いきている長屋 大阪市大モデルの構築

  • 大阪公立大学共同出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784907209032

感想・レビュー・書評

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  • 豊崎長屋は、大阪市北区の北部にあって、
    梅田や天六といった繁華街から適度に「近くて遠い」位置関係。
    私も仕事先があるため近くをよく通ります。
    安藤忠雄さんの事務所もすぐそこにあるエリアです。

    この本を、豊崎長屋における長屋のリニューアルやリノベーション記録だと思って読むと大間違い。豊崎長屋を通じて行った、「創造的な都市再生に向けた試み」であり、そこに「大阪市大モデル」が出来上がった、というもの。
    いや、ここであまり抽象的なことを書いても、分かりませんね。
    つまりは、建築的な分析だけでなく、豊崎長屋や地区の歴史、オーナーの経営方針や哲学、生き様、大阪における長屋での生活文化、などを調べ上げた上で、豊崎長屋をどのようにすれば持続可能な長屋スポットとしての街がつくれるか、それを大阪らしい都市再生のひとつとして展開できるか、といったようなことを追求した「壮大な社会実験」の記録本のように思えました。
    正直、私のような建築素人には決して簡単な本ではありませんでした。
    だから、あまり理解できていません。すいません。
    また、大判(開くとB4)の真っ白な紙に文字が印刷されているため、
    飛蚊症が進む私には少々読みづらくもありました(^_^;)。

    オーナー、住む人、建築家、施工する職人さんたち、市大の教員、学生などが全員参加、全員学ぶというような場になったようです。この再生を通じて市大の学生にとってどのような教育の場にしたか、といったようなことも書かれていて、とても印象的でした。
    長屋は認知症のグループホームに適しているという章も、なるほどなあと納得させられました。

    建築素人の私にとって、とても興味のあったのが耐震改修のところ。テレビで「ビフォーアフター」を見ていても、興味がわくのは解体後、基礎や構造を補強するところのみ。意匠系にはほとんど興味がわかない私としては、この本でも長屋の耐震についてはとても引きつけられました。

    でも、圧巻は「まちづくりからみた大阪長屋の再生戦略」という章。なんと、豊崎長屋に限らない、大阪市内全ての長屋の存在を調べ上げて、整理されていました。こりゃすごい、とぶったまげました。かなり時間をかけた調査だったことでしょうね。

    長屋生まれで長屋育ちの私としては、昨今の若い人における長屋ブームに対しては、あまり幻想を抱かない方がいいよ、とも申し上げたいのですが、本の中には快適そうな長屋の内部写真もたくさんあって、思わずまた舞い戻ってみたくなります。
    9月のオフ会で長屋がらみの案が提案されているようですが、実現すれば、長屋にふれるチャンスになることでしょうね。

    素晴らしい本でした。
    出会えて幸せでした。
    ありがとうございました。

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