそのまま訳すと、「言葉なしのおしゃべり」
もちろん、エッツの言葉によって語られるのだが、そのテーマは、身ぶりによる言葉。絵の中にあるのは、無言。ただ身ぶりがたてる音だけが聞こえてきそうだ。
言葉なしの世界では、本書に登場する「ぼく」をはじめとする子どもたちと動物たちがまず、ひとつながりになる。例えば冒頭は、
「きみの もっているもの なにか おくれ」
ゾウは はなを のばします。
「おいで」
ぼくは イヌを よぶとき、トウッ トウッ したを ならして ひざを たたく だけです。
今度は、子どもたちどうしのやりとり。「にいさん」と「ねえさん」がひもにしがみついて引っ張りあっている。
「けんか するときも ことばを つかわないで できます」
こうして言葉を引き算してみると、しだいに、いろんな感覚が色づいてくる。花の匂い、鳥の声、肌寒さ、風にとんでいくしゃぼん玉……
かあさんの言葉による小言を聞きたくなければ、耳をふさげばいい。ボールを投げてほしければ両手を上げればいい。とぼけるためには肩をすくめて手を広げるだけ。
最後のページがさすが。
つい声を出して呼びかけたくなる瞬間が描かれる。
「さようなら」と「ぼく」がじっさい言ったのかどうかはわからないけれど、去って行く友達にもう声はとどかない。ぼくが手を振り続けていることも、背を向けている友達には見えない。
「きみは ふりかえって 手を ふってくれるかしら。
ぼくは 手を ふります、いつまでも。」
こういう、言葉さえあれば伝えられる場面でだって、言葉のいらない瞬間というのが、たしかにある。詳細をみるコメント0件をすべて表示