星の子

制作 : 芳賀 八恵 
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  • Amazon.co.jp ・本 (131ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784901675116

作品紹介・あらすじ

日々の暮らしの中に星の瞬きを感じて。星をテーマに綴った小さなアートブック。

感想・レビュー・書評

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  • 芳賀八恵さんの個人出版社、「8plus」の8周年記念刊行本(2008年)は、タイトルの通り、私も、あなたも、周囲に存在する全てのものも、地球にある全てのものも、元は星から生まれたであろう『星の子』をテーマにした、アートブックとなっております。

    『およそ137億年前、ビッグバンによって始まった宇宙。そこには水素とヘリウムという元素しか存在しなかったそうだ。生命に必要な炭素や酸素、窒素などその他の元素は、星の中の核融合反応でつくられ、それらは超新星爆発によって宇宙にばらまかれ、新たな星の材料となる。これが繰り返され、元素は増えていく。こういった元素を材料として、やがて地球がつくられ、生命が生まれたという。元を辿れば、私たちの身体をつくる物質も、身の回りの物質も、昔、星の中でつくられたものなのだ。』(以上、「星の子」本文より)

    私たちの身体は、星でできているらしい。
    何となく漠然とした知識として、そうなるのだろうと思ってはいたが、私の場合、こうした事を真面目に考えると何故か怖くなり、「そもそも最初に人が誕生した事に何かしらの意味があるのか?」とか、「それならば、何の前触れも無く、いきなり私の存在が消えてしまったりするのだろうか?」などといった、普段当たり前に暮らしている日常風景が、急によそよそしく見えるような錯覚に陥ってしまう、そんな恐怖を感じるのだ。

    しかし、それとは別に、奇妙な妄想も持っており、もし可能であるならば、その最初の人類が誕生するちょっと前に定点カメラを設置して、その過程を見てみたい気持ちにもさせられて、改めて考えると、それは、なんて奇跡的なのだろうとも思う。

    話を戻すと、本書は主に、そんな星の子たちを撮った様々なモノクロ写真で構成されており、山、地層(城ヶ島)、雲、波など、自然はもとより、他にも、葉脈、螺旋、御白石、楽譜(きらきら星変奏曲)、川崎工業地帯、フラクタル図形と、難しいものも登場する中に、ふと現れる、人間の柔らかそうな握りこぶし(おそらく子どもの)には、ハッとさせられるものがある。

    中でも、興味深かったのは、プトレマイオス理論を適用した時に地球から見えるはずの惑星軌道(水星、金星、火星、木星、土星)で、この規則性のある円形の図の美しさは、まるでアートのようで、これまた奇跡的に思われる。

    それともう一つ、微惑星が暴走的に成長して原始惑星が形成されることを検証したシミュレーション画像は、パラフィン紙を用いており、最初の0年から40万年後までを透かして見る事で、少しずつ原始惑星となっていく過程を比較できて面白い。

    そして、本書の中程にある「星の図」は、1月から12月まで、12ヵ月全ての星座を紹介しており、紺色を背景に銀で描かれた星たちは、まるで夜空を見上げているような感覚で、ちゃんと、1等星以上から5等星以下に分けてあり、他にも、変光星や星雲・星団も描いてあり、文庫より少し大きいくらいのサイズの本書片手に、実際の星空と照らし合わせながら、眺めてみるのも楽しそうです。

    更に、その次の絵本「星の木」は、木も星から生まれたのであれば、その木から星が生まれてくる事もあり得るのではと思わせる、夢のある展開である事に加え、やがて、木になった星達が空に還っていく光景には、巡り巡って元へと戻ってゆく、そんな宇宙に於ける永劫的循環型の可能性を描いていたようにも思われて、希望の物語であったのが印象的。


    以上、様々な形で、私に星の子であることを認識させてくれた本書であったが、やはりロマンというよりは、どこまでも果ての無いところに立っているかのような、もの寂しさを感じてしまった印象が強かった事と、このサイズでのモノクロ写真は少し見辛くて、星から誕生したありのままを掲載したいのであれば、カラーでも良かったのではないかとも思いました。

    しかし、そんな途方もない壮大な時に満たされた、宇宙に於いて、ほんの一瞬にもならない僅かな瞬間を生きているのであろう、人生の大切さは実感し、芳賀さんの言葉にもあった、『瞬きのような人生の中で、私のつくった小さな本が、どこかの誰かの心に、ほんの少しでも響いて余韻を残せたなら幸せだ』には、たとえ識別できないくらいの僅かな閃光であろうとも、その輝きは確かに誰かが見て感じ取ってくれる、そんな勇気を頂いた気持ちにさせられたし、『なぜ本をつくるのかというと、それは自分に必要なことだから』には、改めて私がブクログをやっている理由に気付かせてくれたようでもあり、星から生まれた私に必要なことが芽生えるという、この奇妙で奇跡的な嬉しさはいったい何だろうと考えることは、きっと楽しいのかもしれません。

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