レンブラントの帽子

  • 夏葉社
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感想 : 50
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  • Amazon.co.jp ・本 (154ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904816004

感想・レビュー・書評

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  • 《目次》
    「レンブラントの帽子」
    「引き出しの中の人間」
    「わが子に、殺される」

  • 表題作
    他人から見れば滑稽なほど踏み込んだ脳内会議、逡巡をこれでもかと読まされる。普遍的なバージョンの滝口悠生(?)他人に対する想像力、想像する努力、についての教科書のようでもある。

    『引き出しの中の人間』
    旅行先で「当事者」になり得るかもしれない緊張感。(主に)ふたりの人間の熱いやりとりが美しかった。物語の終わらせ方がとっても良いと思った。
    イデオロギーやソ連の歴史に明るければ、感じることは倍くらいになりそう。

    あとは、ぜひ手に取ってカバーをめくってみてほしいです。

  • 表題作「レンブラントの帽子」を含む短編2編、中編1編を収める。

    読み終えてから今まで、いいようのないもの哀しさから抜け出すことができない。
    涙がこぼれてしまうような「悲しさ」ではない。読んでいてつらくなるような「悲惨さ」でもない。短編『わが子に、殺される』以外はどちらかというと前向きな終わり方と言ってもいいほどだ。それなのに、ずっともの哀しい思いにとらわれている。

    表題作『レンブラントの帽子』は、美術学校の美術史教師アービンが同僚の彫刻家ルービンに何気なく言った一言からぎくしゃくしてしまう話。自分の言動の何がルービンを傷つけたのか、アーキンは考えを巡らせる。その考えが正しかったのかどうかははっきりと明かされないが、アーキンが謝った後、ルービンが声をたてずに泣く様子に、心を締め付けられるような哀しさを感じた。

    中編『引き出しの中の人間』は、サスペンスのような味わいのある小説。冷戦下のソ連に旅行に来たアメリカ系ユダヤ人のハーヴィッツは、タクシーの運転手レヴィタンスキーから、自分の書いた小説を国外に持ち出して出版してほしいと頼まれる。面倒なことに巻き込まれたくないハーヴィッツと、狂気をはらんだレヴィタンスキー。ハーヴィッツの心揺れ動く様子がリアルで一気に読み終えたが、レヴィタンスキーの心の内を思うと複雑な気持ちになる。

    最後の短編『わが子に、殺される』は一番印象に残った作品。
    引きこもりの息子を見守るというよりストーカーのようについてまわる父親。
    「この世が恐ろしい」と思う息子に対し、彼は「人生なんて決して楽なもんじゃないんだよ。」「生きるほうが、まだマシなんだよ。」と語りかける。
    父親の頭から風にさらわれた帽子が海辺をころころと転がる。その様子を大きな海に足をつけて見ている息子。まるで映画のワンシーンのように情景が頭の中に浮かんでくる。そしてその風景はたまらなくもの哀しい。

    くせになりそうな作家である。

  • 和田誠さんのイラストはやっぱりよい。

    内容はうーん……海外小説はわたしには合わないんだと理解した。もう海外小説を読むことはないでしょう。

  • 『古くてあたらしい仕事』(島田潤一郎)で紹介されていた夏葉社の第1冊目の本『レンブラントの帽子』(バーナード・マラマッド)。

    これを何故復刊させたかのエピソードをメモし忘れた事はさておき…

    思ったのは以下3点!

