風音: The crying wind

著者 :
  • リトル・モア
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本棚登録 : 72
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784898151150

作品紹介・あらすじ

初恋の人の記憶を辿る旅を続ける老婦人。夫の暴力から逃れて、沖縄へ舞い戻ってきた和江と息子・マサシ。新たな生き方を求めて動き出そうとする人々。戦争の傷跡をなでるように、それぞれの心に風音が鳴り響く。風の音が聴こえますか、人には魂があることを信じますか。芥川賞作家・目取真俊、初の長篇小説。

感想・レビュー・書評

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  • 感想
    沖縄戦を知らない僕ら。時間空間共に隔てている。戦争は教科書で読むもの。異常事態。そうではない。生活の隣に存在し確かに息づいている。

  • 義理の父親の暴力から逃れるため、母の故郷である沖縄に母と越してきたマサシ。
    近所に住む2つ年上のアキラ達と一緒に釣った魚を、風葬場にある骸骨のそばに置いた。

    アキラは祖父・清吉と二人暮らし。
    誰も知らない事だが、風葬場に遺体を運んだのは、当時少年だった清吉と父だった。
    遺体は骸骨となり、頭部に空いた穴を風が通るときに鳴る音は、周辺の住民の心に触れてはいけない大切なものとなっていた。

    しかしある時からその音が聞こえなくなり、ちょうどそのころ本州から、初恋の人の最期の場所を探し訪ねてきた老婦人があったことから、彼女が禁忌に触れたのではないかと噂が立つ。
    沖縄の人の、本州の人への偏見・嫌悪。

    沖縄戦が残した傷が、まだ沖縄には癒えることなく残されている。
    当時を知る人たちが敢えて語りたがらないこと、忘れたいこと。
    そのまま風化させていいのか。
    語り継ぐには残された時間はあまりに短い。

    しかし、当時を知らず、今、偏見もなく付き合える子どもたち。
    沖縄の未来を作るのは、この子どもたちなのだ。

    そんなことを、静かに語る本作。
    かすかな風と熱を傍らに感じながら読んだ。

  • 2018/4/23

  • 沖縄の作家・目取真俊さんを知ったのは昨年だった。
    水滴を読んだと思う。
    今回はリトル・モア版の「風音」をいっきに読んだ。
    カバーデザインの印象はさわやかだけれども、
    読んでいくうちに、この作家独特のものを感じる。
    沖縄を舞台に様々な人々が行き交う。
    重い。
    想い。

  • 装丁とタイトルに惹かれて、
    図書館で借りました。

    1985年に発表されたんですね。
    私の生まれ年だあ。



    たくさんの記憶が残る沖縄、

    内縁の夫の暴力に悩む親子、
    戦争で散った好きな人の消息を求める老婦人、
    残された海人、

    特攻隊員の白骨の
    頭蓋骨は頭を撃ち抜かれている。
    その穴に風が吹き込むと
    音が鳴る。

    風葬場の御頭から
    鳴る風音を
    真ん中に物語は進んでいきます。

    仕事帰りの疲れた頭に
    最初は登場人物がポコポコ出てきて、
    読むのに時間がかかりましたが。苦笑


    胸が苦しくなる話。


    途中からは、
    痛くて苦しくて仕方がありませんでした。


    「あの時代、胸中の想いを口にすることなく、
     多くの若者たちが死んでいった。」

    「貴方が此の手紙を読む頃には、
     沖縄へ出撃していると思います。
     御國の盾として己の務めを果たし、
     貴方と家族を護るつもりです。」

    戦争を生きた人たちはどんな思いを抱えていたんだろう。

    考えると、
    とても苦しくなります。


    だけど、
    終わり方がとってもやり切れません。

    綺麗な描写だけど、残酷です。


    どうして幸せになれないんだろう。
    みんな必死なだけなのに。
    やり切れません。
    沖縄の舞台がとても綺麗なだけに、
    余計そう感じました。

    風音が吹くとき、
    泣いてるのか歌っているのか。

    いつか聞きたい魂の音です。

  • オリジナルにはちと劣るが、好き

  • なんでこんなふうにしちゃったんだろう。
    『水滴』の中に入っていた短編の「風音」の方がずっとよかった。
    とても安易でわかりやすい物語になってしまったことが作品の魅力をそいでいると思う。

  • 初恋の人の記憶を辿る旅を続ける老婦人。夫の暴力から逃れて、沖縄へ舞い戻ってきた和江と息子・マサシ。新たな生き方を求めて動き出そうとする人々。戦争の傷跡をなでるように、それぞれの心に風音が鳴り響く。風の音が聴こえますか、人には魂があることを信じますか。芥川賞作家・目取真俊、初の長篇小説。

  • もう一冊、沖縄の本を。<br>
    20年ほど前、沖縄の新聞で連載されていたらしい。本土との関係、アメリカのこと、集落のこと、歴史のこと・・・複雑な事情のど真ん中にある現実を日々生きているからだろうか。沖縄の人には、言いたいことがはっきりとある。文章からそれが伝わってくる。<br>
    普段あまり本を読んで泣かない(泣くような本を読まない)のに、知らぬ間に泣いていた。

  • 映画の脚本を基に加筆されたものだそうだが、じくりと読み応えのある作品だった。生と死と魂と、深い感動が残った。

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著者プロフィール

1960年、沖縄県今帰仁村生まれ。琉球大学法文学部卒。
1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。1986年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。1997年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞。
著書:(小説)『目取真俊短篇小説選集』全3巻〔第1巻『魚群記』、第2巻『赤い椰子の葉』、第3巻『面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)』〕、『眼の奥の森』、『虹の鳥』、『平和通りと名付けられた街を歩いて』(以上、影書房)、『風音』(リトルモア)、『群蝶の木』、『魂込め』(以上、朝日新聞社)、『水滴』(文藝春秋)ほか。
(評論集)『ヤンバルの深き森と海より』(影書房)、『沖縄「戦後」ゼロ年』(日本放送出版協会)、『沖縄/地を読む 時を見る』、『沖縄/草の声・根の意志』(以上、世織書房)ほか。
(共著)『沖縄と国家』(角川新書、辺見庸との共著)ほか。
ブログ「海鳴りの島から」:http://blog.goo.ne.jp/awamori777

「2023年 『魂魄の道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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