甘美な牢獄 (シリーズ日本語の醍醐味)

著者 :
  • 烏有書林
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904596135

作品紹介・あらすじ

「人間である最後の夜に、わたしはこの手紙を書きます。」(「甘美な牢獄」より)
やむにやまれず暗い官能の洞窟へおちこんでいった者たちの、圧倒的なエロスの世界が、いま甦る。稀代の物語作家が描く「この世の地獄」は、煌びやかで残酷な夢想のユートピアであった。

 芥川賞を受賞して華々しく文壇に登場した宇能鴻一郎は、1960年代から70年代前半にかけて、濃密な文体で性の深淵をえぐる作品集を40冊余り刊行した。しかし先鋭的すぎたためか当時の文壇ではほとんど無視され、著作も軒並み絶版になっていった。それから半世紀以上を経て、いまようやく宇能文学への関心が高まっている。恐怖とエロティシズムによって性の根源に迫った真正の文学世界は、いま読んでも比類なく新鮮で、麻薬的・原初的な文章の力に圧倒されるだろう。むしろ現代でこそ受け入れられる性質の作品群と思われる。
 「この世の地獄を描いて宇能氏の右に出るものはあるまい」と筒井康隆に絶讃された「甘美な牢獄」、思春期の青い性が清冽な「光と風と恋」、満洲で世界の汚辱にあらがう少年の復讐譚「野性の蛇」、谷崎や乱歩の後継となるユートピア奇談「殉教未遂」「狂宴」「神々しき娼婦」、不良少年の優しさに満ちた「雪女の贈り物」「官能旅行」の全8篇を収録。

※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。

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著者プロフィール

宇能鴻一郎(うの こういちろう)
1934年、北海道札幌市生まれ。本名鵜野広澄。家族4人で、東京、山口、福岡、満洲国(現中国東北部)撫順、長野県坂城と移り住み、満洲国奉天にて終戦を迎える。福岡県立修猷館高校から東京大学教養学部文科二類に入学。修士課程在学中の1961年、仲間たちと創刊した同人誌『螺旋』掲載の「光りの飢え」が『文學界』に転載され、これが芥川賞候補となる。次作の「鯨神」が翌年1月に芥川賞を受賞。以後おもに性を主題として新しい文学を切り開くが、文壇では正当に評価されず、1971年から徐々に女性告白体の官能小説に軸足を移した。歴史小説、ハードボイルド、推理小説でも独自の世界を築いている。
 主な著書に『密戯・不倫』『楽欲(ぎょうよく)』『痺楽』『肉の壁』『黄金姦鬼』『お菓子の家の魔女』『切腹願望』『金髪』『斬殺集団』などがある。

「2022年 『甘美な牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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