あわいの力 「心の時代」の次を生きる (シリーズ 22世紀を生きる)
- ミシマ社 (2013年12月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784903908496
作品紹介・あらすじ
古代人には「心」がなかった――
「心」が生まれて3000年。
「心の時代」と言われる現代、自殺や精神疾患の増加が象徴的に示すように、
人類は自らがつくり出した「心」の副作用に押し潰されようとしている。
そろそろ、「心」に代わる何かが生まれてくるのではないか?
シュメール語、甲骨文字、聖書、短歌、俳句・・・。
古今東西の「身体知」を知りつくす能楽師・安田登氏。
「心」の文字の起源から次の時代のヒントを探る。
あっちとこっちをつなぐ不思議な力!
異界と現実の間(あわい)の存在(能におけるワキ方)であり、
古代文字の研究も重ねる著者が、まったく新しい時代の姿を求め、
「あわい」の世界に飛び込んだ・・・!
可能性は、「日本人の身体」にあり!?
シリーズ22世紀を生きる第2弾!!
感想・レビュー・書評
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心が病む現代の心との付き合い方を心がなかったとされる起源前の文字や能の「ワキ」のあり方から紐解いたお話で面白い
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なんとも面白かった。
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異界と現実界をつなぐ存在を能では、あわいといい、人は、身体という外と中をつなぐ、あわいを持って生きているという。
文字が生まれたことで時間という概念が生まれ、心が生まれたという。
心は三層構造で、表層がこころ、その下がおもひ(こひ)、一番下のそうは心(しん)という言葉や文字を通さず、相手に伝わる何かを心(しん)というのだそう。
甲骨文字、古代ギリシャ語、シュメール語、古代メソポタミア神話、日本の古典、ロルフィングなど幅広い著者の知識がうかがえるが、能に始まり、能に終わる構成で、筆者は能を通じて世界を見ていることがよくわかる。
筆者の生い立ちも交え、筆者の興味が詰め込まれ、興味深く読み終えられた。 -
記録
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能を起点に、社会や人間を分析する安田さんの視点はいつも面白い。本書では「あわい(ものとものが重なる接線、境界)」をキーワードに、心やメンタルについて語っている。興味深かったのは、「見る」と「味わう」は自分の意志で閉じることができるが「聞く」と「臭う」は閉じられない。戦国時代から江戸時代に武器が退化した理由。「初」とは、衣を切ることから、つまり変化し続けなければならない。先人に認められないのは問題ではなく、先人がわからないようなことを作り出すことが肝要。いやはや、勉強になりました。
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内蔵感覚をひらき、溶け合う環境に身を委ねる”あわい”の感覚とは?(あわいの力/安田登)
https://beyondthenexus.com/senseofawai/ -
「心」は文字を使うようになって生まれた。他書でも安田さんが述べてきた考えが、本書では特に丁寧に解説される。心に偏ってもダメ、身体に偏ってもダメ。だけど身体を動かすことを足がかりに心をチューニングすることはできる。白黒はっきりさせたがる西洋文化を基盤とした現代の心の時代にあって、一見無意味なあわい(間)の力が求められるのではという安田さん。だからこそ明確な答えは本書にはない。あわあわとした感覚が残る読後感。
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音楽やダンスなど舞台に関わる上で、頷いたり、為になるような事が書かれていた。
自分の身体に問いかけながら、時々思い出したい本。 -
能のワキ方が書いた世界のとらえかたの本。
ワキ方が異界と現実の間(あわい)であるように、かつて、人は外界と自己の内面のやりとりを心ではなく身体で行なってきたことを文字やことばの成り立ちから考える。
時間や空間の「境界をぼかす」効用がわかった。