- Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
- / ISBN・EAN: 9784904575918
感想・レビュー・書評
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著者は、民主、人権といった「シリア革命」の理念を讃え反体制派や「ホワイト・ヘルメット」を支援、シリア政府と露の攻撃で住民が犠牲に、という欧米の一般的な見方に懐疑的。内戦の各当事者を突き放して観察する姿勢だ。
文章は難解ではないが、内戦の構図は実に複雑だ。「永遠の友も永遠の敵もいない、あるのは永遠の国益のみ」という英パーマストンの言葉を思い出した。
米とシリア政府は敵対。政府対反体制派。米など人権陣営と、露など主権陣営がそれぞれ国外から介入。これが基本的構図なのは分かる。しかし、イスラム国のバグダーディー殺害に際してはトランプ大統領は露やシリア政府に謝意を示しているのだ。
反体制派の中でも「穏健な反体制派」とイスラム過激派は別で、人権陣営が支援するのは当然前者のみ。クルド民族主義勢力も米の支援を受けるが他の反体制派とは別で、人権陣営のはずのトルコはこれに反目。人権陣営、少なくとも米は何が最終目的だったのか不明で、少なくとも政府転覆まで考えていたわけではなさそうだ。
本書の後半では米の登場が減少するのに気づく。そして「2020年3月5日のロシアとトルコの停戦合意以降、シリア国内で大規模な軍事衝突の発生はなくなった」とある。人権陣営の米はどこに行ったのかという感じだ。また露とトルコは絶対的に対立していたわけではなく、トランプ政権下で引き気味の米の排斥で、イランも含め利害が一致したというのが著者の分析だ。
大規模な戦闘の収束に伴い、報道の量はかなり減少したように思う。ただ、問題が解決したわけではなく、書名どおりの膠着状態であることが分かる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・6F開架:312.27A/A58k//K