サンライト: 永井宏散文集

著者 :
  • 夏葉社
3.89
  • (2)
  • (4)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 104
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784904816332

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み

  • 山の人からお借りした本。


    葉山が舞台になっていたので実際に訪れてみると、
    本に書いてあるままの穏やかな空気が流れていた。



    「恋をし続けることが自分自身と対話するための有効な方法。恋をすることは永遠と繋がるひたつの方法なのだ。だから、恋をしよう、恋することを諦めず、恋の歌を歌い続けよう。」

    「人生は愛おしむためにある。どんな時代でも、どんな場所にいても、私たちは愛おしい人生を送ることができる。そうあっていいし、そうあるべきなのだ。
    永遠に繋がることを知れば、この限りある人生はもっともっと愛おしくなる。」

    付箋が貼られた箇所を読んで
    胸がじんわりあたたかくなった。

  • いわゆる「ていねいな暮らし」系の人のようなんだけど、ファッションでやっているわけではなく、内側から湧き出てくる必要によって自然と導かれていったという風で、文章や描かれる暮らしも心にすっと入ってくる。個性をはみ出しながら生きている人たち、雑貨、喫茶店、海、音楽の話。

    冒頭の「人間は、誰もが詩人で、個々、頭に描いた詩によって生きている。……身近なものを対象に、繰り返し繰り返し、日々、自分の眼差しを描くことで、きっと、いままで見過ごしてしまった多くのものが、自分の中に見えてくるはずで、それが、自分なりの生き方を証明していくことでもある。」
    というのが素敵だなと思った。
    自分の眼差しを描く、という姿勢をぎこちなくも気取らずに取ってみたところで、本の中に入っていける。人は誰もが表現できる、というこの人の信念が、6ページ目にしてすとんと了解された。

    一番好きな話は最初の「初めて書いたライナーノーツ」。人間の生き方は年を取っても変わらなくて、頭の中の埃をかぶった思い出が夕日を浴びて、チリがキラキラ輝き、より普遍的になる、というところ、エピソードとあいまってあまりにロマンティックで切ない。
    人の生き方は変わらないし、思い出がリフレインしてそのことに気が付くというの、ああ分かるなあと思うのだけど、私がそう思うのって苦しいときだったりする。でもこの描写の美しさ、眼差しのニュートラルさにはっとさせられてしまう。同じことを、この人は全然違うトーンで受け止めている。
    最後の解説で、「永井さんは『永遠』『愉快』のほかにも、『ロマンティック』や『恋』という言葉を好み、よく使った。……恋しつづけることが自分自身と対話するための有効な方法だと永井さんは知っていた。『恋をする』ことは、永遠とつながるひとつの方法なのだ。……人生は愛おしむためにある。どんな時代でも、どんな場所にいても、私たちは愛おしい人生を送ることができる。」とあって、ああ、そうか、と思った。
    恋をするような、愛おしむ温度、そこから生まれる眼差しが、そうさせているのだ。さらりとした文章の内奥にあるエネルギーが夕日をつくっている。そのためにこの人が必要としたのは、海辺の暮らし、人との緩いつながり、土の匂いだったのだ。そして、ねえあなたはどうですか、あなたの表現を教えて、ということを冒頭で問われていることが、よりはっきりと感じられる。
    瞬間の詩の連続、眼差しの蓄積。

  • わたしも永井さんと同じようなエリアに住んでいて、その前は都内の人が多い街に住んでいて、だからなのか、永井さんの考えにものすごくシンパシーを感じた。
    都会の息苦しさ、自然のすぐそばにある生活の気持ちよさ、人に対する考え方。
    この土地のいいところは、都内や横浜に出ようと思えばすぐに出られるけど、必要なければ自然に囲まれて、のんびり過ごせること。
    そーゆうこと、この土地に暮らしてる人とちゃんと話したことなかったから、同じように考えてる人がいたことがうれしい。

  • 雰囲気のある文章と人。

  • 2020/12/7 ★3.5

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

美術作家。1951年東京生まれ。1970年なかごろより写真、ビデオ、ドローイング、インスタレーションなどによる作品を発表。80年代は『BRUTUS』(マガジンハウス)などの編集に関わりながら作品を発表した。1992年、神奈川県の海辺の町に転居。92年から96年、葉山で生活に根ざしたアートを提唱する「サンライト・ギャラリー」を運営。99年には「サンライト・ラボ」を設立し雑誌『12 water stories magazine』を創刊(9号まで刊行)、2003年には「WINDCHIME BOOKS」を立ち上げ、詩集やエッセイ集を出版した。自分でも旺盛な創作をする一方で、各地でポエトリーリーディングの会やワークショップを開催、「誰にでも表現はできる」とたくさんの人を励まし続けた。ワークショップからはいくつものフリーペーパーや雑誌が生まれ、詩人、作家、写真家、フラワーアーティスト、音楽家、自らの表現として珈琲焙煎、古書店、雑貨店やカフェ、ギャラリーをはじめる人などが永井さんのもとから巣立ち、いまもさまざまな実験を続けている。
2011年4月12日に永眠、59歳だった。
2019年、『永井宏 散文集 サンライト』(夏葉社)、復刻版『マーキュリー・シティ』(ミルブックス)、2020年『愉快のしるし』、2022年『雲ができるまで』(信陽堂)が相次いで刊行され、リアルタイムでの活動を知らない新しい読者を獲得している。

「2023年 『夏みかんの午後』 で使われていた紹介文から引用しています。」

永井宏の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
くどうれいん
関口良雄
レイチェル・L....
若菜晃子
阿久津隆
天野祐吉
山下賢二
宇佐見りん
ミヒャエル・エン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×