- Amazon.co.jp ・本 (130ページ)
- / ISBN・EAN: 9784898060605
作品紹介・あらすじ
本書は、国芳らを主とした冒険劇画、豊国、国貞、北斎らの幽霊怪奇芝居絵、『平家物語』にみる妖怪性、芳年狂気の世界ともいうべき血みどろ残酷絵、ホラー小説『三国妖婦伝』の嗜虐性、くりから紋もん文身絵、奇矯の画家・暁斎の狂画の世界に分類した。まさに、劇画のルーツ。時代が生んだ魔界の世界が展開するのである。
感想・レビュー・書評
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著者の中右瑛氏は洋画家で自身では抽象画を描くが浮世絵コレクターでもある。数年前から「お化け」にとりつかれ、「お化け浮世絵」を集め始めた。「お化け浮世絵」は昔懐かしい紙芝居のような面白さがある江戸の劇画だという。
「魑魅魍魎の世界」とは魔界、霊界のことで幽霊、妖怪が主人公。この本では、
○国芳らを主とした冒険劇画
○豊国、国貞、北斎らの幽霊怪奇芝居絵
○「平家物語」にみる妖怪性
○芳年狂気の世界ともいうべき血みどろ残酷絵
○ホラー小説「三国妖婦伝」の嗜虐性
○くりから紋もん文身絵
○奇矯の画家・暁斎の狂画の世界 に分類して紹介
月岡芳年は32点、国芳は32点、北斎は7点紹介。
○芳年狂気の世界ともいうべき血みどろ残酷絵では、「英名二十八衆句」から稲田九蔵新助 血の逆さずりの図。「奥州安達がはらひとつ家の図」で血はないが妊婦逆さずりの図。「魁題百撰相」で佐久間大学が生首をかかげている図。「白井権八」が首に刀の刺さった図。がカラーで紹介されている。単品だけみると確かに残虐性が目に付くが、「魁題百撰相」では上野の彰義隊の戦いを模したものだ、ということを知れば、その奥に歴史の奔流に呑まれる若い命の無念が見える気がする。
表紙は歌川国芳「相馬の古内裏・・」
平将門が藤原秀郷にコメカミを射抜かれて果てたあと、子の滝夜叉姫は父の仇を討つため、将門の本拠地の相馬の御所で機を狙った。図は滝夜叉姫が操る大髑髏が、朝廷側に撲滅を命じられた豪傑大宅太郎光圀を襲うところ。・・が結局滝夜叉姫は負け滅ぶ。
著者:中右瑛(なかうえい)1934年生.
洋画家・行動美術協会会員 浮世絵コレクター
1987.8.10発行 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ページ数こそ少ないが紹介されている作品が素晴らしく、眺めているだけで時間が過ぎていく。
各章のタイトルとあらすじ
第一章 冒険ロマン・妖怪とヒーロー
源頼光の酒呑童子討伐から、茨木童子の戻り橋や復讐劇、戸隠山の紅葉。浅茅が宿、滝夜叉姫の妖術。
日本の昔話や古典が好きならどこかで見聞きしたことがあるような作品の一場面が描かれている。
第二章 ブラックユーモア・幽霊と妖術芝居
四谷階段や皿屋敷、牡丹灯籠。児雷也豪傑物語。
ホラー好きなら日本の三大怪談を知らぬものはモグリである。皿屋敷のお菊の首が皿になっているというのがシュールだった。
第三章 平家物語に登場する怨念
日本三大怨霊の崇徳院や平清盛の幻覚、鵺退治。「頼豪阿闍梨、大鼠と化す」という話は知らなかったので面白かった。
第四章 血みどろバイオレンス・殺しの美学
英名二十八衆句・魁題百撰相。
昭和に書かれた丸尾末広や花輪和一による「無惨絵」にインスピレーションを与えたであろう月岡芳年(大蘇芳年)の作品が解説有りで見られたのはかなり良かった。
第五章 嗜虐趣味・サディズム
「三国妖狐伝」より妲己の振る舞いについて
第六章 裸身に咲くアダ花・刺青
水滸伝と刺青の流行
第七章 百鬼夜行・地獄極楽・寓意の狂画
河鍋暁斎の風刺画
個人的には怪談をモチーフにした第二章や、無惨絵に繋がる第四章を熟読したが、全体を通してとても興味深く面白い作品が多かった。
こういった専門書は普段あまり手に取ることがないが、創作のネタ探しや、知識を深めるという観点からは
大変に有意義な本だったと思う。
月岡芳年の知らない作品がまだまだあることがわかったので、今後、芳年の専門書があれば見ていきたいと思う。