海岸線は語る 東日本大震災のあとで

著者 :
  • ミシマ社
3.60
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本棚登録 : 36
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784903908342

作品紹介・あらすじ

「海やまのあひだ」に住まう日本人が、真に取り戻すべきは何か?
『海岸線の歴史』(2009年刊)で、日本のアイデンティティは海岸線にあると記した著者。
東日本大震災によって、海岸線が動き変化した以上、
もう一度、各地の海岸線の特徴を見ることなしに復興はない。
宮城、岩手、福島、北関東。それぞれに異なる海岸線、そこにあった暮らし、
そしてこれからの復興……。
3・11当時、内閣官房参与だった著者が、東北3県を歩きなおし、
震災後の「日本人の生きるかたち」を問い直した、これからの日本文明論。

感想・レビュー・書評

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  • 3.11からちょうど一年後に世に出されたこの本は、震災後の海岸沿いの被災地を筆者が実際に訪ねて歩き、「海岸線」の視点から被災地を見つめ、これからの復興のビジョンを提言しています。日本は島国です。そんなの言われなくても知ってるよと、多くの人は思うでしょう。私もその一人でした。「島国」であることを頭の中では知っていても、街に住んでいれば実感として日本は島国だと感じることは少ないはずです。高い高層ビルやアスファルトで覆われた道路の中で生きる私たちは、段々と海の怖さ、自然への畏怖を欠落させてしまったのだと思います。それが大きな結果となってフクシマの事故にも繋がったと言えるのではないでしょうか。人間が作り出したものは、私たちの暮らしを進歩させてきました。だけど、やっぱり人間は自然には勝てません。「万里の長城」といわれるような堤防をつくっても、大きな自然の力には太刀打ちできませんでした。この事実を私たちはしっかりと胸に刻んでおく必要があると、この本を読んで思いました。是非、みなさんにも忘れてしまった感覚をこの本を読んで、取り戻していただきたいと思います。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「みなさんにも忘れてしまった感覚を」
      大事な教訓も、月日が経つと忘れてしまうでしょうね。忘れないタメに思いを変わり果てた海岸へ向けてみたいと...
      「みなさんにも忘れてしまった感覚を」
      大事な教訓も、月日が経つと忘れてしまうでしょうね。忘れないタメに思いを変わり果てた海岸へ向けてみたいと思います。。。
      2012/09/19
  • 人工物に頼りすぎるなという復興へのスタンスには共感できるが、見て回ったという現状の記述に疑問多し。宮古や石巻では今でも海辺の市街地では1m近く浸水している…とか、石巻の日和山から港(?)を見ると防波堤が壊れて瓦礫の山が放置されている(それは瓦礫の仮置き場なのですが…)とか。他の地域の記述も鵜呑みにしてはいけないなと思いながら読了。

  • 120

    「ちぎりきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 浪こさじとは」p64

    人工構築物で自然災害を防ぐことはできないという前提 p128

  • 自然を征服し、制御しようとしてきた西洋近代の合理主義の限界が露呈した姿といえるだろう 貞観の大地震など歴史に学ぶことが大切 東日本それぞれの地域の風土と産業と文化に見合った復興構想を考えねばならない その場合、いわゆるいまある「ふるさと」の形を出来るだけ再現できる場所を見つけるべきである

  • 3.11から一年以上たつが、やっと自分の中で震災の被害状況をしっかり知りたいと思うようになった。自分に時間ができたからと進まない復興へや原発問題へのいらだちがある。被災地にはまだ足をはこんでいないが、この本のおかげで震災の大まかな被害状況を知ることができた。

  • 「海やまのあいだ」「現場を知らない学者」「人工構築物では自然の猛威は押さえこめない」がキーワード。
    前著「海岸線の歴史」と合わせてのクラフト・エヴィング商會の装幀(多分)は秀逸。

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著者プロフィール

松本健一(まつもと・けんいち)
1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。
現在、麗澤大学教授。評論・評伝・小説など多方面で活躍中。
2011年3月11日におきた東日本大震災のときの内閣官房参与として、
『復興ビジョン(案)』を菅直人首相(当時)に提出。
著書に『白旗伝説』『北一輝論』(以上、講談社学術文庫)、
『近代アジア精神史の試み』(岩波現代文庫、アジア太平洋賞受賞)、
『開国・維新』(中央公論新社)、『砂の文明・石の文明・泥の文明』(PHP新書)、
『評伝 北一輝』(全五巻、岩波書店、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞)、
『畏るべき昭和天皇』(新潮文庫)、『天国はいらない ふるさとがほしい』(人間と歴史社)、
『海岸線の歴史』(ミシマ社)など多数ある。

「2012年 『海岸線は語る 東日本大震災のあとで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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