- Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
- / ISBN・EAN: 9784905497196
感想・レビュー・書評
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私とは全く、置かれた環境が違う人だけれど、この人の考察のおかげで、どうして私が人の間でうまくやっていけないのかが分かった。
わたしも、そろそろ頭の中だけで繰り返してきた物語を表現できるようになってるはずだよ。 -
筆者は幼少期にナチスによる強制連行にあう。かろうじて生き残るも、トラウマに苦しみながら、大変な努力を重ねて精神分析医となる。
「憎むのは過去の囚人であり続けることだ」
過去のトラウマに悩まされる人は、自身のつらい過去を更新するために物語化を行うことがある。
記憶というのは事実の断片にそれぞれの意味を持たせているので、そこで語られる過去の出来事というのは事実とは異なる場合があるようだ。また、たびたび不平を口にする事もあるため、なかなか周囲の共感を得られない。
しかし、このような物語化は自己肯定のための行為で、暗い過去を希望のあるものへ更新するために必要なものだ。
周囲が「物語」を否定すると、行き場がなくなり、本心を心の底に沈めるしかない。そうなるとトラウマに悩まされる人は、憎しみを消すことができない。
へこたれない精神を養うには、このような過去の更新作業に粘り強く付き合う、伴走者が必要なのだと思う。
人間は過去を更新しながら生きている。
本書は家庭不和やいじめなど、過去のトラウマから解放されるために大いに役立つかもしれない。 -
2014年24冊目。
『夜と霧』にひけをとらない素晴らしい本だった。
精神科医でフランスにおけるトラウマ研究の権威である著者は、
少年時代にユダヤ人一斉検挙で逮捕され、収容所行きを危うく免れた経験を持つ。
トラウマを回避できるか否かは、記憶の断片を繋ぐ合わせ、
自らが絶望に陥らずに済む「物語」として紡ぐ能力によって左右されるという。
実際に、言語能力の高い人は視覚記憶に負けず、概してトラウマにかかりづらいそう。
“現在”を形作るのは“過去”の出来事だが、
“過去”に意味づけを行うのは“現在”だ。
価値ある意味づけを“過去”に対して行う活力を“現在”に与えるもの、
それは“未来”への希望なのではないか。
僕たちは、出来事は選べないことが多いが、解釈だけは最後まで持ち続けられる権利と誇りを持つ。
それを失わないヒントと勇気を、この本からもらった気がする。