前衛いけばなの時代: 複眼的美術論 (美学叢書 1)

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  • 美学出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784902078022

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  • なんとなく「前衛いけばな」とは戦後の産物のように思っていたが、この書によると祖は1933年の「新興いけばな宣言」に求められるという。重森三玲が呼びかけ、宣言を発し、「日本新興いけばな協会」設立を目指したが、結局実現しなかった。
    重森三玲は庭園史研究の重鎮であり造園家 でありいけばな研究家である。そして予定メンバー6人の中に若き日の勅使河原蒼風も入っていた。宣言草稿には、「懐古的感情を斥ける」「型式的固定を斥ける」「道義的観念を斥ける」「植物学的制限を斥ける」「花器を自由に駆使する」などの文言が入っていた。全体としてまさに革新的であり、「植物学的制限の撤廃」、「花器の自由」は前衛いけばなの本質となっていった。
    新興協会は実現しなかったが重森三玲は1949年にいけばな批評誌「いけばな芸術」を発刊する。
    ・・・・・と続くのだが、著者はこれらの古典文献から当時の雑誌、週刊誌、いけばな草月などを丹念に読み込んで歴史を追ってゆく。きっちりと腰の据わった著述である。
    そして関心の焦点を蒼風の彫刻家としての活動、海外での評価に当てていく。蒼風は1961年フランス・レジオン・ドヌール勲章受賞を始めとして66年には米・二十世紀博に「世界の彫刻家20人展」に招待される。三頭谷(みずたに)はこれらを蒼風に対し積極的に評価するが、国内のいけばな界はその頃から前衛の時代ではなくなっていくのである。
    三頭谷(みずたに)は美術雑誌記者のジャーナリストでありこれまでにまとまった著作はないが、この著をもって美術評論家の一角を占めたのではないか。
    それにしても小原豊雲、安達潮花などのその後を書かなかったのは逃げである。華道界に深入りすると本の売れ行きに障ると思ったか。

  • はじめに
    第1章 アヴァンギャルドの季節
    第2章 小原豊雲のプリミティヴィズム
    第3章 いけばなの変革とジャンル横断
    第4章 勅使河原蒼風・戦前
    第5章 勅使河原蒼風・戦後
    第6章 前衛いけばなの挫折
    対談 前衛いけばなの時代[下田尚利×三頭谷鷹史]
    対談 この終わりののちにも[北澤憲昭×三頭谷鷹史]
    あとがき
    (目次より)

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