    ❶『レンブラントの帽子』ケンカした2人のスレ違いに「モヤッと」からの「ちょいスカッと」。

    【仲違いなんて互いに「ごめんね」と一言言えばすぐ終わるのに、意固地になって言わなくて長期間モヤモヤっていう話】を読んで、

    「他人目線で見ると以上がわかるんだけど、

    いざ当事者になって感情的になると「何でアイツに謝んなきゃいけないワケェ!?」ってなってたりするわ…」と苦笑いしました。

    物語だとこんな風に気付けるから面白いし、今回の場合ちょっと恥ずかしい。

    ❷ 『引出しの中の人間』国に目をつけられる恐怖

    ロシアが舞台の話で、社会主義・民主主義・資本主義など国の構造を意識しました。

    これを読んで、「私は【国に目をつけられる恐怖】をニュースやフィクション映画で第三者目線で知った事があるだけ」っていう事がだんだん頭に浮かんできて、

    怖くなった。

    ただ今は彼らだけでなく、個人がスマホ持ってたり、監視カメラがあらゆるところにある。

    無防備だ…。

    ❸『わが子に、殺される』親子の悩み

    読んだ後は何とも言えず沈黙した。

    ーーーーーーーーーーーーーーーー

    …といろいろ考えました。

    【普段目にする事がない事orある事】、【知ってるけどあんまり意識してない事】が本には詰まってるから、

    やめられないわ。

  • 1975年に刊行された短編集から代表的な3編を抜粋して、夏葉社さんが復刊したものです。自分が生まれる前に書かれた作品ですが、素敵な作品だなと思いました。どの時代も悩んでいることの本質は変わらないのかもしれません。
    私の知識不足と翻訳との相性からか、少し状況が分かりにくい部分はありましたが、物語は楽しめました。個人的には、冷戦期のソ連が舞台となった「引き出しの中の人間」がおもしろかったです。当時の状況をあれこれ想像しました。

  • うん、、良さがあまりよくわからなかった

  • 絶版になっての復活本。貴重な本。

  • 2022年、こんにちは。1冊目。
    帯のとおり、しみわたる3つの物語。
    ああ、読んでよかった、と思う本は、なにがよかったんだろうと、こうして感想メモみたいなものを書くときに、考える。で、言葉にするのは難しいなあ、といつも思う。が、今年も書いてみる。

    初めて出版された1973年から時を経て、2010年に、たったひとりの出版社として立ち上がった夏葉社さんから復刊された。和田誠さんの装丁で。もうこの時点で愛が詰まっている。この本を届けたい、という気持ちが溢れている。

    生々しく生きている人々が描かれていた。誰かとの出会いや触れ合いによって気持ちが揺れ、時間が流れ、真摯に相手を想う生き様みたいなものが。人との付き合いはつらくてモヤモヤして、いろんな駆け引きがあって、めんどくさいこともある。だけど、それが人との付き合いというものであって、それでもかすかにでも通じ合うものがあれば、それが生きていく糧になったりもする。

    そんなことを、時代も場所も超えた物語で感じることができたこの本は、とてもとても、良い本であった。大満足の2002年1冊目!

  • 多分だけど私の読解力と理解力が足りない。
    この作品の味わいというものを感じることが出来ずに淡白に終わってしまった。
    表題作の何気ない一言から仲違いし、何が悪かった?と自問自答しているところはすごく共感できた。
    『引き出しの中の人間』が1番面白く、分かりやすく読めた。ただよう緊張感、不穏感、不自由さが表現されていてよかった。作中作も全部良かった。一度で五度美味しい作品だった。
    最後のお話は父と思春期の息子の話、という印象だけで……。
    全部を通して読んだ直後の感想が「ん?わからん」だったので、力及ばずで悔しい限り。

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著者プロフィール

1914-1986。ユダヤ系ロシア移民の子としてニューヨークのブルックリンに生まれる。学校で教えながら小説を書き、1952年、長編『ナチュラル』でデビュー。その後『アシスタント』(57)『もうひとつの生活』(61)『フィクサー(修理屋)』(66)『フィデルマンの絵』(69)、『テナント』(71)、『ドゥービン氏の冬』(79)『コーンの孤島』(82)の8作の小説を書いた。また短編集に『魔法の樽』(58)『白痴が先』(63)『レンブラントの帽子』(74)の3冊があり読者は多い。

「2021年 『テナント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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